東京では古今亭志ん生、古今亭志ん朝、三遊亭圓生などといった大名人が得意としていた演目で、特に古今亭志ん生が今の形に仕上げ、それまでマイナーに過ぎなかった同話を一気にメジャーにしたことで知られ、江戸落語の中でも高い人気を誇り、代表的な噺の一つとなっている。
なお、戦後になって、少しアレンジを加え上方にも移入されており、桂南光などが演じているが、それはあまり知られていなかったりする(なお、売る相手が殿様ではなくて、大坂らしく大富豪の主人になっている)。
ある古道具屋の主人、甚兵衛。彼は呑気でお人好しな性格だったため、なかなか商売がうまくいかない。今日もしっかり者の女房から小言を浴びせられる。それは古臭く汚い太鼓で、女房は「こんな際物売れるわけないだろ、あんたももっと考えて物を仕入れな」と愚痴を言うが、今度ばかりは甚兵衛は「いや、これは年代物のいいものだ」と珍しく食い下がる。しかし、女房は聞く耳持たず、甚兵衛も店の者にハタキをかけるように指示する。
しかし、なんともいい音が響くので、店の者が調子に乗って何度も叩いていると、突然甚兵衛の元に侍が駆け寄り「何という音じゃ、駕籠の中の殿がその音を甚く気に入っており、買いたいと所望しておる」と甚兵衛に告げる。そして後で屋敷に来いといわれたので舞い上がっていると、「そんな上手い話なんてありゃしないよ、どうせ古臭い太鼓を見せたことで怒りに触れて松の木に吊るされるだろうよ」と窘められる。そして、どうせ売るなら捨て値で売ってきたらどうかと助言される。
甚兵衛が恐れ多くも屋敷に上がり、殿に謁見する。そして、現物を目の前にすると殿はしばらく無言となり、そしてその場を離れる。しばらくして家臣がやってきて「殿はこの通り、あの太鼓を所望しておる。今から金を遣わすがいくら所望じゃ?」。そう言われてもピンと来ない甚兵衛だが、しばらく言い倦ねていると「ならば、300両でどうじゃ?」。驚いた甚兵衛、思わず家臣に確認するが「うむ、あれは火焔太鼓と言って世に二つと無い名品である」と言い、そして50両の包みを6つ手渡した。
甚兵衛は女房に「お前は糞味噌に言いやがったが、あの太鼓は300両で売れたぞ」としたり顔で言うが、女房は出まかせだと鼻であしらう。しかし、現金を見るやすっかり態度が代わり「あんたならやってくれると思ってたよ、で、次は何を仕入れるんだい?」とすっかりご機嫌に。甚兵衛は太鼓が売れるなら次も鳴り物で半鐘でも買おうと言う。だが、女房が一言
「半鐘はいけないねえ、おじゃんになる」
祭りで用いるような太鼓で、名の通り太鼓の表面に炎をあしらった装飾が施されており、高さは3mほどの大掛かりな代物。現物は神社や仏閣などでは現物を見ることができる場所もあるようである。
そして、この火焔太鼓だが、大八車かなにかを使わないと運べないほど大きい。だが、噺家によっては風呂敷包みを使って運ぶと描写している人もいる。また、店の手伝いも丁稚の定吉が登場する場合もあるが、当然、丁稚程度の上背でハタキ掃除ができるような大きさではないので、大人の使用人が手伝っている描写に変えていることが多い。
…だが、本来そこにこだわってはいけないのである。この噺はとにかくストーリーの整合性より、いかにスケールを大きく描いて、古道具屋甚兵衛のサクセスストーリーを描くかが鍵であるからだ。
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最終更新:2024/04/25(木) 16:00
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