恒星とは、宇宙空間で主に水素からヘリウムに変換される核融合のエネルギーによって自ら輝く単体の天体である。球状を成す天体の中では最大級の大きさの天体群である。他の恒星との見かけ上の位置が変化しないため「恒(つね)なる星」即ち恒星と呼ばれる。
恒星は宇宙を照らす数少ない天体である。恒星があっても宇宙は暗いが、恒星が無ければもっと暗いのである。
恒星は上記のとおりそのほとんどが水素からヘリウムに変換される核融合によって輝いているが例外もある。例えば年老いた恒星はヘリウムから炭素や酸素に変換される核融合で輝いているし、白色矮星と呼ばれるものは核融合が停止したが、核融合が行われていた頃の余熱で光っている。
恒星は以下のような平衡状態で安定している。
以上の現象を非常に速いスピードで繰り返しており、見かけ上の変化は無くなる。簡潔に言うと重力と核融合エネルギーによる外側へ向かう力がつりあっている。これによって核融合の進行速度も自動的に調整されている。
恒星の寿命はその質量に依存する。質量はそのまま恒星の燃料であるから恒星の寿命は質量に比例する。また、光度は燃料の消費の速さなので寿命は光度に反比例する。よって
また、HR図から恒星の光度はその質量の4~5乗に比例することが分かっているので
①②より
(恒星の寿命)∝(恒星の質量)/(恒星の質量)4~5=1/(恒星の質量)3~4
つまり恒星の寿命はその質量の3~4乗に反比例する。質量が大きいほど格段に寿命が短いことを示す。
恒星の大きさは太陽の半径を1として数値で表す場合が多い。光度が大きいほど恒星は大きくなるが、同じ光度なら表面温度が高い(青い)ほど大きさは小さい。つまり、光度、半径、表面温度は互いに関係がある。光度と表面温度は観測によってわかるのでこの二つの数値が分かれば恒星の大きさが求められる。恒星の光度とはすなわち全方位に放たれる光の量であり、また温度とは放射エネルギーの密度とみなすことができる。具体的にはステファン・ボルツマンの法則より黒体から放射される全エネルギーは黒体の温度の4乗に比例するので
また恒星の全エネルギーとは単位面積あたりの光の量と恒星の表面積の積なので
(光度)=(単位面積あたりの光の量)×(恒星の表面積) ・・・②
(恒星の表面積)∝(恒星の半径)2 ・・・③
①~③より
以上から恒星の大きさが求められる。
恒星のエネルギーを表す指標に太陽の明るさを基準とした”光度”と、実視等級から派生して生まれた”絶対等級”がある。絶対等級は10パーセク(約32光年)の距離に恒星を置いたときの等級である。太陽の絶対等級は4.83である。光度と絶対等級はおおよそ互いに変換できる。
等級とは、5等級差で丁度100倍の光度差がある(1等級で約2.512倍違う)と定義され、数値が小さいほど明るい。0以下は負の数を用いる。以上から太陽を基準とすると
(光度)=2.512^{4.83-(絶対等級)}
以上が絶対等級から光度を求める式である(厳密ではない)。また
以上が光度から絶対等級を求める式である(厳密ではない)。
例えばシリウスの絶対等級は1.47なので
2.5124.83-1.47=2.5123.36=22.08340177
恒星はその質量と恒星になってから経過した時間でその性質はほとんど決定してしまう。他には自転周期が恒星の性質に影響を与えるファクターとなるが、恒星の種類を分類するほどのものではない。
誕生間もない恒星である。暗黒星雲が恒星の通過や超新星の影響で物質が密な部分と疎な部分ができる。密な部分は重力が周囲より大きくなるので周囲の物質を更に取り込む。中心部の圧力が大きくなり高温になると輝き始める(この時点ではまだ核融合は起こっていない)。しかし、降着円盤により恒星自体は見えない。赤外線で観測可能。そして中心部の温度が1000万度を超えると核融合が開始されるのだが、この暗黒星雲が収縮し始めてから核融合が開始される直前までを原始星と呼ぶ。具体的にはTタウリ星以前の状態にある天体を指す。
原始星は表面温度が低いが、半径は大きいのでこの後の段階である主系列星より明るい。物質が収縮途中のまだフワフワな状態と思えば分かりやすい。
HR図上の左上から右下にかけてに分布する恒星群の総称。太陽も主系列星である。恒星の中では最も多い。赤色矮星も主系列星の一種である。主系列星は一般的に質量が小さいほど色が赤く暗く、質量が大きいほど青く明るいという傾向がある。恒星として非常に安定しており、ほぼ全ての恒星は生涯のうちほとんどをこの状態ですごす。
主系列星の中でも特に軽く、スペクトルタイプがK、Mの暗く小さい恒星を指す。質量は太陽の8%以上とされる(これより小さい質量だと軽水素の核融合が起こらない)。そのため他の主系列星と比べて低温であり、暗く赤い色で輝いていることからその名がついた。質量は小さいものの、核融合の水素の消費がきわめて緩やかであるため寿命が非常に長く、理論上は1兆年以上輝き続けるものもある。宇宙でも豊富に存在する恒星であり、現時点で寿命を迎えた赤色矮星は存在していないと考えられている。
他の主系列星と比べて温度が低いため、水素の燃焼を終えた後はヘリウムの核融合には至らず、そのままヘリウムを中心とした白色矮星になると予想されている。現在の宇宙の年齢は赤色矮星の寿命として想定されている年数より短いため、白色矮星として観測された例はなく予想止まりとなっている。
中心部の水素を使い果たした主系列星はやがてその安定を失い、大きく膨張する。光度は増すが、膨張により中心部から離れた表面部分は温度が下がり赤くなる。そのためこの段階にある恒星を赤色巨星という。膨張しているために重力の束縛が弱い表面からは絶えず物質が放出されている。主系列星時の恒星からも恒星風、太陽で言えば太陽風として常に物質が放出されているが、赤色巨星時のそれは数万倍も多い質量が放出される。このとき放出された物質は、後の白色矮星から発せられる紫外線に照らされることにより惑星状星雲となり、光り輝くようになる。
なお、赤色巨星の段階のエネルギー源はヘリウムや酸素の核融合である。最終的には炭素や鉄まで核融合が進む。
具体的な定義は無いが、質量が太陽の10倍以上のものを指す。スペクトルタイプにより青色超巨星、白色超巨星、赤色超巨星がある。おそらく原始星から主系列星を経ないで青色超巨星→白色超巨星→赤色超巨星というような進化をするものと思われる。最終的には超新星となり、質量に応じて中性子星やブラックホールとなる。
重力崩壊によって超新星爆発が起こった後に残る星の核。大きさは直径20km程度。中性子星が太陽質量の2,3倍程度以上だと、超新星爆発後も重力崩壊は止まらずブラックホールになる。中性子星は重力崩壊時の爆縮により尋常ではない密度となっており、スプーン一杯分(5cc)で約10億tとなっている。分かりやすく言うと、地球の重力の2000000000000(2兆)倍。また、その密度と大きさによって、角運動保存の法則により非常に高速に回転している。中性子星の代表的な現象としてパルサーがある。これは中性子星に強い磁気があり、更に磁極が自転軸と一致していない場合、中性子星の自転により電磁波が灯台の様に回転するパルサーになる。中性子星自体は発光していないため、このパルサーによって発見される。回転周期は数ミリ秒から数秒程度。非常に規則正しく回転しているため極めて発光周期が安定しており、当初この中性子星パルサーによる電波を発見したアントニー・ヒューイッシュとジョスリン・ベルは自然現象とは思えず、地球外知的生命体による信号と誤解したほどであった。中性子星の回転がほとんど止まると物質が降着しだし、そこから角運動量を得て再び高速回転しだす場合もある。
詳しくは ブラックホール の項参照。
超新星爆発の後、重力崩壊が止まらず極限に圧縮された天体といわれている。強大な重力により空間が捻じ曲げられるため、光さえも閉じ込められる。光さえも出られないのでブラックホールを直接観測することは不可能である。ブラックホールに吸い込まれる際の物質のX線などでしかブラックホールの天体を推測することしかできない。
超巨星の中でも質量が40倍を越えるものはエネルギーが強すぎて非常に不安定である。世の物理現象は不安定から安定になろうとする傾向があるが、それは恒星も例外ではない。これほどの質量の恒星はなんとか安定した恒星になろうと、一定ごとに質量の大放出が行われる。そのときは超新星並の光度まで増光するものもある。その際は表面物質が吹き飛ばされ、内部がむき出しの状態になる。当然内部は表面より高温である。つまりこのような恒星はいつまでも表面が低温にならないので赤色巨星にはなれないのである。このような星をウォルフ・ライエ星と呼ぶ。
質量が比較的軽い星(太陽質量の8倍以下)は炭素の段階で核融合が終了する。すると恒星を取り巻いていた物質が一気に解放されて中心部分だけが残る。開放された物質は白色矮星から放射される紫外線を吸収し、そのエネルギーで電離、惑星状星雲として輝きだす。この白色矮星の中心部分は地球程度の大きさでありながら、質量は太陽程度にある高密度の天体である。核融合の余熱で輝いているだけなのでエネルギー源はなく、やがては冷えて輝きもなくなり、最終的には黒色矮星になる。代表的なものとしてはシリウス伴星(シリウスB)がこの白色矮星であるほか、我々の太陽も核融合を終えた後はこの白色矮星になると予想されている。余熱で輝いているとはいえ極めて高温であり、冷え切るのに数十億年はかかるとされている。
ちなみに冷えていく過程でスペクトルタイプが変化するので、常に白色とは限らない。
なお、恒星が連星をなしている場合、白色矮星が近接する恒星のガスを重力によって吸い上げることによって核融合に必要な原子が供給されるため、新星爆発や超新星爆発を起こすことがある。
余熱で輝いていた白色矮星が発光しなくなった恒星の最後の状態の1つ。そもそも発光していないので直接観測することは不可能であり、また白色矮星が冷却して黒色矮星になる十分な年数がたっていないと考えられているため、実際に確認された例はなく仮設止まりの存在である。
詳しくは 変光星 の項参照。
恒星の中で、我々から見て明るさを変化させているものを変光星と総称している。
掲示板
18 ななしのよっしん
2021/09/20(月) 18:19:40 ID: 0ySzxOBoWL
昔ミリオネアで5万円くらいの問題で「地球に一番恒星は?」って問題が出てた
たしか月、金星、火星、太陽の選択肢で回答者は迷いながら金星を選んでた
小学校で習うだろうけどこういう分類は案外知らない人も多いのでは
19 ななしのよっしん
2022/09/23(金) 20:49:52 ID: pEsDKiEvmH
20 ななしのよっしん
2023/11/18(土) 21:52:02 ID: gyNaIp+DyA
>>18
5万くらいの問題は普通迷わない想定の方が多いのでは…
急上昇ワード改
最終更新:2024/10/11(金) 15:00
最終更新:2024/10/11(金) 15:00
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