原始的な笛の形の一つで、世界的には広義に「フルート」と呼ばれる事が多い。片端が閉塞された管の側面に開いた孔に息を吹き込む事で管内の空気を振動させて音を出す。非常に単純な構造のため同じ構造を持った楽器はインドのバンスリや日本の篠笛、西洋のファイフ等世界中に存在するが目立った違いは調くらいな物である。リコーダーやオカリナの様に息を誘導する構造(ウィンドウェイ)が存在しないため鳴らすためには練習が必要だが、鳴らせる人はパイプ家具等のネジ穴の開いた骨の片端を塞いで息を吹き込んでも音を鳴らせる。
西洋音楽で主役となるのはベーム式フルート(狭義のフルート)の直接のご先祖様である「フラウト・トラヴェルソ」の登場による。横笛の一般的な特徴としてウィンドウェイを持つ笛よりも表現力が高く、徐々にそれまでの「フルート」の主流であったリコーダーに取って代わっていった。行進曲の分野ではアドルフ・サックスによる一連の楽器の開発が行われるまで鼓笛隊(ファイフ・アンド・ドラム・コー)の形式が中心だった。
現在最も広まっている横笛であるベーム式フルートはデカい音と安定した半音階を出すために大きなトーンホールを沢山作って人類に演奏可能な様に色々メカを付けた物である。さまざまな場面で他の横笛に対して有利であり、ピッコロとフルートだけで横笛の仕事はほぼ全てそつなく熟してしまう程である。一方で代償として素人には整備が不可能な楽器になってしまっている。
先述の通りベーム式フルートがあれば大体良いのだが精度と耐久性が物を言う楽器のため安い楽器でもそこそこ高い上に状態が悪ければ調整も素人には不可能である。しかし横笛自体は材質より管の形が重要な楽器のため原始的な横笛であれば樹脂製の安い物でも良く鳴ってくれる。音の大きさも高々リコーダー程度なので始める敷居は低い部類と言って良いだろう。以下に入手が容易で安定した横笛を挙げる。
構造は2ピースの7孔+サムホールの円錐管で運指がリコーダーに近い。C5から無理やり3オクターヴくらい出る。説明書に音の出し方が書いてある。一部のホールがダブルホールになっており半音階が出しやすくなっている。最初の一本はこれを買っておけばまず間違いない。ただし実店舗ではあまり見かけない。
C-21と同じく2ピース、7孔+サムホールの円錐管で音域も同じ。歌口が波型で息を少し誘導する様になっていてダブルホールは無い。こっそり頭部管のジョイントがチューニングスライドを兼ねる構造になっているのは流石ヤマハと言ったところ。運指はリコーダーと異なり左小指を多用する。説明書に音の出し方は書いておらず、音もC-21の方が出しやすいという意見がやや目立つが好みの問題だろう。楽器屋のリコーダーコーナーにひっそりと置かれていて1000円位なのでとりあえず買ってみよう。
耐熱ガラス製で6孔1ピースの円筒管。D管(D4)フルートからD管(D5)ピッコロまで各種サイズが揃っているのが魅力。見た目は飛び道具的だが仕様は伝統的な6孔の横笛そのものである。樹脂製に比べれば高いが1万円程度で木製よりずっと安い。アイリッシュフルートはD管で運指も同じなのでそちらを目指す人も試しの一本に使える。
プロのトラヴェルソ奏者の監修によってスティンズビージュニアのオリジナルを樹脂でコピーした物。実売で3万円台と樹脂製にしては高めだがプロ監修だけあって品質は高い。風呂場(樹脂製の強みである)で吹くと「おお、トラヴェルソだ!」という音がする。バロックピッチでA=415Hzと半音低いのでモダンな楽器とのアンサンブルには向かない。
同社のAF-3と異なりA=440Hzのモダンピッチ。音色がストレートでトラヴェルソらしくないという評判があるが樹脂製で円錐管のD管フルートとして見れば実売で2万円台と手頃で有り難い存在。
現代的なアレンジが加えられた横笛は音量の均質化や演奏性の向上のために歌口から一度膨らんで先に向かって細くなる円錐管を持っているが、そうでなくても十分に表現力を持つのが横笛である。パイプに1cm程の穴を開ける事ができれば実用的な横笛は簡単に作る事ができる。慣れてくれば2時間もあれば一本作れる。
管の内系は音の高さによって12-18mm程度で、肉厚は厚い方が吹き易くなる。手に入り易い物ではVP管(塩ビ肉厚管)が向いている。VP管を用いる場合はG4(=392Hz)付近を境界に高い音でVP13、低い音でVP16あたりが実用的な範囲である。管の片端を塞ぐための材はコルク栓か合う物がなければ切った発泡スチロールを使う。全てホームセンターで手に入る。
最も大きい孔は歌口で9-11mm程度なのでその位のサイズの穴を開けられる工具を用意する。キリ、リーマー、リーマーが入る程度のサイズまでのドリル、彫刻刀、各種ヤスリ等があればいいだろう。
「flute calc」等とググると計算機がいくつか出てくるので好みの物に頼る。トーンホールの大きさと演奏性の兼ね合いを試行錯誤して良い感じの仕様を探す。孔の大きさを変えると次の様な影響が出る。
最大の難関である音を出す事に必要なのは「息を一点に絞れる事」と「息を狙った所に当てられる事」である。歌口に下唇を当てて少し覆い、反対側の壁のエッジの下あたりを狙うイメージである。息を入れる角度は骨格や唇の厚さによって思ったより急だったり緩かったりするので色々試そう。口角を絞ると息が扇状に広がってしまって逆効果になるので時々手のひらに息を吹いて具合を確認すると良い。
運指はクリスタルフルートの運指がそのまま使え、クリスタルフルートに無い調でも最低音からそのまま適用できる。
参考までにアメリカ独立戦争から南北戦争のあたりで使用されたB♭管ファイフ(オールドピッチ)を筆者がVP13で製作して感触が良かった例を挙げておく(単位はcm)。Coopermanのパーシモン製ファイフと比べても遜色なく鳴ってくれている。
管(外径) | 歌口 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | |
径 | 1.30(1.80) | 1.0 | 0.65 | 0.70 | 0.70 | 0.65 | 0.80 | 0.65 |
位置 | 38.00 | 35.08 | 19.17 | 16.63 | 13.97 | 10.66 | 8.98 | 5.68 |
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最終更新:2025/02/12(水) 04:00
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