後三年合戦とは (ゴサンネンカッセンとは) [単語記事]

後三年合戦 / 後三年の役とは、永保3年（1083年）から寛治元年（1087年）まで陸奥国（東北地方）で起きた戦いである。

清原氏による山北三郡支配

かつて蝦夷系の在地豪族とされてきた清原氏であったが、近年の研究では父系は中央氏族・清原真人氏の出身であり、9世紀以前に出羽守・介、あるいは秋田城介の任で進出したものが、現地豪族と結びつき、中央と地方の両属的な存在であったとされる。進出の時期は研究者によってまちまちだが、具体的な人名としては、元慶の乱の際出羽権掾の任にあった、清原令望あたりが直接のきっかけとして比定されている。

清原氏の支配に関してはほとんど考古学資料に頼らざるを得ないが、かなりの範囲を領域支配していたようだ。

清原氏の陸奥進出

その清原氏が陸奥の奥六郡に進出するきっかけとなったのが前九年合戦である。苦戦する源頼義を支援し、戦後鎮守府将軍につき、安倍氏にとって代わったのである（当初は安倍氏の生き残りを利用しようとしていたが連れていかれてしまって…）。

その結果出羽に権益を保持しつつも、それまで安倍氏が担っていた蝦夷地や海道平氏といった太平洋交易を掌握。また藤原経清の妻であった安倍氏の娘を清原武則の息子清原武貞に再婚させ、安倍氏清原氏の融和の証としたようだ。こうして清原氏は山北三郡、奥六郡の支配者になったのである。

清原武貞はもともと先妻の間に清原真衡をもうけていた。そして藤原経清の妻の連れ子である清原清衡が加わる。その後この妻との間にも清原家衡をもうけた。しかし武貞は早くに亡くなり、その父である清原武則が老齢ながらこの兄弟たちの後見を務めることになったのだ。

一方このころ陸奥守に大和源氏の源頼俊が任じられる。彼は源義家とは対立する存在であった。頼俊は清原氏と海道平氏を重用し、次第にこの両者の間に同族的連合が築かれていた。この結果海道平氏の貞衡が清原氏へ、清原氏の武衡が海道平氏へ養子として入ったようである。

延久2年合戦

治暦4年（1068年）の後三条天皇の即位によって源頼義・源義家父子が復権を果たしたようだ。義家は延久元年（1069年）に下野守に任じられ、大和源氏の源頼俊を牽制できる位置についた。

この結果源頼俊、清原貞衡は手柄を先取りしようと蝦夷を攻撃する。とはいえこれは蝦夷認定された、源頼義、源義家らに従う旧河内源氏勢力だったようである。しかし、この間藤原基通が国府のカギを握って義家のもとに逃走する。その結果義家と頼俊の二人からの朝廷への連絡は義家に軍配が上がり、貞衡はなんとか鎮守府将軍に任じられたものの、頼俊はなんの功績も得られなかった。

この結果源義家と武則流清原氏のみが権勢を増したのである。

清原氏内対立と開戦

清原貞衡の後を継いだのは清原真衡である。しかしその結果海道平氏らとより結びつこうとする真衡派と、これまでの北奥羽勢力を基盤としようとする守旧派の清原清衡らが対立することとなった。さらに、男子がなかった真衡は、海道平氏から成衡を迎え、養子としたのである。そしてその妻として源義家の娘を娶らせようとしたのだ。これがより火に油を注ぐこととなり、一族間対立は激化した。

そしてついにその婚礼の時、守旧派の吉村秀武が暴発する。真衡は秀武に向けて進軍する一方、秀武は清衡、家衡兄弟と連携したのである。そしてこの兄弟も挙兵し、真衡はこれを討ちに引き返すこととなる。そして、真衡が何とか押し返したところで、陸奥守になったのが源義家である。

真衡の死とその後の展開

源義家が加勢した清原真衡軍は、藤原重光を破り清原清衡、清原家衡に優勢に立った一方、肝心の真衡自身が頓死してしまった。そして成衡は離縁させられ、奥六郡を清衡、家衡に分けさせたが、今度はこの両者が仲たがいをする。これは、旧真衡派が、源義家が清衡に接近したことに裏切りを感じ、家衡に接近し抱き込んだためともいわれている。

清原家衡は沼柵に立てこもった一方、源義家・清原清衡はこれを攻める。しかしその結果は苦戦の末の義家軍の敗北であった。さらに都では義家の行為は好意的には見られておらず、義家の弟・源義綱を陸奥守に任官させようとしていたのだ。

さらにここで清原家衡側に、おじの清原武衡がつく…というか彼が首魁だったようである。これに対し源義家は金沢柵へと攻めかかる。直前に駆け付けた弟の源義光を加えるも、またしても苦戦を強いられた。義家軍は結局兵糧攻めに切り替えたところ、これが功を奏した。そして寛治元年（1087年）に金沢柵は落城。清原家衡、清原武衡は討ち取られたのであった。