日本ファンタジーノベル大賞とは、新潮社が主催し、読売新聞社が後援する公募文学新人賞。
プロ・アマを問わず、未発表のファンタジー小説を募集する。大賞賞金500万円(25回まで)→300万円(再開後)。受賞作は新潮社から刊行される。
1989年創設。元々は三井不動産が創業20周年記念事業の案を募集し、読売広告社の持ってきたファンタジー小説の新人賞という案を採用、読売新聞社と三井不動産が主催し、文学新人賞のノウハウを持っている新潮社が後援についたという構図で始まった賞である。
新潮社がこの賞の受賞作の受け皿として、「新潮文庫ファンタジーノベル・シリーズ」という、今でいうライトノベルレーベルを立ち上げ、さらに日本テレビが協賛して受賞作をスタジオぴえろ制作でアニメ化するのが前提と、当初の企画意図では明らかに少年少女向けの「剣と魔法のファンタジー」を求めていた(当時は水野良の『ロードス島戦記』小説版が始まった頃で、少年少女向け小説では空前のファンタジー・ブームが起こっていた)。
……のだが、第1回受賞作は酒見賢一『後宮小説』。デビュー作ながら直木賞候補になるなど作品自体は非常に高い評価を集めたものの、どう考えても企画時点で求めた少年少女向けライトファンタジーではなかった。第1回からこんな結果になってしまったためか、その後もいかにもファンタジーらしいファンタジーの受賞作は出ないという事態に。
『後宮小説』は『雲のように風のように』というタイトルで、また第2回の優秀賞受賞作である鈴木光司『楽園』は『満ちてくる時のむこうに』というタイトルでそれぞれアニメ化されたものの、肝心の受賞作がアニメ向きでなかったためアニメ化企画は2年で頓挫。「新潮文庫ファンタジーノベル・シリーズ」も僅か3年、13冊を発行したのみでポシャってしまう。
とはいえ、賞自体は前述の酒見賢一や鈴木光司(のちに『リング』で大ブレイク)のほか、第3回では佐藤亜紀『バルタザールの遍歴』、第4回では北野勇作『昔、火星のあった場所』、第6回では池上永一『バガージマヌパナス』と銀林みのる『鉄塔 武蔵野線』など評価の高い作品・作家を多数輩出した。しかしその一方、後援の新潮社はあまり受賞者の面倒を見ることには熱心ではなく、佐藤亜紀や池上永一は新潮社と喧嘩して版権を引き上げるといった事態にもなっている。
バブル崩壊後の不況もあって三井不動産は10年で降板し、賞自体の存続が危ぶまれたが、上記の通り優れた作家を輩出したことから無くすには惜しいと引き取り手を探した結果、清水建設が主催を引き継ぎ存続となった。
その後も他の新人賞ではなかなか出てこないような一風変わった作品を受け入れる賞として、宇月原晴明、畠中恵、森見登美彦、越谷オサム、西條奈加、仁木英之などの作家を輩出していったが、仁木英之以降はこれといったヒット作が出ず、2013年度の第25回をもって休止となる。事務局いわく「創設から四半世紀の節目を迎え、一定の役割を終えた」とのことだが、大森望のツイートからするとスポンサーの清水建設が降板した模様である。
2017年から新潮社主催、読売新聞社後援(主催と後援が逆になった)という形で再開。
基本的には海外文学風の小説や、純文学とエンターテインメントの境界線上にあるようなスリップストリーム系の作品が受賞することが多いが、畠中恵『しゃばけ』シリーズが大ヒットして以降は仁木英之『僕僕先生』のようなライトファンタジー系の受賞作も増えた。森見登美彦『太陽の塔』が大賞を受賞するなど、わりと懐は広い。もちろん沢村凛のような大河ファンタジー作家もちゃんといる。
初期は受賞作以外の最終候補作が出版されることも多く、岩本隆雄『星虫』、恩田陸『六番目の小夜子』『球形の季節』、小野不由美『東亰異聞』、高野史緖『ムジカ・マキーナ』などが最終候補から出版され評価を集めた。
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最終更新:2024/04/26(金) 06:00
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