徳間デュアル文庫(とくまでやるとくまでゅあるぶんこ)とは、徳間書店の発行していたライトノベル・SF文庫レーベル。他の文庫より明確に一回り大きいサイズが特徴。
2000年8月創刊。前年、徳間書店が日本SF新人賞を創設したのに伴い、「月刊少年キャプテン」「Chara」など漫画誌の編集をしていた編集者の大野修一が雑誌「SF Japan」とともに立ち上げた文庫レーベルである。
田中芳樹『銀河英雄伝説』の、漫画版を執筆していた道原かつみのイラスト付き・各巻を上下分冊した形式での再刊(ファイナル・ヴァージョンと銘打った)を目玉に、古いSFをライトノベル的なイラストつきで復刊することでSF読者層の新規開拓、および日本SF新人賞受賞者の受け皿としての役割を担っていた。
書き下ろしの新作ライトノベルも刊行されたものの、基本は復刊中心のラインナップだったため、見た目は完全にライトノベルなのに作品のメイン読者層は本来のライトノベル読者より上になってしまい、旧来のSFファンからはイラストのせいで顔をしかめられるといういまいち微妙なポジションになってしまった感がある。
新作では、北野勇作の小松左京賞落選作『かめくん』を拾い上げて出版し日本SF大賞受賞に結びつけたり、上遠野浩平の〈ナイトウォッチ〉三部作や、古橋秀之『サムライ・レンズマン』、センス・オブ・ジェンダー賞を受賞した小林めぐみ『宇宙生命図鑑』などの作品が刊行された。復刊でも、のちに一般文庫でも人気シリーズになる矢崎存美の『ぶたぶた』シリーズを発掘してきている。
他にも1冊500円の薄めの書き下ろし《デュアルノヴェラ》を出してみたり、手塚治虫トリビュートを色んな作家に書かせてみたり、『ラーゼフォン』のノベライズを神林長平に書かせたりと、何かとチャレンジ精神旺盛なレーベルであった。
デュアル文庫から復刊された主な名作には、梶尾真治『おもいでエマノン』、山本弘『時の果てのフェブラリー』、石原藤夫『ハイウェイ惑星』、菅浩江『メルサスの少年』、山田正紀『チョウたちの時間』『地球・精神分析記録』などがある。また川又千秋『反在士の鏡』が完全版『反在士の指環』として刊行されたりもした。
2002年に看板だった『銀河英雄伝説』の再刊が終了して以降は露骨に発行点数が減り始め、2004年は僅か3冊しか刊行されず、もう潰れるだろうとみんな思っていたが、その後もしぶとく細々と刊行を続けた。日日日『ギロチンマシン中村奈々子』やはむばね『魔王さんちの勇者さま』などがひっそりとレーベルの命脈をつなぎ止め、古橋秀之『冬の巨人』や、加地尚武『福音の少年』(文庫化)などが刊行される。
2010年12月、レーベル創刊時から続いていた田中芳樹・荻野目悠樹『野望円舞曲』の最終巻と、『魔王さんちの勇者さま』の最終巻が刊行されたのを最後に、新刊は刊行されていない。公式に終了のアナウンスははっきりとは出ていないが、デュアル文庫の情報も一緒に扱っていたトクマノベルズEdgeの公式サイトも既に閉鎖されているため、復活の見込みは無いと思われる。
最終的に刊行されたのは193冊であった。ちなみにそのうち30冊が『銀河英雄伝説』(本編20冊、外伝9冊、ガイドブック1冊)であり、『野望円舞曲』『自転地球儀世界』を含めると44冊、レーベルの1/4近くが田中芳樹関連である。
後に田中芳樹『銀河英雄伝説』は創元SF文庫から、上遠野浩平〈ナイトウォッチ〉三部作は星海社文庫から、北野勇作『かめくん』は河出文庫から、冲方丁『微睡みのセフィロト』はハヤカワ文庫から、古橋秀之『冬の巨人』は富士見L文庫から、矢崎存美『ぶたぶた』シリーズ、乾くるみ『マリオネット症候群』、夢枕獏『闇狩り師』シリーズ、梶尾真治『エマノン』シリーズ、森岡浩之『優しい煉獄』、三雲岳斗『M.G.H. 楽園の鏡像』『海底密室』は徳間文庫から、それぞれ再刊されている。
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最終更新:2024/04/24(水) 05:00
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