「星を見ておいでですか、閣下」とは、『銀河英雄伝説』における実質的な最初の台詞である。
『銀河英雄伝説』本伝第1巻「黎明篇」第一章「永遠の夜の中で」冒頭における、ジークフリード・キルヒアイスの台詞。小説全10巻におよぶ壮大な宇宙叙事詩の開幕を告げる言葉であり、アニメにおいても石黒監督版OVA本伝第1話、Die Neue These第1話ともにナレーションをのぞく最初の台詞である。
冒頭文であえて「実質的な最初の台詞」とことわっているのは、作中これ以前の部分にも一応複数の台詞が存在するためである。しかしいずれも本篇までの歴史を解説する序章「銀河系史概略」のものであるか、あるいは単に沈黙を示すだけのものであるため、やはりこの「星を見ておいでですか、閣下」が銀英伝のはじまりの台詞であると言ってよいだろう。
ディスプレイ・スクリーンの先の宇宙に見いる主人公ラインハルト・フォン・ローエングラムに対して、腹心の友であるキルヒアイスが「星を見ておいでですか、閣下」と呼びかけ、ラインハルトが「ああ、星はいい」と返す、というシーンである。
「星を見ておいでですか、閣下」
キルヒアイスの声に、一瞬の間をおいてラインハルトは視線を転じ、シートの角度を水平にもどした。すわったままではあっても、黒を基調として各処に銀色を配した機能的な軍服が、すらりと均整のとれた肢体を、よりいっそう精悍にひきしめているのがわかる。
ラインハルトは美しい若者だった。他に類をみないほどの美貌と称してもよい。やや癖のある黄金色の頭髪が白い卵型の顔の三方を飾っている。鼻梁と唇の端麗さは、古代の名工の手になる彫刻を想わせた。
しかし生命のない彫刻でありえない証明はその双眼で、蒼氷色の瞳は鋭く研磨された剣のような光を放っていた。それとも、凍てついた星の輝き、と呼ぶべきだろうか。宮廷の女たちは“美しい野心的な瞳”と噂し、男たちは“危険な野心家の目”と表現している。いずれにせよ、無機的な完璧さを有する彫刻の目でないことはたしかだった。
「ああ、星はいい」
ラインハルトは応え、自分と同年齢の腹心の部下を仰ぎみるようにした。
「またすこし背が伸びたのではないか?」
問いかけと返答のあいだには、それまでプロフィールだけは紹介されていたラインハルトの外見、とくに比類なき美貌と蒼氷色(アイス・ブルー)の瞳についての徹底した描写が挟まれている。以後全巻にわたり豊富な語彙でなにかと挟まれることになるラインハルトの美貌描写の最初の例である。
ニコニコでは、銀英伝関係の動画や生放送の画面が暗転したとき、なんらかの理由で何も表示されない黒画面がつづいているときなどに「星を見ておいでですか」とコメントされることがある。
また、アニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These』「邂逅」のTV(民放)放送時には、ラインハルトとキルヒアイスが当該シーンで「Blu-rayを見ておいでですか、閣下」「ああ、Blu-rayはいい」と会話する、ちょっとシュールなBD/DVD発売予告CMが放映されている。
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最終更新:2024/04/20(土) 07:00
最終更新:2024/04/20(土) 07:00
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