ニコニコ大百科:医学記事 |
狂犬病(Rabies)とは、狂犬病ウイルス(Rabies virus)によるウイルス性の人獣共通感染症である。
名前から犬の病気と思う人も居るかもしれないが、ヒトを含む全ての哺乳類(犬・猫・キツネ・ネズミ・コウモリ・etc…)に感染し、一度発症すると致死率ほぼ100%と言う凶悪極まりない感染症である。
一般的には「狂犬病に感染した動物から噛まれる」ことによってウィルスに感染し、2週間~2年ほどの長い潜伏期間を経て発症する。ちなみに噛まれるだけでなく、傷口や目・口など、粘膜部分を舐められることでも感染しうるので注意。
繰り返しになるが、発症したら致死率ほぼ100%。さらに厚生労働省が指定する「狂犬病清浄地域(狂犬病が発生していない地域)(リンク)」は、日本を除くと全世界でもわずか6ヶ国(後述)しかない。毎年5万人ほどが死亡しているポピュラーな病気である。日本においてもかつては年間100名以上死亡していた時期もあったが、1950年に制定された狂犬病予防法による徹底した野犬駆除、島国の特性を活かし検疫を強化するなどの努力の結果1956年の犬、及び人の感染、1957年の猫の感染を最後に国内での発生は確認されていない(海外で犬に噛まれ国内で発症した事例は1970年の1件、2006年に2件ある)。
ちなみに、ヒトからヒトへの感染はないとされているが、臓器移植などで感染した例はある。
症状の初期段階では「噛まれた傷は治ったのに、違和感や痒みが残る」「風邪っぽい」など。
そこから急性期に入るとよだれの異常分泌に続き、様々な神経症状を発生させる。恐水症(水を飲もうとするだけで激烈な痛みが走るため、水を怖がる)、恐風症(風の流れも痛みに繋がるので怖がる)始めとする刺激への過剰反応、興奮、麻痺、錯乱などが発現。
そこから2日~7日後には、脳神経や全身に麻痺が起こり、昏睡状態となり死亡する。
獣から人への感染、長い潜伏時間、人間性を喪失しながら死に至るさまへの恐怖は、悪魔憑きや様々な魔獣の伝説の元になっているようだ。
特に、唾液感染を始めとする特徴は狼男のイメージに、日常的な刺激(日光・鏡の反射・水・ニンニクなどの強い匂い)への過敏症はヴァンパイアのイメージに強い影響を与えている。
2023年現在、発症すると治療法は基本的にない。ほぼ100%死亡する。
例外として脳を薬で昏睡状態にさせた上で抗ウイルス薬を投与する「ミルウォーキー・プロトコル」と呼ばれる発症してからの治療法はあるが、それでも研究段階であり生存率は10%以下。「運が最高に良ければ助かる…かも?」レベルである。
流行地域に渡航するなど、感染の可能性がある場合は事前にワクチン接種をしておくのが望ましい。なお感染後、発症までにワクチンを接種すれば死亡する可能性は下がるが、あくまで発症確率を下げる程度の効果しかない(やらないよりマシだけど)。
ワクチンは確実に渡航前に接種し、もし海外で動物に噛まれるなどしてしまったら、速やかに治療する事をお勧めする。発症してからでは手遅れ。狂犬病ワクチンを打たずに汚染国に渡航することは、自殺をしに行くようなものかもしれない。
WHOの資料によれば、毎年5万~5万5千人程が狂犬病により命を落としている。また、その6割近くがアジア諸国で発生していると報告されている。さらに、その感染源は95%が犬による咬傷事故である。
2013年時点で、日本において「狂犬病清浄地域」とされているのはハワイ、グァム、アイスランド、フィジー、ニュージーランド、オーストラリア。以上です。日本で馴染みが薄いのは、徹底した野良犬の駆除などが功を奏したに過ぎず、世界では如何に根絶が難しいか…という事が分かるデータである。
特に外国船の入港する国際港や地方港では、外国船が船の守り神として乗船させていた犬が逃げ出し、地元の保健所や地方自治体、警察までもがその犬を捕まえるために大捕物を繰り広げる、などといった事例が散見される。パッと見ると面白い光景かもしれないが、笑い事じゃないのです。
日本において狂犬病がいつ頃から発生しはじめたのか、明確な記録は残っていない。
しかし、7~8世紀の海外との交流(遣隋使・遣唐使)により、この頃には狂犬病が既に伝播していた…とされており、718年に制定された養老律令や、984年に中国からの知識を元に編纂された日本最古の医学書「医心方」には狂犬病の症状の特徴や治療法が記載されている。この頃には、既に「狂犬病とは何ぞや?」と言う実体験を伴った知識が広まり始めたと考えられている。
また、非公式な記録では、江戸時代に記された「両郡古談」には1732年に長崎にて発生したと記されており、1736年には江戸で、1750年には山形で発生し、1761年には下北半島にて発生した事が確認されている。
その後も散発的に流行と終息を繰り返していた狂犬病だが、1886年頃から狂犬病被害が再発生。1896年(明治29年)に発布された「獣疫予防法」以降、狂犬病発生に関する公的な記録が残されるようになり、また狂犬の処分費用を国庫負担とすること、飼い主に手当金を交付するなどの措置が執られる。
が、狂犬病は徐々に全国規模で広がり、1923年から25年にかけて大流行する。それに先立つ1922年、ウィルス感染しやすい野良犬の駆除をしやすくするため「家畜伝染病予防法」が制定され、また全国的に「狂犬病予防週間」キャンペーンが行われて狂犬病に関する知識が国民で共有された結果、1928年から発生は激減した。
しかし太平洋戦争末期~戦後の混乱期にかけて再び大流行し、犬だけでなく牛・豚・馬・羊など、家畜にまで被害が拡大した。そこで1950年、「狂犬病予防法」が制定され、飼い犬の登録とワクチン接種が義務付けられる。
その徹底が功を奏し、1957年を最後に、日本国内に生息する動物を起因とする狂犬病は発生していない。直近では2006年、海外に渡航して狂犬病ウィルス持ちの犬に噛まれ、帰国して発症・死亡した2人の例があるものの、日本において狂犬病は「なじみの薄い病」となって久しい。
では、もう日本では狂犬病は「過去の病なのか」と言われると、そんなことはない。
繰り返しになるが、日本において「狂犬病」と名付けられていても、この感染症は「すべての哺乳類に感染するもの」である。
などなど。狂犬病のリスクを撲滅できたわけではなく、むしろグローバル社会においては感染のチャンネルは増えている。日本において半世紀以上確認されていないとは言え、それは先人たちの徹底した対策と、ウィルスに罹患してしまい処分された数多の動物たちの犠牲の上にあるものなのだ。
ペットを…特に犬を飼う時は、予防ウィルスの接種は必ず行いましょう。
掲示板
269 ななしのよっしん
2024/05/23(木) 20:39:18 ID: mgGhCUYkzM
意外と早く堕ちたな
「狂犬病」予防接種率が低迷、ワーストは沖縄52%・福岡60%…アジアでは年3万人以上死亡
https://
>人が発症すると、ほぼ100%死亡する狂犬病を巡り、犬の飼い主に年1回義務づけられている予防接種率が低迷している。2022年度は 蔓延まんえん を招く「危険水域」に迫る約71%に落ち込み、中でも沖縄、福岡両県がワースト1、2位だ。
>国内では近年、感染例は確認されていないが、アジアでは今も年間3万人以上が死亡しており、接種率向上を目指す国は実態調査に乗り出す。(手嶋由梨)
270 ななしのよっしん
2024/06/04(火) 11:03:47 ID: e5RZEbE0np
人への感染ルートは犬からが圧倒的に多いみたいだけど
なんで猫はそれほどでもないんだろうね
猫も狂犬病にかかるし、噛みついてくるのは同じなのに
271 ななしのよっしん
2024/08/17(土) 14:44:06 ID: T2yDso9yNN
>>270
犬と違って咬合力がそこまでじゃないからじゃないかな?
せいぜい歯形が残る程度で出血とかの傷まではいかないからとか
口とか舐められても感染するけど、犬と比べて猫にべろべろ舐められるってのは少ないからかもしれない
それか、猫から感染してるのに先入観で犬のせいにしてるとか
昔と比べて外人来訪者が多いから、犬を飼ってる人はきちんと狂犬病予防接種をさせてくれ
自分の愛犬のためでもあるんだぞ
感染発覚した瞬間殺処分になるからな?
急上昇ワード改
最終更新:2024/11/28(木) 20:00
最終更新:2024/11/28(木) 20:00
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