永瀬拓矢単語

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永瀬拓矢(ながせ たくや)とは、将棋棋士である。1992年9月5日生まれ。神奈川県横浜市出身。安恵照剛八段門下。棋士番号276

棋歴

6歳の頃に祖から将棋を教えてもらったのが、将棋との出会い。小学校6年生で奨励会入会し、2009年17歳で四段昇段を決めてプロ入りを果たす。

2011年に18連勝を記録し最多連勝賞を受賞。2012年度には新人王戦優勝加古川清流戦優勝を達成、勝率1位賞も受賞。2013年には再び最多連勝賞を受賞。2013年には順位戦C級2組在籍ながら、「竜王ランキング戦通算3回優勝」の規定により六段昇段も決めている。ちなみに、竜王ランキング戦で3連続優勝を達成したのは木村一基に続いて史上2人

2014年度の棋王戦挑戦トーナメントで、当時三冠だった羽生善治を本戦・敗者復活戦で2度破るなどして挑戦者決定戦まで勝ち上がるが、三浦弘行に破れ、惜しくも挑戦を逃す。

2015年電王戦FINALに出場。第2局でSeleneと戦い、衝撃的な勝利を収めた(後述)。同年度の竜王戦ランキング戦でも勝ち上がり、本戦では羽生善治を再度破り挑戦者決定戦に進むも、渡辺明に敗れて挑戦はならず。高勝率で何度も棋戦で勝ち上がっているにも関わらず順位戦でなかなか昇級できなかったが、同年度の順位戦でようやくC級1組への昇級を果たす。

そして2016年棋聖戦の挑戦者決定戦で、同じく勝てば初のタイトル挑戦となる村山慈明を降し、初のタイトル挑戦。棋聖戦前まで3戦3勝と得意としていた羽生善治棋聖との番勝負は、先にカド番に追い詰めるも、そこから2連敗でタイトル獲得とはならなかった。

2017年竜王戦で1組に昇級。2017年度の順位戦では9勝1敗の成績でB級2組に昇級。翌2018年度の順位戦では10戦全勝で2年連続昇級した。

2019年叡王戦を勝ち上がり、挑戦者決定戦では菅井竜也を破り挑戦者となる。高見泰地叡王との七番勝負は4連勝で勝利し、初タイトル叡王を獲得。令和初のタイトル獲得者となった。続いて王座戦でも斎藤慎太郎王座を3連勝で降し、一挙に二冠となった。また、タイトル2期獲得により八段に昇段。

2020年叡王戦では、当時竜王名人豊島将之の挑戦を受ける。七番勝負は千日手し直し1局、持将棋2局の“九番勝負”の死闘となり、番勝負総手数の史上最多記録を38年ぶりに更新した。この勝負に3勝4敗で破れ、叡王を奪取される。しかし、続く王座戦では久保利明を3勝2敗で退け、タイトル初防衛を果たす。また、タイトル3期獲得により九段に昇段。同年度の順位戦ではB級1組を1位抜けし、2021年よりA級順位戦に参加することになった。

棋風

デビューの頃は三間飛を得意とする振り飛車党だったが、2013年頃に居飛車党へ転向。かの大名人大山康晴にも例えられる受けの強さは同じプロにも讃えられている。

が、その棋以上に彼の代名詞とされるのが千日手を全く厭わない」姿勢にある。棋士にとって「ちょっと有利かも?」とされる先手番をもっても、不利な状況・おもしろくない状況に置かれたならば、すぐに千日手の筋を手繰り寄せようとする豪腕の持ち

2011年NHK杯に出場した際も、佐藤康光相手にNHK杯では初の“2回千日手の末に勝利、初のタイトル戦となった棋聖戦第1局でも羽生善治相手に千日手の後勝利と、勝利に対する貪欲さは刮すべきものがある。著書のタイトルも、が付けたか「永瀬流 負けない将棋」。

エピソード・こぼれ話

電王戦FINAL第2局『伝説の△2七角“成らず”』

電王戦FINAL・第2局へ出場が決まった永瀬ルールにより貸し出された対戦相手のソフトSelene”と事前練習を積み重ね、インタビューではが勝負のになる」将棋には勝ち負けではない方法がある」と述べていた。

ほぼ全てのファンはこう思っただろう。「あ、千日手やるなコレ」(今回のルールでは16時を過ぎて千日手が成立すると、引き分けになる)

勝負の永瀬が何を繰り出すのか。ファンの注を集めながら始まった第2局は、相居飛車からのという“コンピュータと戦う人間にとっては相当勝ちにくい戦”となり、進めるうちに千日手に出来る可性も消えていった。

しかし永瀬は互読み合いを6時間以上にわたって続け、決戦の寄せ合いに出た中で永瀬が86手1六角で王手、次いで88手2七角不成(王手)を放った。あえての“成らず”で、Seleneに時間を使わせるのか?……と視聴者がいぶかる中、事件は起きていた。

Seleneは、・飛・歩の成らずを正しく認識するようプログラムされておらず、Seleneは自玉の王手を放置して89手2二してしまったのだ。“王手放置の反則”である。

停止するSelene混乱する現場で、永瀬然と述べた。

「これ、放っておくと投了しますよ」 

「勝ち負けではない方法がある」ってこういうことかー!!(AA略

1時間後、ルールに則り“王手放置の反則”にてSeleneの反則負け。永瀬勝利となった。局後の大盤解説記者会見にて永瀬意、仮に対局が続いていた場合の展開が明かされ、視聴者はまた度肝を抜かれる。

  • バグの存在には練習対局で気付き、再現性も確認。しかし故意で使うつもりはなく、「成っても成らなくても変わらない展開になったら使おう」と考えていた。
  • その言葉通り、88手以降を“成”、“角不成”のどちらで読み進めても、一直線に永瀬勝勢の結論となった(棋士ソフト、共に見解一致)。
  • バグは直されている可性もあると思っていたが、ここまで来れば自分の勝ちだろうと考え、時間を使ってもらうためにあえて角不成した。

と、自らの勝ちを読み切った上でバグ摘するという離れ業だったことが判明。さらに練習対局で、長時間では五分だったが、短い持ち時間も含めたトータルSeleneに1割程度しか勝てていないこと、今日の戦では一度も勝てなかったことも自ら告白した。

「1割しか勝てなかったが、本番でその1割を引けばいいかなと思っていた」

とにこやかに普段通り永瀬勝利を貪欲に追求する鬼軍曹、勝負のの面躍如であった。

なお、この対局内容自体の評価も高く、勝又清和村山慈明は「電王戦で実で勝ったのは永瀬だけ」と後にっている。

成績

昇段履歴

タイトル履歴

タイトル戦登場履歴

タイトル戦登場:11回、タイトル獲得:5期

一般棋戦優勝履歴

優勝回数:2回

将棋大賞受賞履歴

関連動画

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電王戦FINAL

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関連リンク

関連項目

脚注

  1. *「習字をする時間を将棋にあてたい」軍曹こと永瀬拓矢七段のストイックな一面を女流棋士が明かすexit
  2. *永瀬拓矢七段、ストイックな「軍曹」の原点はラーメン店の父…棋王戦5番勝負12日開幕exit
  3. *棋士が一番怖いものとは? ~将棋年鑑2018 棋士名鑑アンケートよりexit
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掲示板

  • 178 ななしのよっしん

    2023/10/12(木) 12:28:17 ID: nHDKqBtS4P

    棋譜コメントによると「最後62飛を読んで足りないと判断したようだ」とのこと
    確かにセオリーでは「大駒は離して打て」なのだが
    今回は「第一感」の52飛をそのまま読んだという棋士も多かったはずだ
    おそらく彼にはそうした第一感がない
    しかしよりも将棋に勝ちたい
    だからこそ強な努によってカバーしようとしてきたのだろう
    その成果はこれまでの実績だけでなく本局の序中盤にも十二分に表れている
    ただそれでもあの局面を読み切れるだけの考慮時間までは残せなかったわけだ
    その点で彼が努不足だったとも言えなくはない…がそれはいささか酷ではないか
    むしろそういう状況へと否応なしに持っていった八冠の「異」こそ注されるべきだと思う

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  • 179 ななしのよっしん

    2023/10/16(月) 11:03:52 ID: nLjeMB7rD6

    最善手打っても藤井氏相手なら逆転されちゃうんじゃないか?という心理が働いちゃったのかなぁ。普通だったら3局も4局も取れてタイトル防衛だった可性高かったと思う

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  • 180 ななしのよっしん

    2024/02/10(土) 22:37:23 ID: dI3O1iSJc4

    朝日杯優勝おめでとうございます
    最近やっと調子が戻ってきたと本人が感じていて、その結果が出せたのと、最高の笑顔が見られて本当によかった。

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