「思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから」とは、誰かによる名言の一部である。
全文はだいたいこんな感じで広まっている。
思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから
これをもう少し具体的な言い方で、「乱暴」を例にとって表現してみると、
乱暴な事を考える人は
↓
乱暴な言葉遣いをするようになり
↓
乱暴な振る舞いをしてしまうようになり
↓
乱暴な振る舞いが習慣化して
↓
乱暴な性格として身に付いてしまい
↓
乱暴な人間としての運命の元に暮らすことになるだろう
と言った警句となるだろうか。「乱暴」を「怠惰」や「好色」や「傲慢」や「狭量」や「短気」や「残忍」や「冷淡」など、その他のネガティブな特徴に置き換えても成り立つと思われる。
もちろん、逆にポジティブな言葉を当てはめれば
優しい考え方をするように心がければ
↓
優しい言葉遣いをするようになり
↓
優しい振る舞いをするようになり
↓
その優しい振る舞いは習慣化して
↓
優しい性格として身に付いて
↓
優しい人間としての運命の元に暮らすことができるだろう
といったように、「心の持ちようから自分を大きく変えることができるのですよ」という自己啓発にもなりうる。
ネガティブな方向にもポジティブな方向にも割と説得力があり、人生訓としてまあ納得できるものでもあるのではないだろうか。
だが、「いったい誰が言った言葉なのか?」が判然としない言葉でもある。
日本では「カトリック教会の聖人、マザー・テレサの言葉である」という説が広まっているが、これは日本ローカルなものであって、英語で検索するとほぼ同じような言葉が広まっているものの「マザー・テレサの言葉だ」という説はあまりメジャーではないらしい。
他に「イギリスの政治家マーガレット・サッチャーの言葉だ」とか「サッチャーは「私の父が言っていた言葉だが」として言ったのでサッチャーの父の言葉だ」とか「思想家ラルフ・ワルド・エマーソンの言葉だ」とか「仏教の開祖ブッダの言葉だ」とか「中国の哲学者老子の言葉だ」とか「インドの宗教・政治指導者ガンジーの言葉だ」とか「フランク・アウトロウというアメリカのスーパーマーケット経営者の言葉だ」と言った説が流れているらしい。
なんとなく、最後の「フランク・アウトロウ」さんの知名度だけ低いので「この人の言葉が伝えられる際に他の人の言葉だということに塗り替わったんじゃないの?」という気もしてくるじゃん?
こういった「この有名な言葉は誰が起源なのよ」ということに特化したウェブサイト「Quote Investigator」の調べ(本記事「関連リンク」参照)によると、現在の形とほぼ一致するかたちでの言及は1977年5月にアメリカ合衆国テキサス州の新聞『San Antonio Light』に掲載された以下の文章が見つけ出せる限りでの最初のものだったという。
Watch your thoughts, they become words;
watch your words, they become actions;
watch your actions, they become habits;
watch your habits, they become character;
watch your character, for it becomes your destiny.(和訳:
思考に気を付けなさい、それは言葉になるから
言葉に気を付けなさい、それは行動になるから
行動に気を付けなさい、それは習慣になるから
習慣に気を付けなさい、それは性格になるから
性格に気を付けなさい、それは運命になるから
)
ここではスーパーマーケットチェーン経営者のフランク・アウトロウ氏の言葉であるとされており、やはりこの人物の言葉という説が有力視される様だ。
ただし、ここでは「フランク・アウトロウ氏の言葉だとして紹介されている」のみである。「フランク・アウトロウ氏自身の著作やインタビュー記録」など「確かにフランク・アウトロウ氏がこう言った」と判断できるようなより信頼性の高い証拠が発見されているわけではないとのことで、「Quote Investigator」の記事では注意も促されている。
ちなみに和訳すると失われてしまうが、この言葉には言葉遊びが仕掛けられているという説もあるそう。「thought」(思考)・「word」(言葉)・「action」(行動)・「habit」(習慣)・「character」(性格)の5つの頭文字を並べ直すと「watch」(気を付けなさい)になるため。
ただし、「Quote Investigator」記事はさらに、1856年のイギリスの新聞にも以下のようなスピーチが掲載されていたことも伝えている。
Mr. Wiseman then cautioned his young friends as to the habits they contracted in early life:—”Whatsoever a man soweth that shall he also reap.” You sow an act, you reap a habit (acts repeated constitute habits); you sow a habit, you reap a character; you sow a character, you reap a destiny. Let them, he said, cultivate habits of industry, application, and order, and they might rely upon it, with God’s blessing, they would succeed in life. (Applause.)
(和訳:
ワイズマン氏は彼の若い友人たちに、若い頃に身につけた習慣について次のように警告しました。「人は何であれ、自分の蒔いた種は、自分で収穫することになる」。あなたが行動を蒔けば、習慣を収穫することになる(行動を繰り返すと習慣となる)。あなたが習慣を蒔けば、人格を収穫することになる。人格を蒔けば、運命を収穫することになる。彼は言いました、勤勉・努力・秩序の習慣を育てなさい、そうすればそれらを頼りとして、神の祝福とともに、人生で成功するでしょう、と。(拍手)
)
言い回しは異なるし「思考→言葉」「言葉→行動」の2段階はまだ入っていないが、「行動→習慣→運命」という3段階は既に入っている。
また、1885年の新聞にはこの1856年版の「reap(収穫する)」という同様の喩えを用いつつ、1977年にフランク・アウトロウ氏の言葉として紹介されたものと同じ5段階を示したものも掲載されている。まだ「気を付けなさい」という言い回しではないものの、その意図は言外に示されていると考えればもうほぼ同等のものが完成していると言えなくもない。
Plant a thought and reap a word;
plant a word and reap an action;
plant an action and reap a habit;
plant a habit and reap a character;
plant a character and reap a destiny.(和訳:
思考を植えれば言葉を収穫する
言葉を植えれば行動を収穫する
行動を植えれば習慣を収穫する
習慣を植えれば性格を収穫する
性格を植えれば運命を収穫する
)
おそらくこういった古くからある言い回しが、1977年にフランク・アウトロウ氏の言葉として紹介された現在に知られる形式へと進化したのだろう、と「Quote Investigator」の記事の執筆者は推測している。
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最終更新:2024/10/07(月) 23:00
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