池波正太郎(いけなみ・しょうたろう 1923~1990)とは、昭和期に活躍した作家である。
『鬼平犯科帳』 『剣客商売』 『仕掛人 藤枝梅安』の3大シリーズを代表作とする、大衆時代小説の大家。
軽妙でテンポがよく、爽やかな作風の文章が多くの読者の心をつかみ、大人気作家となった。
上述の3大シリーズの他にも、実在の人物を扱った歴史小説を多く執筆しており、中でも真田昌幸・信之(信幸)・幸村(信繁)を描いた長編小説『真田太平記』は特に有名である。
武勇に優れ、心優しいけれども少し不器用な、いわゆる「男らしい男」を好んで物語に描いた。
歴史上の人物を例にあげるなら、真田信幸・幸村兄弟(『真田太平記』)、中村半次郎(『人斬り半次郎』)、堀部安兵衛(『堀部安兵衛』)、鳥居強右衛門(『炎の武士』)、永倉新八(『幕末新撰組』)など。
こうした男たちのダンディズム、ロマンチシズム溢れる文章が池波正太郎作品の魅力のひとつである。
加えて、池波正太郎の描く主人公たちは、品行方正な人間ではなく、若い頃にやんちゃしていたり(『鬼平犯科帳』)、暗い過去を背負っていたり(『仕掛人 藤枝梅安』)、いわゆる「裏の世界」に精通していることが多い。
池波正太郎本人が語るところによれば、子どものころ近所に住んでいた、本職の盗賊(後述)だった老人が語った「なんといってもこの世は、泥棒と乞食で出来ているのですから」という言葉に強く衝撃を受けたそうで、多くの主人公達が、世の中の酸いも甘いもよく知った人物となっているのは、こうした影響があるのだろう。
こういう主人公達の設定のおかげで、池波正太郎作品は「熱いけど、どこか人生を透徹した感じを併せ持つ」味わい深い小説が多いのではないだろうか。
上記の3大シリーズは、基本的に1話完結の短編を集めた形式であり(例外もある)、短編小説に名品の多い作家である。もともと池波正太郎は、小説家としてデビューする以前は劇作家として活躍していたため、短くお話をまとめることに習熟していたのだろうと思われる。
基本的に勧善懲悪の枠組みをとることが多く、上述の「熱くてカッコイイ」男達が織り成すストーリーと合わせて、読後感の爽やかな作風である。
また、「悪」とはいっても、金品を盗むために人殺しも厭わない外道の盗賊と、入念な準備をして決して人を傷つけない「本職の」盗賊とでは、扱いに天と地ほどの差がある。前者は徹底的に許せない悪役とされるが、後者はある種の「職人」として尊敬の目すら向けられる。
こうした価値観で描かれる物語は、ホロリと来る人情ものの性格も兼ね備えており、『仕掛人 藤枝梅安』のような、救い難いほど暗い物語設定でもこうした作風を保つことができるあたり、長谷川伸[1]の弟子としての面目躍如といったところだろうか。
代表作『真田太平記』をはじめ、信州・上田市と真田家を描いた作品が多いが、作者本人の出身地は東京都である。信州という土地の風土に憧れるところがあった、と池波正太郎は述べており、真田家と池波正太郎の間に何か歴史的なつながりがあるわけではない。
池波正太郎作品を語るうえで外せないのが、作中に出てくる料理である。
作中に出てくる料理がどれも美味しそうで、かつ、作中の人物たちが美味しそうに食べるので、読んでいて空腹感をもよおすことうけあいである。
池波正太郎自身、グルメ・料理店紹介の本も出版しているなど、筋金入りの美食家[2]であり、その経験が作品にも活かされているようだ。
ニコニコ動画には、池波正太郎の作品に出てくる料理を再現した動画もアップロードされているので、興味のある方は是非ご覧いただきたい。
浅草生まれの粋な江戸っ子を地で行く人だったようで、お洒落で多趣味な人物として知られている。
映画観賞、絵画、海外旅行、食べ歩きなどが趣味だったようだ。
後述の「池波正太郎記念文庫」には、自筆の絵画も展示されている。
信州上田藩のとある藩士を描いた『錯乱』で、第43回直木賞を受賞した。
1988年には往年の功績を評価され、第36回菊池寛賞を受賞。
没後の1998年には、多くの作品の舞台になった上田市に「池波正太郎真田太平記館」 が開館。
生まれ故郷の台東区にある中央図書館には、2001年に「池波正太郎記念文庫」が併設された。
鬼平犯科帳と藤枝梅安はさいとう・たかを(さいとうプロダクション)が担当しており、剣客商売は大島やすいちが担当している(剣客も途中までさいとうプロが手掛けていたが、打ち切りとなっている)。最近は鬼平、梅安、剣客の原作のストックが切れたため、かつて池波が書いた短編のアレンジが中心となっている。
掲示板
34 ななしのよっしん
2023/01/25(水) 08:37:04 ID: zAuKVvpf4e
盛り蕎麦原理主義の池波先生にとっては
ぶっかけ・わんこ・とろろ・カレー南蛮、全部邪道だったのでしょうか?
35 ななしのよっしん
2023/08/18(金) 14:09:12 ID: zXwkAIMRSS
最近知って驚いたが池波正太郎って本名だったのか
ペンネームだと思ってたわ
36 ななしのよっしん
2023/11/23(木) 16:57:56 ID: tATR3cQJnd
池波正太郎の文章の秘訣かもしれない…
「剣客商売15」にある「すでに墨堤の桜花は散り、隠宅の庭の新緑があざやかで朴の木は白い花をひらき、忍冬は薄紅色の花をつけている」…この一文、そのまま七言絶句にできるんじゃないか?
漢文を訳したような簡潔さと、朗読した時の独特のリズム。
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最終更新:2025/03/26(水) 06:00
最終更新:2025/03/26(水) 06:00
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