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徴兵制とは、国民に兵役を義務付ける制度である。
徴兵制とは、国民に対して一定期間の兵役を課す制度である。憲法や法律によって規定され、たいてい兵役は国民の義務であると定義される。対義語は国民が自らの意思をもって兵士となる志願制であるが、制度としては両立可能であり、徴兵制を施行している国でも志願兵(職業軍人)は存在する。
徴兵制と一言で言っても、その具体的な内容はそれぞれの国が抱える事情から多岐にわたる。徴兵制の対象となるのはたいてい若い成人男性であり、成人女性が徴兵されることは極めて稀である。 [1]
徴兵制の対象となる国民に対しては、兵役に適するかの検査(身体能力や病気、障害の有無をみる)が行われ、最終的に兵役対象となるかならないかが決定される。さらにここから国の事情によって兵役対象者全員を軍隊にいれる(入営)のか、それともそこから更に一部のみを選抜し、残りは(服役)待機とするなどに分かれる。
前者は特に国民皆兵と呼ばれ、北朝鮮と休戦状態にある韓国や永世中立を堅持するスイスが代表例であり、後者はアメリカが例としてあげられる。ドイツなどの一部の国では軍隊に入ることを拒否する代わりに、ボランティア活動などの社会貢献活動を行う事で兵役を果たしたと認められるところもある。 [2]
入営すると数年間の軍隊生活を送ることになり、それが終了した後も一定期間は予備役として招集がかかれば兵士として軍隊に参加する義務を負う(予備役、あるいは後備役になる)ことになる。また、たいていの国では兵役が終わった後に、自らの意思で軍隊に留まり続ける(つまり、志願兵になる)ことも可能である。
歴史的に徴兵制について見ていくと、後述する利点の項目でも触れているが近代の戦争において徴兵制は兵力確保で重要な役割を果たし、第一次世界大戦、第二次世界 大戦共に参戦した国々は徴兵制によって戦力を確保した。
その後も、冷戦の到来によっていつでも総力戦が行えるように多くの国(特に敵国と地続きで陸軍の侵 攻が容易な欧州など)では徴兵制は維持され続けた。
しかし戦争の変化と兵器の発展によって、高性能兵器を少数の兵士で運用が可能となったこと、それと同時に兵士に高度な訓練を施す必要性が強くなったことで、徴兵制の利点「低品質だが大兵力の確保」の重要性が低下していった。最終的にソ連が崩壊し、冷戦が終結したことにより総力戦の心配が無くなったことで各国は徴兵制を廃止・形骸化させつつある。先にあげたアメリカでは徴兵制を既に停止しており、成人男性は徴兵対象であることを登録する義務はあるが、実際に徴兵されることは(今のところ)無い。ドイツも2014年には徴兵制を停止(実質的には廃止と言われて いる)して、志願兵で軍人を賄うことになっている。台湾では徴兵制は廃止され兵役にはつかないが、軍事教練は受けるという宙ぶらりんな状態である。
その一方で、スウェーデンやフランスのように一度廃止した徴兵制を復活させる国もある。これは、テロの脅威やロシアの軍事活発化が主な理由であるとされる。
現在、世界中で軍隊(およびそれに類する組織)をもつ170カ国あまりの中で徴兵制を導入しているのは67か国とされている(Wikipediaより引用)。
徴兵制のメリットは兵役対象者の意思に関わらずその者を兵士にすることができるため、兵士の数を一定数確保できることである。これは特に兵器の発達(銃、大砲など)により死傷者が増え、志願制では兵士の損失を補填することが非常に困難になった近代では重要視され、国民主権の考えが浸透したこともあいまって近代国家では軒並み徴兵制がしかれることになる。また、志願制と違い、国民の義務を盾に兵士の給料を安く抑えることが可能であることも利点である。
これは隣接した国家との緊張状況が続いている国家にとって後述するデメリットを上回る魅力でもあり、常備兵力の確保が容易である点は何事にとっても代えがたいとできるだろう。
また副次的な利点として教育効果もあげられる。軍隊運用という面から統一した言語・知識を教育する必要があることから倫理、あるいは国民意識の向上あるいは均質、普及、標準語の普及、(たとえば運転技術、生産技術など)技術の習得により生活レベルの向上などを期待できる点も確かにある(日本における徴兵制度の項参考のこと)。
逆に、徴兵制のデメリットとしては、徴兵される当人の意志を無視するため兵士にやる気を持たせるのが困難であり、それが兵士の質の低下や規律の乱れにつながること、若い成人男性を数年間民間から隔離することにより、その間に民間で働いていれば国家に入るはずだった税収が失われることがあげられる。また貴重な若年時期に兵役につくことにより就労、あるいは学歴などのキャリアが阻害されるという面も指摘される。
さらに現代では兵役期間中に習得した技術を悪用、つまり犯罪率の増加も指摘されていることを書かねばならないだろう。
また軍として考えると現代では兵士一人の装備のコストが上昇しており、徴兵制では訓練期間が短く兵士の世代交代が頻繁に起こるので、結局はコストの割に低品質な兵士しか用意できないこと等があげられる。
近代における戦争において、兵力差のみが戦争の優劣を決めるわけではないという点も指摘されている(が、技術レベルが均質である国家同士の場合であれば結果的には兵力差が決定するだろうという指摘もある)。
日本においては、7~8世紀頃に大陸や蝦夷に対応するために徴兵制が敷かれていた。万葉集で出てくる「防人」はその一つである。その後、日本列島内部では統一が進み、大陸とも関係改善が進んだため次第に無くなっていった。そこから武士が登場して武力を掌握したり、戦国の世の中になって武力が武士だけのものじゃなくなったりしたが、明治維新に伴い武士階級が否定されることで一区切りとなった。
明治時代において国民皆兵という名目のもと近代的な徴兵制度が施行された。もっとも最初は徴兵対象者のうち20%しか選ばれなかったが、1889年に改めて国民皆兵が義務づけられた。徴兵により徴集された国民のうち無事兵役を勤め上げると、予備役・後備役となったが第二次世界大戦においてはこれら予備役・後備役の国民も再徴集を受けている(有名な竹槍事件、東條英機の項参考のこと)。
さらに末期になるとなりふり構わず学徒出陣のように文系大学生の徴兵を初めとして、海外植民地人の徴兵なども行われることなる。熟練工まで徴兵して兵器生産に支障が出るなどの本末転倒の有様を見せていたのは有名な話でもある(し、陸軍、海軍の一部の指図により徴兵対象外にされた人もいる)。
徴兵としてのメリットは上述の通りだが、日本においての徴兵制度による副産物はいくつか指摘されている。
一つは標準語である。それまで地域によって特色がある方言(訛り)の問題を是正することができたのも軍組織の中であってこそ、という指摘がある。もう一つは食事で、海軍・陸軍で供された食事が兵役の終わった国民によってごくごく普通の食事になるまで普及したカレー、肉じゃがなどといったケースがある。
第二次世界大戦以後、日本に徴兵制は存在せず、志願制を採用している。一部では「若者の根性を鍛えなおす」ことを目的として徴兵制を復活させようなんて声もあるが、徴兵制も現代の戦争も知らんのかと呆れたくなる主張であることはここまで読めば理解されるかと思う。
なお、日本国憲法第18条では、「犯罪後の懲罰を除き、奴隷的拘束や本人の意思に反する苦役を禁止する」内容となっており、徴兵制はこの18条に違反する行為に該当すると言うのが現在の政府見解であるが、司法の判断は下りておらず本当に「苦役」と判断されるのかに関しては疑問の声も挙がっている。
徴兵制度が若い成人男性、女性を対象にすることは上述の通りだが、様々な理由からこの兵役(徴兵)を回避したいと思うのも人の世の常である。
大体の方法は、(1)健康検査不適格を狙う・(2)制度上の穴、あるいは資格条件を外れるようにする・(3)担当者へのコネが最たるもので、わざと体を不健康な状態にして兵役検査をパスする、あるいは兵役対象外の条件…長子であれば免除される場合に、二男・三男が養子縁組などで長子扱いとなる、あるいは免除地域(国内の特定場所、あるいは外地)があればそこへ戸籍を移して回避する、宗教関係者の位置になる、極端に犯罪者になれば問題ないとのことで犯罪者になるもの。
コネは兵役担当役人に対する賄賂などによる袖の下を通しての嘆願、免除、あるいは第一線以外への任地指定がある。ある一定以上の公職についている者、あるいはの富裕層子息の場合、安全な後方勤務などにつくケースなど露骨な優遇が行われる場合も多々あるのといわれ、これも担当者へのコネの一種と見ていいだろう。(コネではなくご機嫌伺いとして勝手にやるケースもあるとか)。
大体、兵役のある国ではこれらの方法がまことしやかに広まっているし、妬み嫉みの問題と相まって複雑なことになっているのは事実である。
アメリカの徴兵制ではよくこの手の問題が取沙汰されることがおおい。実際のところを言えばケースバイケースで、徴兵される若者の大多数が富裕層ではないのでその反面、レアなケースを取り出して論じるのもあまり正しくはないだろう。確かに、某大統領経験者では徴兵逃れと思わしき選択(軍ではなく州軍に参加した)ケースもあれば、そうではない大統領経験者(海軍の魚雷艇艇長になったもの)もいる。
韓国ではこの手の問題が多々あるようで、時折報道機関をにぎわす問題となっている。
いずれにしてもあまり褒められたものではない。
ただ自らの政治信条、あるいは宗教により徴兵を忌避する場合があり、罰則などを受けることを是とする人もいる。これらが「良心的兵役拒否」と呼ばれるものである。
上述するように従来、兵役拒否者はかなりの不評をもつものではあったが、最近では兵役を労働とみなして代替えの手段を講じようとするケースもある。
これとは他に韓国では、スポーツなどで功績をあげた若者に対して徴兵免除という方法をとっている場合もある。
上で書いたように徴兵制は現代において効率がいい制度ではないのだが、一部の論者は積極的に徴兵制の導入を支持している。週刊誌でも「日本復活のために徴兵制を導入せよ」と言う記事を載せたものもあった。
これら論者の主張は「ニートや戦後日本のモラルの低下、少年犯罪などの青少年問題の解決のためには徴兵制で根性を叩き直すのが有効だ」というものであり、問題にしている青少年問題の原因を考えれば徴兵制で治るわけがないものばかりである。
以下は徴兵制復活支持者達の主張と反論である。以下の文章では徴兵制で兵役に就く場合には自衛隊に入るものとして反論を行う。
日本では間違った認識によるニートに対する偏見が多い。武部勤は「ニートは自衛隊に入ってサマワで活動すれば3ヶ月ぐらいで人間性が変わる」、小沢一郎はニート対策に「一定の猶予後子供を家から追い出し、それでも働きたくないなら公的サービスも使うな」、カメラマンの宮嶋茂樹はニートを穀潰しと呼び「ニートを自衛隊に入れて規律・勇気・自己犠牲・国防意識という美徳を教育させろ」といった内容の発言を行っているが、偏見もいいところである。
そもそもニートとは「教育・雇用・職業訓練を受けていない若年層」を指し、家で何もせず遊んでいる若者を指す言葉ではない。つまり…
これらの理由にいる人間もニートと言うことができる。これらのニートまで等しく「矯正」しなければいけないのか。もし「私が主張しているのは『働いたら負けかなと思っている』とほざくような就職意欲のない若者だけを対象にしている」と言うのなら、それは職業支援で対処すべきであり、徴兵制を行う必要がない。主張している人間が個人的にニートに懲罰を与えたいだけである。これらニートに対する偏見への反論については『ニートって言うな!』で詳しく書かれている。
「モラルが崩壊」してる根拠として自分が見聞きしている事例を挙げているが、それを持って日本全体の若者のモラルが崩壊しているかは疑わしい。例えば少年犯罪1つとっても平成に入ってから少しずつ上昇しているが、統計資料を見る限り戦後の少年犯罪最悪期は1950年代である。
確かに自衛隊では任期制自衛官は退官3年前から職業訓練で資格・免許の取得を行い、任務の一環で行うため費用はかからない。例を挙げると、無線通信士・自動車整備士・ボイラー技師・フォークリフト運転士・火薬類取扱保安責任者などいかにも自衛隊で勤めたような資格から、土地家屋調査士・ホームヘルパー・中小企業診断士・行政書士・簿記などデスクワーク系のものまで揃っている。それに加えて自衛隊で得た経験や知識を生かして、自衛隊退役後の就職時に役に立つという主張はなんら問題はない。
ただ、得られる主要な資格・免許には芸術系のものがない。ゲームクリエイターやファッションデザイナーになりたい若者が徴兵制で兵役について得られるものは兵役時代の経験ぐらいである。仮に芸術系に役立つ資格が得られたとしても、規律が求められる兵役に就くよりも目指す分野の勉強に回して、基礎技能や自分の個性を作るために時間を費やしたほうが効果的である。
そもそも「兵役で就職に役立つ」という発想自体、徴兵制を就職学校か何かと勘違いしているのではないのか。「最近の大学生は大学全入時代でろくでもない連中だからこんな大学生よりも数年自衛隊に入隊した若者の方を採りたい」というのが人事の主張なのだろうが、当の自衛隊は国防機関であり就職のために若者を育てる予備校ではない。そもそも資格・免許だって徴兵制で毎年膨大な数の若者が資格を取れば希少性なんてなくなってしまう。
ちなみに自衛隊は二泊三日の体験入隊を行っており、一部企業は研修も兼ねて社員を体験入隊させている会社もあるようである。
徴兵制を支持する保守評論家はなぜかこの件に関しては韓国の例を好意的に持ち出しているが、その点は突っ込まないでおく。
韓国の徴兵制の成功例ばかり言われているが、韓国は儒教文化で上下関係を特に大切にしており、必然的に軍の上下関係も他国の軍よりも厳しくなっている。そのためか新兵シゴキが異常なものになっており、「血だらけになるほど靴で踏みつけられる」「腕や歯を折られる」「先輩の大便を食わされる」など異常な目に合わされた話も出ている。10万人あたりの自殺率も世界一(2010年で33.5人)で男性に限れば49.6人で世界トップクラスである。
この話を聞いて韓国の事を笑うのは個人の自由だが、2011年日本の自殺率も世界5位で笑えない話である。また自衛隊でも1994年の護衛艦さわぎり、2004年の護衛艦たちかぜで起きていたいじめの様に自衛隊内でもいじめが発生しており、防衛省職員(自衛官も防衛省職員である)の自殺者は2004年から100人を超え、他の国家公務員の1.5倍になっている。
また韓国には多くの国では認められている良心的兵役拒否がなく、世界の良心的兵役拒否による良心の囚人の大半が韓国人になっている。健常者が兵役を回避しようと思うのなら学業かスポーツでよほど目覚しい成果を上げるしかない。兵役回避がほぼできずに異常な環境に放り込まれる状況のどこが賞賛できるような内容なのだろうか。
意味不明である。そもそも草食系男子とは深澤真紀が2006年に『草食男子世代 平成男子図鑑』で扱った恋愛に対する男性の立ち位置のひとつであり、「恋愛に無縁ではないが、ガツガツしない男性」の事を指し、ある種の男性らしさとは離れた態度をとる男性のことを指す言葉である。
ところがメディアで取り上げていくうちに草食系男子=元気のない男という恋愛の立ち位置から若者・男性叩きの用語として使われるようになっていった(例えば『ミツバチ』(遊助)の歌詞にある「草食系とかマジ勘弁」のように)。上の主張も元気がない男に男性らしさを与えなければならないという論者のおせっかいである。
反論だが、別にどういう恋愛・行動消費をしようが本人の勝手である。それが気に入らないからって徴兵制を持ち出して矯正を始めるなど「ニートに徴兵制」と同レベルの呆れた話である。
なおこの言葉を提唱した深澤真紀は、自分が興味深いと思った男性像が真逆の扱われ方をしていることについて、体の良い男性叩きの言葉を与えて申し訳なく思っているようである。
ブートキャンプとは新兵研修のことであり、ここで上下関係や軍の規律を叩き込む新兵の通過儀礼といえるものである。ここで根性を叩き直し、厳しい訓練に耐えることで1人前の兵士として自信をつけさせるのが目的となっている。アメリカで徴兵制を敷いていた頃の世代は「少年の非行の原因は徴兵制がなくなったため」として、ブートキヤンプを非行少年の更生策として全米で行うこととなった。
しかしに世間で勘違いされている犯罪統計について紹介した『2円で刑務所、5億で執行猶予』の中で著者の浜井浩一はブートキャンプを行った非行少年達と行わなかった非行少年達のその後の再犯率にたいした差がなかったと書いており、「少なくとも、軍隊的な規律が非行を防止することはなさそうである。」と締めくくっている。
これと同時に、スケアード・ストレイト(反面教師)プログラムで凶悪犯罪者の末路を見せ、非行少年を脅して更正させるショック療法と非行少年の認知の歪みを治す認知行動療法の2つについても言及しており、前者は再犯率を上げる結果となり(脅して解決するなら少年院は要らない)、後者は再犯率を下げる結果となった(適切な感情統制が非行を抑えることとなる)。
徴兵制を復活させる発言した論者には石原慎太郎や東国原英夫、橋下徹がいるが、これら論者は自ら徴兵はおろか、自衛隊への入隊経験もない。その上若者を叩き直せという割には過去に大人たちが眉をひそめる行動・言動をしていて、自分が徴兵されないような立場になってから、若者を嘆かわしく思い徴兵制を言い出すのだからタチが悪い。
上の反論で何度も書いたことだが、徴兵制は若者への教育や社会参加を促す場、懲罰を与える制度ではなく、兵士確保のための手段である。わざわざ国防組織に入れて教育等々を行うことは専門でそれらを行う組織よりも余計なコストがかかることとなる。志願制の時点で自殺者数が3桁も発生しているのに、徴兵制でさらに多くの人間が入隊したらさらに自殺者数が増えるのは目に見えている。たいして役に立たないまま被害だけを増やす様な使い方で徴兵制を復活させて、復活論者は満足かもしれないだろうが他の人間には迷惑なだけである。
一方で、徴兵制について正しく理解しないまま議論する傾向は否定派にもしばしば見られる。主に自衛隊への過大評価(自衛官は選ばれたフィジカルエリートであり一般国民を訓練しても脱落不可避である、等)や、現代的な制度とはかけ離れた戦前日本の徴兵制を前提にして話すのが主な原因と考えられる。
入隊試験において、専門知識により選考を行うのは医官や技術幹部・曹などせいぜい数十名程度である。他の試験区分では専門知識の有無は一切考慮されず、せいぜい面接官の心証が良くなる程度にすぎない。技能職以外の採用区分でも武道・語学・情報処理等の資格により加点基準が厳密に定められている警察とは好対照である。
これは、自衛隊では個人の力量よりも集団としての規律に重点が置かれており、トップの一握りさえ知識があれば十分仕事になるためである。必要とされるのは専門性よりむしろ従順さであり、下っ端が知識を使って仕事を進める、あるいは進言することさえあまり推奨されない。
ちなみに、徴兵制を敷けば大学に進学してしまうであろう知的に有能な若者を軍が獲得できるので、選抜すれば専門的知識が必要な部隊を構成できる。実際、イスラエルのハイテク部隊(8200部隊や9900部隊)は徴兵された者から選抜されたエリートであり、彼らの多くはその後ハイテク企業で活躍する。
一般に、3~5倍、あるいは10~50倍というのがよく主張される数字である。前者は曹士としての活躍が期待される自衛官候補生・一般曹候補生、後者は幹部としての活躍が期待される航空学生・一般幹部候補生の倍率として防衛省が発表している数字に近い。
ただし、ここで発表されている倍率はあくまで「応募者数÷採用者数」である。わかりやすく言うと、「幹部候補生の滑り止めの一般曹候補生の滑り止めの自衛官候補生」を受験した人は1人で3人分としてカウントして出した数字である。ここにさらに民間企業や大学・専門学校等との併願も加わるため、倍率の数字をそのまま自衛隊の人気の根拠として受け取ることはできない。
近年自衛隊の人手不足は顕著であり、自衛隊全体の充足率は90.8%、実働部隊である士に限れば69.5%となっている(出典:防衛白書(平成29年版))。これを受け、防衛省は募集対象者の年齢上限を26歳から32歳に引き上げた。本当に自衛隊が人気職であればこのような措置など必要ない。警察や消防、最近では公立学校教師ですら採用に苦戦しており、少子高齢化が続けば自衛隊の人数的規模は現状維持すら非常に難しいというのが現実である。
当然のことだが、入隊基準の低下は質の低下に直結する。質を確保するための志願制において、量を確保するために質を犠牲にするのは本末転倒である。
いや、やる気があれば訓練次第でどうとでもなるという意見もあるだろう。能力は不足しているがやる気のある者と、やる気がないが能力のある者のどちらが自衛官に向くか、難しい問題である。
徴兵制と国民皆兵はイコールではない。徴兵制を採用している先進国の例を見ても、適齢の国民のうちからランダム、あるいは能力で選抜され、さらに良心的兵役拒否者等を除いた者が徴集され、同年代の者からせいぜい数%が軍務につくに過ぎない例が大半である。 [3]
また、国民皆兵を実際に行っている国では、被訓練者をどんどんローテーションさせて経費を減らす(スイス)、賃金を極端に低く抑える(韓国)、国家への奉仕の一種として軍務がある(シンガポール、代替奉仕ではなくどの機関で役務に就くか自分では選択できないのが特徴)などにより実現している。
政府見解によるとその通りである。ただしあくまで政府見解であり、明文で禁止されているわけでもなく、見解が覆されない保証もない。条文そのものが変更される可能性もある。
日本国憲法には合衆国憲法を参考にした条文が多数あると言われる。日本国憲法第18条においては、奴隷制もしくは自発的でない隷属を禁じた合衆国憲法修正第13条がそれにあたる。連邦最高裁判所の判断によると、修正第13条は徴兵制を禁ずるものではないとされている。アメリカの話であり日本には関係ないと言ってしまえばそれまでだが・・・
また、安全保障に関わる問題として、自衛隊や日米安保の違憲性を問うた裁判(長沼ナイキ事件、砂川事件)においては、統治行為論、つまり「合憲だからそのままでいいとは言えないが、違憲だから解散しろと言うのは司法の権限を越えている。主権者たる国民(の代表たる国会)の判断に任せる」という判断が下されている。
以上のことから、18条を徴兵制への防波堤として考えるのはやや心もとないといえる。
『貧困社会アメリカ』(堤未果)で紹介されたアメリカ軍が行っている兵士募集システムで、軍が狙っているのは貧困地区の高校生やローンが返せなくなっている大学生である。
ブッシュ政権が2002年に行った落ちこぼれゼロ法案で「学校への補助金を学校の成績に応じて出す」という法案を通した。これにより競争原理で学力を上げようという考えなのだが、この制度の補助金の申請と引き換えに軍へ生徒の個人情報の提出を要求した。裕福な学校はこんな条件を飲むわけがなく、必然的に金の困る学校がこれを受け入れて軍への勧誘を行う軍人を校内に入れることとなった。
勧誘を行う軍人は「軍に入れば大学は国防総省が出すので学費免除し、軍の兵士がいる家族向け保険にも入ることができる」と、大学の費用に困っている家庭や民間の保険に入れず無保険状態の家庭の生徒に魅力的な提案を出して軍に入隊させている。
しかし学費は10万円ほどの前金が必要で、この額を払えたとしても最終的に必要な額に遠く及ばずバイトで稼ぐハメとなる。保険のほうは政府が退役軍人協会の予算を減らし続けているため、協会は退役軍人専用病院を減らさざるを得なくなり、病院の診察を待つ退役兵士達が多数いるという事実は知らされない。
就職しようにもアメリカでは高卒だとバイトにつくのが精一杯で大学を出ないとまともな職につくことができず、落ちこぼれゼロ法の成立後次々貧困層向けの社会保障の予算を減らされたため、貧困層は軍に入らなければまともな生活ができない状況に追い込まれている。
また民間学資ローンに苦しんでいる大学生に「軍に入ればローンの肩代わりをする」として入隊を勧めている。当面の生活はしのげるがローンの肩代わりはしても返済までに数年間かかったり、外国に派兵されてケガやPTSDになって社会復帰に苦しむことになることが多い。
日本でも『正社員が没落する』(湯浅誠・堤未果)の中でNPO法人もやいの代表の湯浅誠が、自衛隊から「生活に困っている人を紹介してほしい」と勧誘が来ていたことを話している。話の内容では
と話していた。この話を聞いた堤未果は「取材した(軍の)リクルーターの勧誘文句とそっくり」とコメントしている。
また文中では「北海道の高校の先生が『就職口がなく、ホームレスにさせるぐらいなら』と生徒の携帯電話の番号を渡した」(堤)「公立は踏みとどまっているが、私立の底辺校は自衛官の就職説明会を始めている」(湯浅)と話している。
防衛省が2013年に、民間企業の新入社員を任期制の「士」として2年間自衛隊に入隊させる制度を検討していたことが判明している。提案では企業側で新規採用者等を2年間、自衛隊に『実習生』として派遣する制度となっており、企業側では「自衛隊製“体育会系”人材を毎年、一定数確保することが可能」なこと、防衛省側の利点としては「『援護』不要の若くて有為な人材を毎年確保できる」という利点があることが説明されている。自衛隊の「士」の定員割れを防ぐ制度として提案されており、将来的には予備自衛官としての活用も視野に入れられていた。実現には課題が多数あるとされ、採用はされていない。
現在でも新人研修として数日間の自衛隊入隊が義務付けられる企業もあるが、2年間という長期間のインターンシップは、徴兵制で必要とされる期間に近い。また任意制度の形をとっているため徴兵ではないと国会では述べられているが、企業において新入社員が業務命令として自衛隊へ出向を命令された場合、拒否することは難しいものと思われる。
徴兵制と似たような制度に徴農制がある。これは若者を兵役ではなく農業に従事させる制度である。これにより農業従事者が増えることに期待してか、政治家や経営者が支持していたりする。農業体験も広義的な徴農制と言えないこともない。
しかしこの制度も問題がある。農業=自然でなんとなくいいイメージがあるが、そのイメージの良さを利用して政治勢力から利用された歴史的経緯がある。特にカンボジアのポル・ポト政権下では都市住民や知識人を強制的に農村部に移住させて抹殺を図っていた。
「農村は人間関係が豊かで人格形成によい影響がある」という主張も信頼できるデータはなく、いきなり今までの生活と違う場所に送り込まれて精神的な負担になることもありうる。そもそも「農村=心が温かい人たちがいる」という発想自体もおかしい(村の権力者が気に入らない村民を村八分にしていたことだってあっただろう)。
さらに農業自体「雑草抜いて水と肥料やって数ヶ月経てばできあがり」という単純なものではなく、人間にはどうしようもない大自然との戦いである。いい例が中国の毛沢東時代の下放政策で農村部に強制的に送られた若者達に農業をやらせたが、農業は不慣れだったために食糧生産に支障をきたし、更に都市部の若年人口減少によって少なからぬ経済的損失を被った。現在でも、下放政策により高等教育を受けられなかった世代が良い年になっても重要な役職に就けないなど、今でもその影響は残っている。仮に日本でも徴農制で集めた若者に食糧生産を任せる前提で食糧政策を考えた場合、下放の二の舞になりかねない。
徴兵制・徴農制よりも穏健なものとして、若者に一定期間奉仕労働を強制的にやらせるという主張もある。海外では良心的兵役拒否として奉仕労働を代わりにさせることにしており、国外に派兵されて命の危険を冒すようなことは無いため、日本人でもまだ抵抗感なく受け入れやすいものと思われる。
日本国内で若者に一定期間奉仕労働の強制を提案している論者として、元日本財団会長で作家の曽野綾子がいる。曽野は平成12年度に行われた教育改革国民会議第1分科会第2回の議事録で「満18歳で国民を奉仕役に動員することです」と発言している。
具体的には「小中学生で1~2週間ほど」「満18歳で一番始めはしようがないから1~2カ月(最終的に1~2年)」共同生活することで「共同生活、質素な生活、暑さ寒さに耐えること、労働に耐えること」を教え、それにより「相手の立場に立つこと」「生き抜くための知恵」「働きたくないとどうしたら人の目につかないように怠けられるか」が勉強できるという。奉仕労働で怠ける知恵をつけるってどうなんだ……。反対意見は何か起きた時の責任の話が出たぐらいで、教育改革国民会議の最終決定の提言に盛り込まれている。
話はそれるが、この教育改革国民会議第1分科会の第4回では「一人一人が取り組む人間性教育の具体策」と称してここまでの第1分科会で出た意見のまとめをしているが、その内容の一部がすごい。
- 「しつけ3原則」の提唱・実施 「甘えるな・他人に迷惑をかけるな・生かされて生きることを自覚せよ」
- 団地、マンション等に「床の間」を作る
- 教壇を復活させることなどにより、教師の人格的権威の確立させること
- 遠足でバスを使わせない、お寺で3~5時間座らせる等の「我慢の教育」をする
- 学校に畳の部屋を作る
- 子どもを厳しく「飼い馴らす」必要があることを国民にアピールして覚悟してもらう
- 「ここで時代が変わった」「変わらないと日本が滅びる」というようなことをアナウンスし、ショック療法を行う
- 子育てにおいて必要な事項を決めた育児憲章を作る
- 家庭教育手帳の年度毎の更新、配布
- 出産後の親業教育の義務化
- バーチャル・リアリティは悪であるということをハッキリと言う
- 一定レベルの家庭教育がなされていない子どもの就学を保留扱いする
- 警察OBを学校に常駐させる
- 企業は教育に関する書籍や地域の歴史文化に関する書籍を備えた父親文庫を設置する
- 名刺に信念を書くなど、大人一人一人が座右の銘、信念を明示する
- 改革を受け入れる基本的土壌をつくる
教育改革国民会議第1分科会第4回資料より 一部整形
色々すさまじいものを感じる。床の間・教壇・畳の間を用意するだけで日本の教育がよくなるならこんな楽なことはないだろう。散々思いつきレベルの内容を並べたくって最後に改革を受け入れろとは、この会議の委員は日本の教育をどうするつもりなのだろうか。一応資料には「義務教育年限の子どもの扶養控除額を100万円に引き上げる」「企業は従業員に対して子育てやボランティアのための休暇を認める」などよさそうなものもあるのだが……。
話を奉仕労働の強制に戻すと、問題としてなぜ奉仕なのに強制なのかという矛盾がある。奉仕労働に限った話でもないが、刑罰でもないのに本人が望まず奉仕労働を強制させられるのは、日本国憲法第18条の「意に反する苦役(本人の意思に反して強制される労役)からの自由」に反する内容であり、憲法改正でもしなければ導入不可能である。
また曽野の奉仕や我慢に関する主張には、必要以上に「他人に甘えるな」という面が強調されすぎている。例えば2004年に産経新聞で連載していたコラム「透明な歳月の光」では、海外から日本に帰ってきたら台風で学校に避難してきた人が新品の毛布をもらう様を見て
と書き、台風を教育の機会として活用せよと書いている。ここまで「甘やかす」のは避難所にどんな人が来るかがわからず、避難してきた側にもさまざまな事情があるからである。
避難所にはもしかしたら言語に不自由がゆえに情報入手が困難な外国人、体力のない子供や妊婦などが来るかもしれない。行政はこれらの人が来た場合を配慮しなければならないために、毛布や食糧を用意しているのである。嫌なら台風の中布団や食糧を背負いながら避難所まで来いとは暴論すぎる。それが世界の常識なら世界の避難所運営が日本に劣っているだけなのではないのか。
なおその翌週のコラム(透明な歳月の光132 地震に思う 災害時の知恵 訓練必要)では地震被災者に対して「炊飯器なしで米を炊く訓練をしておけ」「瓦礫でかまどを作りゴミを薪にしろ」「食料品をツケで買えるよう店に普段から信用を持たせておけ」などと言う始末である。地震で家族や財産、仕事が無くなっているかもしれない被災者にこれをやれとは酷である。
掲示板
3293 ななしのよっしん
2024/12/19(木) 23:55:58 ID: 33O2uYcMHL
志願制ならやる気のない新兵に「嫌なら辞めろ」と言えるし、実際自衛隊の訓練ではお前なんか辞めちまえ弱い奴はいらねぇとよく言われるけれど、辞めることのできない徴兵制だとやる気がない新兵に何て言うのかな。
3294 ななしのよっしん
2025/01/14(火) 21:13:10 ID: TSbt7OrTpO
>>3293
待遇が悪い部隊に転属させるぞ
弱いとか辞めちまえなんて罵声、カリカリすんなよどうせ実戦なんてやらないし、クビにも出来ねえだろって、聞き流せるんだけど、これはガチで怖い
3295 ななしのよっしん
2025/01/14(火) 21:16:42 ID: 4FjEn2mvp/
今どき徴兵やってる国はお客さん扱いで普通の新兵から隔離されてるみたいだな
徴兵止めて制式に軍人になるときパワハラが始まる
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最終更新:2025/01/18(土) 04:00
最終更新:2025/01/18(土) 03:00
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