清原元輔とは (キヨハラノモトスケとは) [単語記事]

清原元輔（きよはらの　もとすけ、908～990）とは、平安時代中期の歌人である。

概要

生涯を通して地方官を歴任したが、祖父の深養父と同様に、歌人しても高く評価された。「梨壺の五人」の一人として、万葉集の研究や後撰和歌集の編纂を担った。娘の清少納言は、父の名を汚さないために、和歌を詠むのを控えたという。

平安時代を代表する説話集「今昔物語集」「宇治拾遺物語」には、彼のエピソードが残されている。賀茂祭の最中、元輔は落馬した拍子に冠が脱げてしまい、禿頭を晒してしまう（当時、人前で頭髪をあらわにするのは、最大級の恥辱だった）。見物人に笑われると、元輔は冠も拾わずに「馬から落ちたら、冠だって落ちるのも当たり前だ。（中略）このような事例は過去にもあったことだから、それも知らず笑ってられるおまえ達の方が愚かだぞ」と言い聞かせた。従者が「すぐ冠を被ればいいのに」と言うと、「こんな説教でもしないと、彼らはいつまでも笑い続けるだろう」と返した。羅生門や鼻など、「今昔物語集」にはユニークなエピソードが沢山残っているが、元輔もなかなかユーモアのある人物だったようだ。清少納言もそのセンスをしっかり受け継いでいることは、「枕草子」でご存じの通りである。

「契りきな　かたみに袖を　しぼりつつ　末の松山　波越さじとは」は、元輔自身の恋歌ではなく、失恋した知人に頼まれて代筆した歌である（大河ドラマ「平清盛」で清盛が、西行に恋歌の代筆を頼んでいるが、当時は代作をお願いする事例もよく見られた）。ここで詠まれる末の松山とは、宮城県多賀城の近くにあった歌枕の地で、詠み人知らずの和歌「君をおきて　あだし心をば　わがもたば　末の松山　波もこえなむ」を踏まえて詠んだ作品である。漫画「うた恋い。」では、息子の清原致信（清少納言の兄）のために作った歌という設定になっている。