札幌ラーメンとは、北海道札幌市発祥のご当地ラーメン。そのスタイルで提供されるラーメンである。
オーソドックスな札幌ラーメンは、豚骨主体に、鶏ガラ、野菜などを煮出した青湯スープを用い、麺は太めで多加水の縮れた黄い玉子麺を使用。
スープには味噌味、塩味、醤油味の通称「三味」が揃えられている。具材には、炒められたモヤシ、玉ネギなどの野菜が使われるスタイルである。
札幌では「昔風ラーメン」というメニューがある店も多いが、この場合は炒め野菜を具に用いない、中華そばスタイルの醤油ラーメンが提供される。
味噌ラーメンの味噌には主に白味噌が用いられるのが一般的である。古典的な味噌ラーメンの具にはチャーシューは用いられず、肉は挽き肉のみであった。
こってりとした濃厚な味噌ラーメンには根生姜や山椒、ニンニクなどのスパイスが加えられていることも多いが、これは純すみ系ラーメンの隆盛を受けて派生した、比較的新しいタイプのものである。
札幌市には1000店舗以上のラーメン店がひしめいており、人口あたりのラーメン店の比率では全国一位の激戦区となっている。
札幌ラーメンは、酒宴の締めや軽食として発達した、他地域の中華そばと異なり、本州よりも経済的に貧しかった北海道で、美味しいご馳走に値する食事として独自の発展をみせたと述べる説もある。
ご当地ラーメンの中でも、いち早く全国区に知られたものであった。
北海道大学正門近くにあった「竹屋食堂」で、中国から来た料理人の王文彩(おお ぶんさい)が、中国人留学生向けに提供していた麺料理が始まりであった。やがて日本人向けの改良が施され大好評となり、ラーメンはデパートや札幌市内の喫茶店でも提供されるほどの普及をみせた。
この頃に提供されていたラーメンは鶏ガラスープで、塩味ないし醤油味のあっさりしたスープのものであった。しかし竹屋食堂は戦争による物資不足で昭和18年に閉店してしまう。
現在は暖簾分けした「竹屋ラーメン」という店が神戸市にあり、竹屋食堂のラーメンを伝えている。
大東亜戦争による物資統制で、札幌市内にあった全てのラーメン店は姿を消してしまったが、終戦直後、満州から引き揚げて来た松田勘七(まつだ かんしち)らにより、ラーメンの屋台が始められ、札幌のラーメンは復活する。
このラーメンは豚骨を煮出した濃い味のスープの醤油ラーメンであったと伝えられる。
やがて1946年、松田の屋台は店舗となり「龍鳳(現在閉店)」と名付けられた。同じ頃1947年、西山仙治(にしやま せんじ)によって、現在は札幌二条市場にある「だるま軒」が開店され、その製麺部門が本格的な製麺工場を立ち上げ、札幌の代表的製麺会社である西山製麺のルーツとなった。
1951年には「元祖札幌ラーメン横丁」の前身となる「公楽ラーメン名店街」がオープンし、「龍鳳」の他にも現在もすすきので営業を続ける「芳蘭」などがテナントとして入っていた。「公楽ラーメン名店街」は札幌オリンピックによる道路拡張工事により取り壊されたが、「来々軒」などの店が現在の場所に移転し、1971年「元祖札幌ラーメン横丁」となった。
その後1976年、すすきの交番近くの第3グリーンビル地下に「もぐら」が移転し、現在の「新ラーメン横丁」(当初は「もぐら横丁」とも呼ばれていた)の起源となる。
札幌ラーメンは1954年頃には雑誌に取り上げられ、全国的にも名を知られるようになっていたという。
「味の三平」の店主、大宮守人(おおみや もりと)は、雑誌リーダーズ・ダイジェストに掲載されたスイスの大手スープメーカー、マギー社の社長の文章を見て衝撃を受ける。内容は日本の味噌の効用を高く評価し、日本人は味噌の力をもっと料理に活かすべきであるというものであった。
大宮はこれを切っ掛けに味噌味のラーメンを研究し、1955年に味噌ラーメンの開発に成功する。
この他にも大宮はラーメンを栄養豊富な食事とするためにラードを多く使い、ラードで野菜を炒めてその油を野菜に吸わせ具に用いる。平皿でご飯を提供し、ラーメン店でありながら「ライス」と呼称するなど、今に続くスタイルを創始した。
1964年には大宮の友人の大熊勝信の「熊さんラーメン」が東京、大阪の高島屋で開催された北海道物産展で、味噌ラーメンを実演販売して一躍大評判となる。
1964年、専業主婦だった村中明子が中の島に「純連(すみれ)を開店。従来の札幌ラーメンよりもさらにオイリーで濃厚なスープのラーメンが提供され、他店の味にも影響を与えた(記事:「純すみ系ラーメン」に詳しい)。中華鍋で炎をあげるほどの高熱で具材、タレを炒め焼いて作られる。
味噌にはスパイスが加えられ、生姜の香り漂う、アツアツのスープが特徴的である。
1990年代半ば、旭川に起源を持つ「平成軒」、続いて同じく旭川起源の「らーめん五丈原」がオープンし、同店の白濁した豚骨白湯スープで提供される「とんしお」は、一躍大人気となり行列が絶えない店となった。他店もその流行に乗り、豚骨白湯スープのラーメンをメニューに置く動きが広まる。
同時期、旭川から「山頭火」も札幌に進出し、これらの店で提供される豚骨白湯スープの1種である、旭川ラーメンのダブルスープという、豚骨白湯と魚介や昆布の出汁を合わせた、白濁した豚骨スープも本格的に認知されるようになった(それらのはるか以前に「天鳳」が旭川スタイルのこっさりとしたダブルスープを用いていたような例外もある)。
現在では札幌ラーメンでも強火で煮込んだ白湯スープを用いる店は増えている。
この頃には九州のいわゆる豚骨ラーメンも広まる気配を見せており「蛾次郎」(閉店)や、すすきのラーメン博物館(現在閉館「すすきのラーメン館」とは別。)では本格的な九州豚骨ラーメンが提供されていた。
しかしなんと言っても、札幌での豚骨白湯スープの普及に最大の貢献を果たしたのは「山岡家」だと思われる。そのラーメンショップ系の東京豚骨醤油というスタイルは、道民には物珍しいものであった。
1997年にオープンした「らーめんてつや」は臭みのない濃厚な豚骨白湯スープに、1ヶ月寝かせた醤油ダレを合わせ、背脂を加えるという背脂醤油をヒットさせ、全国的な有名店となる。北海道ではこのスタイルは同店が初であった。本州の背脂チャッチャ系とは異なる、札幌ラーメンとして完成された料理となっている。
1999年に札幌の人気ラーメン店「縁や(えにしや)」の初代店主、野本栄二が、横浜ラーメン博物館の開館5周年を記念して開催されたラーメンコンクールで、海老そばを発表し話題となってから普及。札幌では「縁や」の他にも「えびそば一幻」も有名店である。
2000年頃から札幌では、従来の関西や関東の店で提供される鶏白湯スープとは、明らかに味の印象が異なるラーメンを提供する店が増えた。
鶏ガラから濃厚な白湯スープを作ることは豚骨よりも短時間ですみ容易なのだが、どうしても鶏の嫌な臭いも感じさせてしまうという問題があって、札幌では従来避けられる傾向にあったが、0年代には鶏臭さを感じさせない美味いスープを開発した店が現れ新たな人気店となっていった。
これらの店は鶏白湯スープに豚骨スープや魚介の出汁、トマトなどの野菜の旨味を併用させているらしい。スープには天下一品ほどでは無いがとろみがある店が多い。
「麺屋 雪風(味噌のみ鶏白湯主体。豚骨も使われている。塩ラーメンは鶏白湯では無い。)」「麺や けせらせら」「麺や 亀陣」「とりぱん」などである。
2000年代半ば頃から札幌でも、二郎インスパイア系のラーメン店が出現するようになり人気となった。
13年には二郎の札幌店がオープンした。札幌の二郎系としては「ブタキング」など二郎系専門店の他にも、「五丈原」「てら」などで、メニューの中の一つとして提供されている場合もある。当地がら味噌味にアレンジされたラーメンもある。
余談だが札幌には二郎以前に、モヤシを高く盛るビジュアルのボリュームのあるラーメンを提供していた店が、過去複数店舗あったのだが、これら「京龍」「ふくべ」などは閉店している。ちなみに京龍には小錦が食べに来ており、ふくべは度々テレビで紹介され、「愛の貧乏大作戦」の修行先の達人に選ばれる名店であった。
関東で人気のある横浜家系ラーメンであるが、北海道ではなかなか受け入れられず、「六角家」が撤退に追い込まれた故事がある。また源流にあたるラーメンショップも上陸して数年で閉店した。
変わって家系のインスパイア系、あるいはラーメンショップの影響を受けたと思われる「山岡家」が北海道では非常に強い。90年代半ばに同店が進出した当時は、基本のスープは醤油味しか無かったが、やがて塩味、味噌味がラインナップに加えられ、道民の心を掴んだ。また麺もより太く腰の強い物に改良されていき、ラーメンの聖地札幌で繁盛店となっている。
近年、横浜家系ラーメンの専門店も数店舗興こっているが、どの店も味噌、塩、醤油の三味を揃えて、北海道の事情に合わす努力が行われ、その御蔭かやっと定着を見ている。とは言え壱系に近いクリーミーなスープの店が多い。
札幌の古典的な醤油ラーメンは、古くから他地域の物よりも黒みが濃いスープが基本で、富山ブラックほどでは無いが塩分量はかなりのものであった(富山ブラックの場合、スープは残すことを前提にレンゲを付けない店すらある)。
ところが近年、函館の櫻井家、櫻井ラーメンにルーツがある「いそのかづお」は黒々としていても、スープを飲み干せる、良い塩梅の醤油ラーメンを「札幌ブラック」と称して人気を得ている。
また櫻井家の創業者が札幌に移住し「櫻井ラーメン」として新たに店を2店舗オープンさせている。ほとんどのメニューが500円というコスパの良さで「ブラック味噌」という黒い味噌ラーメンもメニューにある。
とはいえ、屯田にある幻の店「味確認ラーメン」なども黒醤油ラーメンという同様のブラック系を古くから提供されているが。
ちなみに京都には「京都北山元町らーめん」という店があるが、ここのスープもブラック系に近いものであるが飲み干せる塩梅の美味いスープである。
2010年代に入って青森にルーツがある津軽ラーメンに影響を受けた、濃厚煮干し系と呼ばれる和風のラーメンを提供する店も増えている。
煮干しスープの専門店としては「麺や 玄鳥」、「中華そば札幌煮干しセンター」、山岡家のセカンドブランドである「二代目極煮干し本舗」などがある。
札幌に観光に来られる方向けにハズレが無いと編集者が個人的に断言する店をいくつか紹介する。
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最終更新:2024/04/23(火) 18:00
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