時代小説とは、エンターテインメント小説の1ジャンル。過去の時代(主に江戸時代)を舞台とする小説のこと。
歴史小説とは似ているようで(一応)違うジャンルであり、「実在の人物が登場して、史実に沿って話が進む」のが歴史小説。それに対して時代小説は「過去の時代背景を用いて、架空の人物、または史実に沿わない歴史上の人物の活躍を描く」ものである。
テレビドラマに例えれば、NHK大河ドラマは歴史小説であり、『水戸黄門』のような時代劇は時代小説である。
……という風に、歴史小説との間には一応ちゃんとした区別があるのだが、たとえば司馬遼太郎の諸作品や、最近で言うと和田竜『のぼうの城』や冲方丁『天地明察』のように、どちらかといえば歴史小説に分類される作品が「時代小説」と言われることも多く、「娯楽性の高い歴史小説」ぐらいの意味で使われている場合もある。実際、歴史小説でも大胆なフィクションを取り入れたものもあれば、時代小説とされているが史実をきっちりと踏まえた作品もあるわけで、境界線は曖昧である。
その昔、大正時代に「大衆小説」というものが登場した頃は、大衆小説といえば時代小説のことであった。直木賞として名を残す直木三十五や『宮本武蔵』で知られる吉川英治らが広く親しまれ、戦後も池波正太郎・藤沢周平を筆頭に、柴田錬三郎の剣豪小説や、山田風太郎の忍法帖ものなどで高い人気を誇った。
現在では佐伯泰英を筆頭に、「文庫書き下ろし出版」「人気に応じて長期シリーズ化」というライトノベル的な販売手法が定着し、いくつかの出版社が時代小説専門の文庫レーベルを立ち上げるなど、中高年向けライトノベルと言うべきジャンルとして定着している。複数のシリーズを掛け持ちして月一冊以上のペースでどんどん量産する多作な作家が多い。書店などでも時代小説の文庫本はひとつのコーナーにまとめられるようになっている。とはいえ読者層は高年齢層のみに留まらず、畠中恵の『しゃばけ』シリーズを筆頭に、高田郁の『みをつくし料理帖』など、若年層にも人気の高い時代小説もある。
元々は国際謀略サスペンスを書いていた佐伯泰英がそうであるように、他のジャンル(推理小説など)でデビューしたもののあまり売れず、時代小説に流れ着いてからブレイクする作家も結構多い(江戸川乱歩賞出身の鳥羽亮とか)。また他ジャンルで功成り名を遂げた大作家が、高齢になると時代小説が中心になるパターンも多い(志水辰夫とか)。あかほりさとるが「あかほり悟」名義で進出したり、ライトノベル方面からの時代小説進出も見られる。
なお、ハードカバーで出る時代小説と、文庫書き下ろしの時代小説の読者層はだいぶ違うらしい。
目明しや岡っ引きが事件を解決する、江戸時代を舞台にした警察・探偵ものであり、要するにミステリー小説。岡本綺堂『半七捕物帳』が嚆矢となり、探偵小説の執筆が禁じられた戦時中には、横溝正史のようにこのジャンルでミステリを書いていた探偵小説家もいる。
現在最も有名なのは池波正太郎の『鬼平犯科帳』だろう。ほか野村胡堂『銭形平次捕物控』も代表格。平岩弓枝『御宿かわせみ』や宮部みゆき『ぼんくら』など女性作家の作品も多い。シリーズが長く続くと徐々にミステリー要素が薄れて人情ものになっていったりする。
宮本武蔵や柳生十兵衛といった実在の剣豪、あるいは架空の剣豪が登場し、チャンバラ活劇を繰り広げるアクションもの。
圧倒的に男性作家の作品が多く、池波正太郎『剣客商売』、藤沢周平『用心棒日月抄』、柴田錬三郎『眠狂四郎無頼控』などが代表的。近年では佐伯泰英や上田秀人などの諸作が高い人気を誇る。
漫画『シグルイ』の原作にあたる南條範夫『駿河城御前試合』もジャンルとしてはこれにあたるが、南條範夫の作品は「残酷もの」と言われることが多い。
職人や商人のような、下町の平民の暮らしを描いた人情もの。捕物帳とは相性がいい。
藤沢周平、山本周五郎などが代表的な作家。北原亞以子や藤原緋沙子など女性作家も多い。
長谷川伸などが開拓し、戦後に笹沢左保『木枯し紋次郎』シリーズが大ブームになった。
妖怪が出てきたり、ものすごい忍術を駆使する忍者が出てきたりといった、非現実的な要素のある作品。「○○は実は××で死んでいた!」といったような、歴史の謎に対し、マイナーな珍説・奇説や超自然的な要素を導入してもっともらしい物語を組み立てるものも含まれる。
伝奇系では柴田錬三郎や隆慶一郎、山田風太郎などが代表的な作家で、剣豪小説のようなアクションものと特に相性がいい。半村良や夢枕獏といったSF方面の作家も活躍するジャンル。
妖怪が登場するようなファンタジーでは、畠中恵『しゃばけ』が代表格。宮部みゆきも幽霊や超能力の登場する時代小説が多い。
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4 ななしのよっしん
2017/11/14(火) 11:02:50 ID: nGEHOD5nc7
5 ななしのよっしん
2018/11/02(金) 20:23:53 ID: Fz9FfA7Lzi
安易に「これは司馬の創作であって史実に反する」といった批評が乱発され過ぎている
「史実に即したソースが無い、史実は異なるかもしれない」←ワカル
「史実に即したソースが無い、故に史実は全く逆であると証明できる」←ナンデ?
6 ななしのよっしん
2022/08/28(日) 22:58:20 ID: w5ypqxOGqf
(歴史小説の記事がないのでスレチになるやもしれませんが….)
最近になってまた歴史小説を読もうとしている者ですが、おすすめの歴史小説家がいらっしゃったらどなたか教えていただけませんか?
作家の年代別や扱っている国や時代別等は問いません。
ちなみに若い頃に司馬遼太郎や塩野七生の著作はあらかた読みました。
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最終更新:2025/01/21(火) 20:00
最終更新:2025/01/21(火) 20:00
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