津田信澄とは (ツダノブズミとは) [単語記事]

津田信澄（つだ・のぶずみ　1555 ～ 1582）とは、戦国時代の武将である。織田信長の甥。

概要

織田信勝の子。しかし謀叛人の子とは思えないほど信長からは厚遇・重用された。

本能寺の変の後、明智光秀の娘を娶っていたことから、織田信孝・丹羽長秀に光秀と通じている疑いをかけられ殺害された。

名乗り

江戸時代の系図類には「津田七兵衛信澄」として登場するが、最近の研究により、実際は織田姓を名乗っていたことがわかっている。更に一次史料に見られる諱は「信重」で、史料を元にした正しい名前は「織田七兵衛尉信重」となる。

生涯

父が謀反を起こした際はまだ幼児であったため2人の弟と共に許される。土田御前の取り成しがあったとも言われる。年代的には織田信忠とほぼ同世代。その後は柴田勝家の下で養育された。1564年、元服して信澄を名乗る。

1571年、浅井家臣の磯野員昌が織田家に降伏するとその養子とさせられる。信長お得意の「養子として送り込んでお家乗っ取り」の一環と思われる。磯野は1578年に出奔するが、その旧領をそのまま宛がえられているので作戦は成功したと言えよう。

1575年の越前一向一揆討伐で初陣を飾る。1576年、波多野秀治の離反に苦戦する明智光秀の救援に赴いている。以降はだいたい信忠と行動を共にしており、織田家遊撃軍の一翼を担う。

この1576年には、養父磯野員昌と高島郡を今津を境に分割、南半分を支配したと高島郡の材木座由緒書に伝わり、実際に彼の書状発給はこの年から始まっている。

1578年の相撲興行では堀秀政、蒲生氏郷らとともに奉行を務めている。この興行とは、信長の趣味兼人材発掘の場であり、一緒のメンバーからしてノッブに期待をかけられている若手武将という事が分かる。同年、荒木村重が伊丹城を捨てて逃亡すると伊丹城に入り、荒木一族を京都に送り届けている。この頃、光秀の娘と結婚。また光秀が縄張りを担当した大溝城主となるなど、光秀との関係は厚かった。

1580年、10年に及ぶ石山合戦が終わると、本願寺勢が退去した石山御坊（大坂城）に入り以降そこに常駐した。イエズス会の宣教師からは「大坂の司令官」と呼ばれるほどの権限を発揮する。安土城の普請奉行も担当。ちなみに安土城では森蘭丸のお隣に屋敷を構えており、信長からの信頼が伺える。

1581年、京都馬揃えが行われると序列5位に叙される。彼の上にいるのは織田信忠、織田信雄、織田信包、織田信孝。信長の弟・織田長益（有楽斎）よりも上である。同年の伊賀攻めにも参加。信長に大和国の支配権を所望したが断られた。

1582年、神戸信孝を大将とする四国征伐軍が編成されると丹羽長秀、蜂屋頼隆とともに副将として付けられる。だが四国渡海の前日である6月2日、本能寺の変が発生。信孝軍団も大混乱に陥り、四国征伐どころではなくなってしまう。そしてその時目についたのが光秀の娘婿である津田信澄だった。実際、光秀と信澄が手を組んでいるという噂が流れ、疑心暗鬼に陥った信孝たちは信澄が明智勢と内通していると判断してしまう。

6月5日、信孝は大坂城の信澄を急襲。信澄は防戦するも、上田重安によって討ち取られた。謀叛人の汚名を着せられ、晒し首にされたという。こちらは無実だったのだが、父と似た最期を迎えてしまった。信長の信頼厚く、「一段の傑物」とも評された人物としては哀しい最期であった。有能ゆえに警戒されてしまったか。享年28歳。

息子・織田昌澄は藤堂高虎に仕え（高虎は信澄の家臣だった時期がある）その後豊臣家臣として大坂の陣に参戦。敗れて自害しようとするも高虎の取り成しで江戸幕府旗本に取り立てられた。