救国軍事会議のクーデター 単語

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キュウコクグンジカイギノクーデター

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銀河英雄伝説戦闘
救国軍事会議のクーデター
基本情報
時期 : 宇宙797年 4月13日8月
地点 : 自由惑星同盟 首都ハイネセンおよび同盟
結果 : 自由惑星同盟正規軍の勝利
詳細情報
交戦勢
自由惑星同盟
議会政府
自由惑星同盟
軍事会議
指揮官導者
イゼルローン要塞駐留艦隊
ヤン・ウェンリー大将
軍事会議議長
ドワイト・グリーンヒル大将
動員兵
イゼルローン要塞駐留艦隊
その他
 各惑星の警備隊
 地方駐留の巡視艦隊
 退役将兵
 義勇
など
クーデター部隊
第11艦隊(ルグランジュ中将
処女の首飾り
惑星プティ部隊
惑星カッファー叛乱勢
惑星パルメレンド叛乱勢
惑星シャンプール武装勢
救国軍事会議のクーデター
救国軍事会議のクーデター -
惑星シャンプール攻略戦 - ドーリア星域の会戦 -
スタジアムの虐殺 - ハイネセン制圧
前の戦闘 次の戦闘
帝国領侵攻作戦 イゼルローン回廊帝国寄り宙点における戦闘

救国軍事会議のクーデターとは、「銀河英雄伝説」の戦闘のひとつである。

概要

宇宙797年4月8月自由惑星同盟において発生したクーデター軍事革命)とそれに伴う内戦。

前年の帝国領侵攻作戦における大敗とヨブ・トリューニヒト政権の成立後、その遠因となった政治の腐敗と暴走社会不安を憂慮した一部の将校たちが、銀河帝国における門閥貴族との内戦への同盟の介入を懸念した帝国元帥ラインハルト・フォン・ローエングラム侯爵の策謀によって動かされ、「救軍事会議を称して起こした軍事クーデター、および正規軍との間の戦闘である。

「救軍事会議」は複数の惑星での叛乱と機を合わせて首都ハイネセンを制圧し、政軍の実権を握することに成功したものの、クーデター発生を予期していたヤン・ウェンリー大将の率いるイゼルローン要塞駐留艦隊の支持を得られず、同艦隊が出動してクーデター側戦を各所で撃破したことで抵抗を失い降した。

この結果、同盟内に残された数少ない機動戦クーデターへの参加と戦闘によって消耗するとともに、多くが「救軍事会議」に参加した反トリューニヒト将校が軍部から排除されたことで、軍中枢部におけるトリューニヒトの勢が圧倒的なものとなり、残された統合作本部長クブルスリー大将などの非トリューニヒト将校をさらに圧迫する結果となった。また、この内戦のため、帝国とのを成すイゼルローン要塞に拠るヤン・ウェンリーと要塞駐留艦隊が帝国におけるリップシュタット戦役を及ぼすことはなかった。

なお、戦役名としては、「救軍事会議」のクーデターいわゆる「救軍事会議」のクーデター「救軍事会議」の内戦などとも呼称される。

参加勢力・人員

評議会政府(鎮圧軍)

クーデター鎮圧には、クーデターを支持しなかったイゼルローン要塞ヤン・ウェンリー大将揮下にあるイゼルローン要塞駐留艦隊(ヤン艦隊)が動員された。ドーリア星域の会戦での勝利後は、立場を決めかねていた各惑星の警備隊や巡視艦隊、義勇兵までもがこれに合流している。

議会政府自体はクーデターにより機不全に陥ったため、鎮圧時に政治的な関与はなされなかったが、クーデターの可性を予測していたヤン大将の要請により、事前宇宙艦隊長官アレクサンドル・ビュコック大将より叛乱発生時には出兵し法秩序を回復せよとの命書が下されており、ヤン艦隊による一連の出兵は法的根拠を得たものとなっていた。

救国軍事会議(クーデター勢力)

軍事会議導者は議長を称し、防委員会部長ドワイト・グリーンヒル大将がその地位に就いた。グリーンヒル大将は前年の帝国領侵攻作戦での大敗の責を負って部長に遷されるまで、宇宙艦隊総参謀長・統合作戦本部次長の顕職にあり、救軍事会議内でも高い信望を得てクーデター計画を導した。

としてはルグランジュ中将の率いる第11艦隊が救軍事会議下に入り、その要な機動兵となった。また、首都ハイネセンの防衛システムである衛星群”処女の首飾り”もその揮下におかれている。この他、クーデターに先んじて同盟内各地で叛乱を起こした各地方部隊があった。

主要な参加人員

どちらにも直接参与しなかった勢力・人員

文官・政治家のうち、最高評議会議長ヨブ・トリューニヒトクーデター勃発時より地球教の助けを得て脱出・潜行し、鎮圧にいたるまで表に姿をあらわすことはなかった。いっぽう、反戦平和の急先鋒とされるジェシカ・エドワーズ代議員は、ハイネセンにあって鎮圧軍と協同することはなかったものの積極的に反クーデター活動に身を投じ、”スタジアムの虐殺”において命を落とすこととなった。

軍人では、統合作本部長(発生当時は次長ドーソン大将が代行)、宇宙艦隊長官ビュコック大将ともクーデター時に身柄を拘束され、クーデター発生中は監禁状態におかれたため鎮圧に直接関与することはなかった。パエッタ中将揮下で首都防衛を任務とする第1艦隊も、この内戦においては活動しておらず、鎮圧後はイゼルローン要塞駐留艦隊を除く一のまとまった機動戦として残った。

経緯

帝国の策謀

前年である宇宙796年に発生した帝国領進攻とアムリッツァ会戦における同盟軍の大敗の結果、同盟では大敗の責を取るかたちで最高評議会および軍部上層における大規模な人事刷新が行われ、暫定政権首班にヨブ・トリューニヒト委員長が就任した。いっぽう、帝国では皇帝フリードリヒ4世の急死に端を発して後継者争いが生じ、幼エルウィン・ヨーゼフ2世を擁するリヒテンラーデ=ローエンラム枢軸と、これに反発するオットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵ウィルヘルム・フォン・リッテンハイム3世侯爵らを中心とした門閥貴族たちとのあいだの対立が急速に化しつつあった。

こうした状況下で、来たるべき門閥貴族との内戦を見据えた帝国宇宙艦隊長官ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥は、内戦に同盟、特に”魔術師”の名をもって鳴るヤン・ウェンリー大将が介入する可性を危険視し、同盟内に内乱を発生させることによって同盟とヤンの行動を掣肘させることとした。ローエンラム元帥はかつてエル・ファシルの戦いで逃亡して不名誉な捕虜となったアーサー・リンチ元同盟軍少将を喚び出し、自らの手駒として同盟へと送り込む。

クーデターの計画書を与えられて同盟に戻ったリンチは、部長ドワイト・グリーンヒル大将(前宇宙艦隊総参謀長兼統合作戦本部次長。アムリッツァ敗戦の責を取り左遷された)ら、アムリッツァ敗戦による同盟のへの甚大な損、そしてそれ以前からつづく急速な政治腐敗の進行と経済社会弱体化に強い危機感を抱く高級将校たちに接触。彼らをクーデターへと駆り立ててゆくこととなる。

クーデターの計画と捜査

クーデター計画への参加者は、リーダーとなったグリーンヒル大将のほか、情報部長ロン中将内に残る数少ない傷の艦隊戦である第11艦隊のルグランジュ中将エベンス大佐クリスチアン大佐といった面々であった。彼らはリンチがもたらした作戦計画に基づき、クーデターの準備を進めていく。

いっぽう、イゼルローン要塞官を務めるヤン大将は、ローエンラム元帥が内戦への介入を防ぐために同盟軍を分裂させる可性とクーデターに至る展開を、ほぼ完璧に予測していた。彼は宇宙797年2月19日に行われた帝国軍との捕虜交換による帰還兵とともに首都ハイネセンへ戻ると、3月19日ハイネセンのコートウェル公園において宇宙艦隊長官アレクサンドル・ビュコック大将秘密裏に会談する。その席上で、ヤン大将ビュコック大将に内乱の予測を伝え、未然に阻止するべく捜めるとともに、叛乱発生時の鎮圧命事前に発するよう要請した。

この提言をうけビュコック大将は捜に着手したが、もともと明確な物的拠のない予測であったため担当者の人選に慎重を期す必要があったことにくわえ、ビュコック大将自身、艦隊揮が本職であって捜揮などには不慣れなことも相まって、捜チームの編成は速とはいかなかった。しかしそれ以上に、彼らがほとんど活動する間もないほどに3月30日クーデターの最初の一撃が発動する。

クーデターへの道

3月30日、統合作戦本部ビルのロビーにおいて、合作本部長クブルスリー大将への襲撃事件が発生する。これは、帝国領進攻時の作戦参謀であり、アムリッツァ会戦直前に転換性ヒステリーの発作で倒れ予備役編入と強制入院を余儀なくされていたアンドリュー・フォーク准将の手によるものだった。彼は正式な手続を省略しての現役復帰の要クブルスリー大将に拒絶されて逆上し、隠し持った小ブラスタークブルスリー大将を撃ったのである。

この事件は実際には統合作戦本部の機低下を狙ったクーデターによる暗殺陰謀だったが、フォーク准将は彼一人の犯行とみなされるように底した深層暗示をかけられており、クーデター計画が明るみに出ることはなかった。結果として統合作本部長の暗殺そのものには失敗したものの、クブルスリー大将は長期の入院加療が必要となり、統合作戦本部の機低下という的は達成された。

合作本部長の臨時代行にはビュコック大将が打診を受けたが、彼は軍部両トップの兼任が権集中と非常時の機不全を招くおそれから辞退し、統合作戦本部次長のうち最年長のドーソン大将が臨時代行に就任した。しかしドーソン大将戦略として庸なのみならず人望の欠如でも知られた人物であり、統合作戦本部の運営混乱を余儀なくされることとなる。

同盟各地の蜂起

クブルスリー大将への襲撃につづく4月上旬には、同盟辺の各地でクーデターによる叛乱が相次いで発生することとなった。

ドーソン大将の統合作本部長臨時代行就任と前後する4月3日惑星プティにて軍の一部による武起が発生、惑星を占拠する。ネプティスはハイネセンより1880光年、第四辺区の中心地として宇宙港、物資集積センター恒星間通信基地を持つが、恒星間航行を持つ戦集団は有さなかった。

つづいて4月5日ハイネセンより2092光年第九区に位置する惑星カッファーで武叛乱が発生。8日には叛乱勢惑星パルメレンを占拠下におき、10日には武装勢惑星シャンプーを占領するに至る。この間、6日には銀河帝国においてリップシュタット戦役が勃発、8日にはヤン大将イゼルローン要塞に帰着している。これら四ヶ所の叛乱は互いに遠く離れた位置で発生しており、クーデターとしては、それぞれハイネセンより別個に鎮圧部隊派遣されることで、首都が武真空状態におかれることを期待してのものだった。

しかし4月13日ドーソン大将は、ようやく下した鎮圧命において、イゼルローン駐留艦隊に対して四ヶ所すべての叛乱の鎮圧を示する。この命クーデター阻止とは関係に首都に残る戦の温存と内戦勃発による帝国の脅威度低下の両者を的な理由として下されたもの[1]で、クーデターの想定に沿わないかたちにはなったものの、結果的にクーデター阻止することにはならなかった。ハイネセンにおけるクーデターは、この当日中に発生したのである。

クーデターの経過

ハイネセンにおけるクーデター

4月13日防委員会部長グリーンヒル大将より、同日に首都にて地上部隊の大規模訓練を行うむね、軍首部に対し連絡があり、市民にも周知された。この大規模訓練の告知は、訓練・救難・移動などの面での軍隊の管理運用を職務とする閲部から発されたために、首都ハイネセンにおける全武装した兵士の移動についても、訓練の一環にすぎないとみなされ軍隊・市民双方が大きな疑問を抱くことはなかった。

ビュコック大将も、叛乱発生により臨戦下にある宇宙艦隊の管理監督に忙しく、またハイネセンにいまだ艦隊が残っていること、部長グリーンヒル大将情報部長ロン中将といったレベルの高官までクーデターに関与しているとは予想していなかったこともあって、この訓練の告知クーデター予告するものであると察知することはできなかった。

こうして訓練の告知をかくれみのに起したクーデターは、同日正午ごろまでに首都ハイネセンの要所を襲撃し、軍中枢である統合作戦本部、科学技術本部、宇宙防衛管制部、政治中枢の最高評議会ビル、さらに恒星間通信センターなどをほとんど流血なく占拠、ハイネセンを支配下におく。ドーソン大将ビュコック大将ら軍首をはじめ政軍の最高幹部はいずれも監禁されたが、トリューニヒト最高評議会議長に限っては、クーデターベイ大佐の内通のため先んじて官邸を脱出しており、ついに拘束できなかった。また、クーデターの戦限界から、議会内の野党などもやむなく放置されている。

救国軍事会議のクーデター布告

こうして首都中枢をおさえたクーデターは、グリーンヒル大将を「議長」とする自由惑星同盟軍事会議を称してハイネセンの実効支配と同盟章の停止を宣言し、救軍事会議の決定と示があらゆる法に優先するとして、同盟章にかわる新たな布告を発する。その内容は以下のようなものであった。

一、銀河帝国打倒という崇高な的にむかっての、挙一致体制の確立
二、益に反する政治活動および言論の、秩序ある統制
三、軍人への警察権付与
四、全期限のを布く。また、それにともなって、すべてのデモストライキを禁止する
五、恒星間輸送および通信の全面営化。また、それにともなって、すべての宇宙港を軍部の管理下におく
六、反戦・反軍部思想をもつ者の職追放
七、議会の停止
八、良心的兵役拒否を刑罰の対とする
九、政治家および公務員の汚職には厳罰をもってのぞむ。悪質なものには死刑を適用
一〇、有な娯楽の追放。風俗に質実剛健さを回復する
一一、必要をこえた弱者救済をし、社会弱体化を防ぐ……

こうして救軍事会議は、ハイネセンにおける政治・経済社会の各分野を軍部の統制下においた。その実態は、かつてのルドルフ・フォン・ゴールデンバウムのそれに似た軍国主義体制といえた。

ヤン艦隊出動

クーデター実行にあたっては、クーデターもヤン大将の存在を懸念事項とした。彼は”魔術師ヤン”として高い智略と人望を持つ提督であり、イゼルローンと要塞駐留艦隊の戦略的価値も無視しがたいものだったからである。ハイネセンに不在だったこと、クーデター実行までの厳しいスケジュールの中で余裕がなかったことなどから、クーデターからの事前の勧誘はなく、起後の勧誘を検討するにとどまった。

要塞駐留艦隊(ヤン艦隊)がクーデター発生を受けてハイネセンに急行したとしても、到着には最低でも30日の期間が必要であると予測されたが、これはハイネセンを握するには充分な時間であった。さらにハイネセンは強衛星システム処女の首飾り”を有することから、たとえヤン艦隊であってもハイネセンの制圧は難しくなると考えられ、その上でヤン大将と対話すれば説得できるのではないか、という期待もあった。

しかしクーデター発生にあたり、ヤン大将は救軍事会議への参加を拒否。これに対し救軍事会議は第11艦隊を動員、ヤン艦隊を迎撃する態勢を整えるにいたる。そして4月20日、ヤン大将は要塞事務アレックス・キャゼルヌ少将を要塞官臨時代理として残し、要塞駐留艦隊に全出撃を下ハイネセンへと向け出立することとなる。

クーデター派機動戦力の壊滅

出撃したヤン艦隊は、まず惑星シャンプールの動乱の鎮圧に着手する。シャンプールの叛乱部隊ゲリラ戦法によって後方を撹乱し、イゼルローンとの連絡・補給ルートを分断する可性を危惧したためであった。シャンプールの攻略ワルター・フォン・シェーンコップ准将の陸戦揮のもと4月26日より実施され、シャンプールはわずか3日間で陥落、クーデター指揮官マロン大佐自殺した(惑星シャンプール攻略戦)。

いっぽう救軍事会議側の第11艦隊は、偽情報でヤン艦隊を撹乱、不可能ならばヤンを射殺するという重任をバグダッシュ中佐に与え、シャンプールの攻略と時を同じくしてヤン艦隊に送り込んだ。バグダッシュは脱出者としてヤン艦隊部に招き入れられ、第11艦隊の出撃を伝えたものの、怪しんだシェーンコップ准将が画策し彼をタンクベッド睡眠による監禁下に置いたために策謀は失敗する。

第11艦隊の接近を察知したヤン艦隊はドーリア系に進出。5月中旬、ヤン艦隊と第11艦隊とのあいでドーリア星域の会戦が発生する。この戦いは、挟撃をして艦隊を二分していた第11艦隊を各個撃破したヤン艦隊の勝利に終わったが、勝敗が定まってからもルグランジュ中将は艦隊とともに絶望的な抵抗を続け、底した撃滅戦のすえ自殺するに至る。

この戦闘の結果、クーデター一の機動戦である第11艦隊は消滅した。さらには、鎮圧軍の勝利を受けて各惑星の警備隊や義勇兵がヤン艦隊麾下へ結集してゆくこととなる。

クーデターの行き詰まり、そして”スタジアムの虐殺”

軍事会議一の機動戦を失うのと同じころ、ハイネセン内部にも問題が生じはじめていた。

統制下におかれたハイネセンの経済は急に逼塞しつつあった。ハイネセンにおいては本来消費が生産を大きく上回るにもかかわらず、流通統制によって他域から隔絶されたため、人心の不安が物価の騰をまねき、消費物資の不足が立つようになっていったのである。この事態には経済統制を担当するエベンス大佐が対処したが、ハイネセンの支配を維持する必要上、フェザーン商人する流通と報道の統制緩和を容れることもできず、悪徳商人逮捕と徴発物資の放出などの対症療法にとどまった。

さらには、政軍の首トリューニヒト議長のみが拘禁を逃れたことから、救軍事会議内に内通者がいるのではないかという噂が囁かれ始める。グリーンヒル大将益な疑心を招くのみとしてベイ大佐にその抑制を命じたが、前述のように、皮にもそのベイ大佐こそが当の内通者であった。

そして6月22日、高まる市民の不満と不安は、ハイネセン記念スタジアムに結集する。大人数の集会が禁止される下にもかかわらず、暴力による支配に反対し、平和自由回復させる市民集会”をかかげて20万人の市民が集ったのである。導者は反戦ジェシカ・エドワーズ議員であった。救軍事会議はすぐさま集会の解散とエドワーズ議員の拘禁を試みたが、派遣されたクリスチアン大佐がはじめから暴力的解決におよんだ結果、反発した市民暴徒化して騒乱が発生。づくの鎮圧のすえ、エドワーズ議員とクリスチアン大佐本人をはじめとする市民2万人余、兵士1500人の死者を出し、のちに”スタジアムの虐殺と称される惨事となる。この事態は、クーデターからのさらなる人心の離反をもたらした。

ハイネセン制圧へ

ドーリア星域の会戦ののち、ヤン艦隊は後方環境の整備にあたっていたが、これを完成させた7月末、ハイネセンへ向けめて進発する。翌8月にはハイネセンの位置するバーラト系外縁部、距離6時(約65億km)の地点に到達し、ハイネセンをうかがうに至った。この結果、救軍事会議の勢がもはやバーラト系すら実効支配できない程度でしかないこと、ヤン艦隊を阻止できる宇宙を喪失したことが明となり、同盟全土に向けてクーデターの全面敗北と近日中の同盟章秩序の復活が誇示されることとなる。

鎮圧軍・評議会政府側の明確な勝利は、”魔術師ヤン”の名によって増幅され、各惑星の警備隊、地方駐留の巡視艦隊など立場を決めかねていた地方、さらには退役将兵や義勇隊の参集をもたらした。引退した前統合作本部長シドニー・シトレ退役元帥もヤン艦隊の支持を表明している。

軍事会議ハイネセン軌上の防衛衛星システム処女の首飾り”に希望を持っていたが、ヤン大将としては、”首飾り”よりも、ハイネセン制圧にあたっての抵抗を最小限におさえる難事を問題としていた。ハイネセン10億市民が人質となりえたからである。そのために、クーデターの最後の希望である”首飾り”を破壊するとともに、精的にも打撃を与えてその執念と抵抗の意思をうちくだく必要があった。

そこでヤン大将は、投降したバグダッシュ中佐クーデター帝国ローエンラム元帥の策謀によるものであることを喧伝させ、その大義を全に否定した。さらには氷塊を用いた奇策により、一兵の損もないままに”首飾り”を構成する12基の軍事衛星をことごとく破壊してみせたのである。

救国軍事会議の崩壊

バグダッシュ中佐の通信を受けた救軍事会議内部では、幹部たちが反発して帝国の関与を否定するをあげたところ、リンチクーデター計画は実際にヤン大将の喧伝通りローエンラム元帥の手によるものであると暴露したために強い動揺が走った。さらに”首飾り”がヤン艦隊によって全滅するにいたり、グリーンヒル大将軍事革命の失敗を認める。エベンス大佐らはなお抵抗したが、大将はこれ以上は益のみならず国家民の再統合に有であると説得してその動きをおさえた。

最後にグリーンヒル大将は、クーデター帝国の策謀の結果に過ぎなかったという拠だけは抹消しようと試みた。彼はリンチを撃とうとして逆に射殺されたが、リンチも他の幹部によってその場で射殺された。エベンス大佐は”救軍事会議議長代行”の名でヤン艦隊に対して降を申し入れ、クーデターは終結した。グリーンヒル大将の死は自殺としてヤン艦隊に伝えられた。エベンス大佐自身も直後に死亡している。

軍事会議の降を受け、ヤン艦隊はシェーンコップ准将揮のもとハイネセン地表に血上陸した。ビュコック大将ドーソン大将監禁下の首解放され、地球教護下で潜していたトリューニヒト議長もふたたび姿をあらわした。残るネプティス、カッファー、パルメレンドの三惑星の叛乱部隊も、のちにヤン大将に降することとなった。

クーデター終結後

クーデター終結後の初政府催によりハイネセンで章秩序の回復軍国主義にたいする民主主義勝利を記念する式典が開催された。式典中には、私服(文民)代表のトリューニヒト議長と制服(軍人)代表ヤン大将の握手が行われ、群衆の歓呼をうける場面もあった。

ヤン大将自由戦士一等勲章、共和栄誉章、ハイネセン記念特別勲功大章など複数の勲章を受けたが、上官にあたる統合作本部長宇宙艦隊長官がともに同格の大将にとどまったため、昇進はしなかった。部下たちも基本的に勲章や感謝状は受けても昇進はなかったが、シェーンコップ准将のみ、解放したシャンプールの住民からの強い要請を理由に少将に昇進した[2]兵長待遇軍属であったヤン大将の被保護者ユリアン・ミンツ軍曹待遇へと昇進したが、これにもトリューニヒト議長の口ききがあったとされる[3]

シェーンコップ准将の昇進処理を最後に、ドーソン大将は統合作本部長代行を退き、快復したクブルスリー大将が統合作本部長に復帰した。いっぽう、内通していたベイ大佐は罪を赦され、少将昇進とトリューニヒト議長の警護室長という任を得るにいたっている。また、記念式典と前後してリップシュタット戦役に破れた帝国軍人ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ上級大将イゼルローン要塞亡命めており、中将待遇の客員提督としてイゼルローン要塞部に迎えられた。

クーデターの影響

この内戦によって、同盟軍は第11艦隊の壊滅をはじめとしてさらに弱体化することとなり、ヤン艦隊以外に内に残された戦は第1艦隊のほか、遠距離移動をもたない恒星系単位の警備隊や火力と装甲の低い巡視隊、新編部隊程度でしかなくなった。こと人的資は少なからず消耗し、を守るヤン艦隊においてさえ、クーデター終結後の新設部隊への熟練兵の引き抜きと新兵への入れ替えが発生するほどであった。

また、クーデターを起こした軍部の信望は失墜し、発言権は低下した。政権側はこれを機に軍内の人事に介入し、軍中枢はクブルスリー大将ビュコック大将などごく一部を例外として、政権側の支持者で固められるに至った。特にビュコック大将の地位と望は政権にも無視しがたいものでありつづけたが、軍中枢の圧倒的多数を占めることとなった政権圧迫されたクブルスリービュコックの両大将は孤立を深めていくこととなる。

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関連項目

脚注

  1. *ドーソン大将は個人的にはるか年下の同階級者であるヤン大将を嫉視しており、実際の意図はヤン大将一方的に酷使することにあったようである。
  2. *これにはヤン艦隊の結束を妨しようとする統合作本部長代行ドーソン大将悪意が介在したともされる。
  3. *トリューニヒト議長が姿をあらわした際に官邸まで運んだのが、ちょうどビュコック大将病院に送った帰り道で呼び止められたミンツ兵長の乗るであった。
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