捕手とは、
ここでは2については特に触れず1についてのみ記述する。
捕手は投手の投球を受けるポジションであるため、それを如何に逸らさずにキャッチできるかが捕手の良し悪しを決める要素となる。例えば「ランナーが三塁にいると落ちる変化球は投げにくい」とよく言われるが、これはワンバウンドする球はキャッチングが難しく、捕手が後逸しやすいため点に繋がりやすいためである。しかし裏を返せばその状況で下方向の変化球を抑えられる捕手であれば、より打者に対して有利に攻められるということで、優れた捕手の要素を持っているということが言える。
投手がどこに投球すれば良いかを指示し、相手の打者に打たせないようにすることが最大の仕事。そのため捕手は相手打者の得意・苦手コース、球種などを誰よりも把握しておかなければならず、かつそれを活かして投手のリードをすることが求められるため、頭の良さ(野球脳)が求められる選手である。さらにその指示を投手に受け入れさせるために、投手との信頼関係を築けることが良い捕手の条件の一つであると言えよう。
野球ファンの中において捕手のリードの良し悪しはよく議論にのぼる題材ではあるが、反面場が荒れやすい題材でもある。打者の打率や本塁打、投手の防御率のように数字によって優劣をつけることが出来ないため、主観的な意見に陥りやすいためである。(一応捕手別防御率という数字もあるが、同じ捕手によってもシーズンごとに安定しないためあくまで参考程度の指標であると言える。)
また打撃、特に長打力に長けた捕手は何故か守備型の捕手(守備>>>打撃という守備に特化した捕手のこと)に比べて、リードがあまり良くない捕手だと見られる傾向があるようであるが、もちろん打撃力とリードの良し悪しに直接的な要因は無いはずである。
NPBではリードは捕手の仕事とされているが、MLBにおいては、配球に関しては投手自身が決めたり、あるいは監督やコーチが決めるベンチワークとされていることが多い(これは単純に対戦する球団数・選手数が多いため、ひとりの捕手があらゆるデータを把握しきるのが難しいためである)。そのためMLBではNPBに比べて、捕手は打力や送球能力の方が重視される傾向にある。
リードの上手さに加え求められる能力が、肩の強さと送球技術である。盗塁阻止はもちろんのこと、素早い牽制で野手を塁上に釘付けにするのにも必要とされる。(OBでは大矢明彦や古田敦也、現役ではソフトバンクの甲斐拓也などが強肩な捕手としてよく名前があがる)
よく誤解されることであるが、肩の強い捕手が必ずしも盗塁阻止率が高くなるわけではない。もちろん、強肩であることにこしたことはないが、投手のクイック、球種、送球までの時間、送球の正確性など複合的な要因が重なってくるので、思いもがけない捕手が高い阻止率を残したりすることも多い。ただし阻止率が低い捕手は弱肩であることが多いのは間違いない。
また右投げに比べ左投げは送球が不利になることから、左投げの捕手はほとんど存在しない。右打者のほうが多い現状では、左投げの場合二塁・三塁への送球のときに打者が邪魔になり、送球に支障が出るためである。こうした左投げの捕手は、学生野球の段階で他ポジションへのコンバートが図られるため、特にプロに近いレベルではその存在は確認できなくなるのである(そもそも左投げ用のキャッチャーミットは特注になるため、道具が無いという根本的な問題により左投げの選手は捕手ができないという事情もある)。
他に捕手特有の仕事としてあるのが、走者の本塁突入をブロックすることである。きわどいタイミングでは走者が体当たりをしてくることもあり、捕手にとっては最も怪我をしやすいプレーの一つである。いかに怪我をせずに本塁を死守するかが優れた捕手には求められる。
しかしこの接触プレイは捕手・走者ともに怪我が多い事からたびたび危険視されており、アメリカMLBでは2014年から禁止された。日本のNPBでも2016年シーズンより禁止となった(コリジョンルール)。走者の進塁ルート上に捕手が立ちはだかる事は禁止となり、如何に上手くタッチするかという技術、および本塁以外の走者のアウトを優先すべきかの判断力が、より求められる事になった。
投手を含める全9人の守備側選手のうち唯一外野フェンス方向を向いて守備に就く選手で、グラウンド全体を見渡せることから野手の中でも特別な仕事が与えられたプレイヤーであり、守備位置や送球先の指示をする役目をになっている。ボールカウント・アウトカウント・イニング数・点差などもろもろの要素から相手打者・走者の意図を見抜き、素早く指示を出さなければいけないため観察眼・洞察力が求められるポジションである。その役割からグラウンドにおける監督とも揄えされ、非常に専門色の強いポジションである。
さらに心理描写が表しやすい、守備においても出番が多いことなどから、アニメ・漫画等では投手と共に主役・メインキャラクターに据えられることが多い。
捕手は前述したホームでのブロックの他、ファールチップをその身に受けることも多いため全野手の中でも最も怪我しやすいポジションであり、怪我を防ぎやすいように様々な防具を身に付けることが許されている唯一のポジションでもある。その種類は顔面を保護するマスク、胸部を保護するプロテクター、膝下を保護するレガースなどである。
また他の野手はグラブ(グローブ)を使って捕球を行っているが、捕手は投球を受けるのに特化したキャッチャーミットを使っている。捕手の他にミットを使っているのはファーストのみである。(こちらはファーストミットと言う)
通常ベンチ入り選手の中で捕手登録されている選手は2,3人であり、その中でも主に先発出場する捕手を「正捕手」、それに続く捕手を「二番手捕手」「三番手捕手」と呼ぶ。最も総合力に優れた捕手が正捕手となり、その疲労を抑えるためにたまに先発出場したり、正捕手が代打や代走、または怪我などで退いたとき途中から出場するのが二番手・三番手捕手の役割となっている。
レギュラーである正捕手の代わりに二番手、三番手が出場することが他のポジションと比べると多く、守備の規定試合数が野手は試合数の2/3となっている一方で、捕手は試合数の1/2と少なく規定されている。
しかし全ての捕手を試合中に使い切ってしまうことはほとんど無い。前述したように捕手は非常に専門的なポジションであり、未経験の選手ではまともに役割をこなすことは難しい。もし最後に出した捕手が怪我でもしてしまった場合、試合が立ち行かなくなってしまう可能性があるためである。
だが長いプロ野球の歴史の中でそうした事態が無かったわけではない。最近の例としては以下のようなものがある。
余談ではあるが各チームこうした緊急事態に備え、捕手登録の選手がいなくなってしまった場合はどの選手が捕手を務めるのかは前もって決めているらしい。先に述べた木村拓也もこの事態になる前から、「もしもの時は行くからな」と言われていたと語っている。
捕手は投手とのコミュニケーションを密にする立場であることから、投手と捕手の相性が重視されることがあり、2人以上の捕手をレギュラーとして併用するチームでは投手によって捕手を使い分ける場合がある。たとえば北海道日本ハムファイターズでは、ダルビッシュ有やボビー・ケッペルとは鶴岡慎也が、武田勝やブライアン・ウルフとは大野奨太がバッテリーを組んでいた。
また不動の正捕手のいるチームでも、特定の投手が登板する際には二番手以下の捕手がマスクを被るということがある。近年では福岡ソフトバンクホークスの斉藤和巳と的場直樹や、東北楽天ゴールデンイーグルスの岩隈久志と藤井彰人が有名。
リリーフ投手の場合には登板機会が一定しないためこういった例はまず無いが、例外として登板のタイミングがほぼ決まっている抑え投手の場合は専属の「抑え捕手」がつく場合がある。有名なのは日本ハム時代のマイケル中村で、中嶋聡が専属捕手としてマイケルの登板時はマスクを被った。マイケルが高橋信二と組んだ際にはベンチから中嶋がリードを指示したという逸話がある。また抑え専属ではないが、広島東洋カープの永川勝浩のフォークは石原慶幸でないと止められないと言われており、永川の登板時は基本的に石原がマスクを被るという例もある。
MLBではボストン・レッドソックスのティム・ウェイクフィールドとダグ・ミラベリが有名。ウェイクフィールドがMLBでも稀有なほとんどナックルボールしか投げない「フルタイム・ナックルボーラー」であり、ミラベリが専属捕手を務めていた。2006年にミラベリは移籍したが、後任捕手がナックルボールを捕球できず後逸を連発したため、急遽ミラベリはトレードでレッドソックスへ復帰している。
捕手は専門性の高いポジションであるため、不動の正捕手が存在するとどうしても二番手以下の捕手の出番は少なくなる。また他のポジションならば多少守備面に不安があっても、打力に優れていれば優先的に起用してもらえる場合があるが、捕手の場合はどうしてもある程度以上の守備力は要求されるため、打力が一軍レベルにあっても守備力が見劣りすると捕手として継続的に出場機会を得ることは難しい。
そのため、捕手として入団した選手が打力や身体能力の高さを買われて他のポジションにコンバートされ、開花する例は多い。近年の大打者としては小笠原道大、山崎武司、和田一浩などが捕手からコンバートされて活躍している(ちなみに小笠原と和田は捕手で一軍出場の経験もある)。前述の木村拓也もプロ入り時は捕手であり、緊急時の代理捕手役を言い渡されているのも大抵はこういった元捕手組である。また、阿部慎之助や上本達之などのように、登録は捕手のままであっても他のポジションを守るか指名打者で出場することがある選手もいる。
捕手からのコンバートは基本的に打撃を評価されてのものが多いため、転向先は一塁手や外野手が多い。俊足な捕手の場合は、外野手へコンバートされることが多いため、二塁手や遊撃手へのコンバートは少ない。ただし、外野手として大活躍した飯田哲也は、捕手から最初に二塁手へコンバートしている。近年の例では、銀次が捕手として入団後、二塁手へコンバートしている(その後、更に一塁手や三塁手へコンバート)。なお、上述の星秀和も2011年からは外野手登録だが、入団当初は二塁手で主に起用されていた。変わり種としては、捕手登録でありながら二塁・三塁も守れる千葉ロッテ→東京ヤクルトの田中雅彦がいる(ヤクルト移籍後はほぼ捕手固定に)。
一方、プロ入り後に他のポジションから捕手に転向する例は、無いわけではないが極めて稀であり、またプロ入り後に捕手転向して大成した選手は今のところ存在しない。一軍で捕手としてある程度出場機会を得たことがある、というレベルでさえ、元ロッテの斉藤巧(内野手→捕手)、元ダイエーの内之倉隆志(内野手→捕手)がいる程度である。近年ではプロ入り7年目で捕手に転向した日本ハムの尾崎匡哉、外野手と捕手を兼任した広島の中東直瑛がいる。
捕手は一般的に打力はあまり期待されないポジションであり、例えば80年代から90年代のパ・リーグを代表する名捕手の伊東勤は、通算1000本安打を超えている選手で唯一通算打率が.250を下回っている。無論、全盛期の野村克也や古田敦也のように、打撃でも超一流という捕手もいるが、稀な存在であることは確かである。
そのため捕手は往々にして、打撃型の捕手(打力のある捕手)と守備型の捕手(打力のない捕手)という分類のされかたをする場合が多い。そして前述の通り、野球ファンの間などでは打撃型の捕手は、守備型の捕手に比べて守備面では劣ると見なされる場合が多い(実際にどうであるかはさておき)。
特に正捕手の定まっていないチームでは、往々にして打撃型の捕手と守備型の捕手によるポジション争いというパターンが発生する(例えば近年では日本ハムの高橋信二と鶴岡慎也、ソフトバンクの田上秀則と山崎勝己など)。ファンの間でもどちらが良いかで言い争いになることが多く、リードの評価とともに荒れやすい話題である。
主に3番を打った古田敦也、不動の4番であった野村克也、5番を打った城島健司などのようにクリーンナップを任される捕手はしばしば現れるが、俊足が求められる1番や2番を打つ捕手は非常に稀である。そもそも捕手は守備時に俊足を活かす機会がほぼ無いため、俊足の捕手は飯田哲也や関川浩一のように外野へコンバートされる場合が多い。俊足だった捕手としては、戦前の東京巨人軍の正捕手・吉原正喜や、捕手としての通算最多となる134盗塁を記録した伊東勤、通算121盗塁の和田博実などがいる。現役で俊足捕手として知られているのは嶋基宏など。
前述の通り打力のある捕手はコンバートされることも多いため、歴代の名捕手もどちらかといえば打力はそれほどでもない場合が多い。強打の捕手として有名なOBには前述の野村、古田のほか、田淵幸一、木俣達彦などがいる。
ベンチ入りする選手の捕手とは別に、ブルペンで投手の投球練習を受ける捕手をブルペン捕手と言う。彼らは選手としては登録されていない裏方で、主に戦力外や引退で働き口を失った捕手たちが「壁」としてボールを受けるこの仕事に就く。ブルペン捕手から現役復帰を果たした例もあるが非常に稀である。
かつてはブルペン捕手は支配下登録選手でなければならないと規定があったが、現在は無くなっている(ちなみに高校時代全くの無名選手だった野村克也が南海ホークスに入団できたのは、事実上ブルペン捕手としての入団だったかららしい)。
裏方であり普段光が当たることは無いが、彼らが存在しなければブルペンが機能しないので、チームにとっては無論のこと重要な存在である。第2回WBCにおいてブルペン捕手として同行した小山良男(元中日ドラゴンズ)が、優勝後のシャンパンファイトにおいて胴上げされたというエピソードは、それを端的に物語っている。
監督の指示をグラウンドにおいて伝達するポジションであり、第二の監督とも呼ばれることからか、捕手出身の監督は多い。かつては野村克也が南海ホークスにおいて選手兼任監督として正捕手と監督の二足のわらじを7年間に渡って履いていたことがある。他にも森祇晶などは特に捕手出身の名将として知られている。
不動の正捕手だった選手がそのままそのチームの監督に収まるという例もあり、近年では伊東勤が引退後即西武の監督に、古田敦也は2年間選手兼任でヤクルトの監督を、谷繁元信も2年間中日の選手兼任監督を務めた。
2021年現在は、NPB12球団では阪神の矢野燿大監督、オリックスの中島聡監督が捕手出身である。
投手とのコミュニケーションの問題から、外国人選手が捕手を務める例は日本のプロ野球ではほぼ皆無である。
過去に例が無いわけではなく、1937年のMVPに輝いたバッキー・ハリス(後楽園イーグルス)、1953年・54年にパ・リーグのベストナイン捕手部門に選ばれているチャーリー・ルイス(毎日オリオンズ)などの外国人捕手が在籍していたことがあるが、現在ではまず見ることは無い。
2021年には中日のヤリエル・ロドリゲス投手とアリエル・マルティネス捕手が8月14日の試合に先発出場。外国人バッテリーがNPBで先発するのは30年ぶりとなった。(両選手ともキューバ出身)
95年に阪神大震災チャリティーマッチとして、日本人選抜vs外国人選抜の試合が行われたことがあるが、このときも外国人選抜に捕手がおらず(正確には捕手経験のあるティム・マッキントッシュが捕手を務める予定だったが、開催前に解雇されてしまった)、当時ロッテの正捕手だった定詰雅彦と、巨人の大久保博元がそれぞれ「ジョー」「デーブ」という名前で外国人選抜に参加したというエピソードがある。
投手 | 先発投手 / 中継ぎ投手 / 抑え投手 |
捕手 | バッテリー |
内野手 | 一塁手 / 二塁手 / 三塁手 / 遊撃手 |
外野手 | 左翼手 / 中堅手 / 右翼手 |
その他 | 指名打者 / 監督 |
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最終更新:2024/10/11(金) 12:00
最終更新:2024/10/11(金) 12:00
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