猛暑(MotoGP)とは、MotoGPのレース中に気温と路面温度が上昇することである。
ライダーの体力を削り、タイヤのスリップを引き起こす。
MotoGPが開催されるサーキットの中で、猛暑になることで有名なサーキットは以下の3つである。
カタルーニャサーキット
チャーン・インターナショナルサーキット
セパン・インターナショナルサーキット
カタルーニャサーキットは、ヨーロッパの各サーキットの中でも比較的に南に位置している。
そこで太陽の位置が最も高くなる夏至のころにレースを行うので、気温が軽く30度を超え、猛暑となる。
カタルーニャGPと鈴鹿8耐の両方を経験した秋吉耕佑が「カタルーニャGPは鈴鹿8耐より辛い」と
言うほどの暑く過酷なレースとなる。
チャーン・インターナショナルサーキットとセパン・インターナショナルサーキットは、熱帯に位置する。
平均最高気温が一年中30度を超える土地柄なので、当然のように暑く過酷なレースになる。
暑いサーキットでは各ライダーは自分の汗でのぼせ上がり、ユデダコのように真っ赤になる。
首筋にタオルを巻き、ライダースーツの胸元を開け、扇風機の風を浴びるライダーの姿が見られる。
ピットインのたびに首筋や脇や手首といった太い血管のある所へ氷を当てて体温を冷やさねばならない。
これをすることで意識がシャキーンと鋭くなり、なんとかコースに復帰することができる。
氷がまさしく必需品となる。
あまりに汗をかくので、ライダースーツが汗でずっしり重くなる。水分・塩分補給も必須である。
2011年2月のセパンテストにおいて、アルヴァロ・バウティスタは走行中にヘルメットの中で嘔吐し、
そのままテストを休む羽目になった。典型的な熱中症の症状が起こってしまった。
路面温度が50度を越えることが暑いサーキットにおいてしょちゅう起こる。
路面温度が50度を越えるとどのコンパウンドのタイヤでもグリップしないと言われ、転倒者が増える。
路面温度50度まではフィーリングが変わらないが、50度を超すと一気にフィーリングが悪化する。
55度を超えるとさらにフィーリングが激変し、内圧・表面温度・内部温度・空気圧といった
タイヤの状態が大きく変わる、こうしたことも盛んに言われる。
そして、暑いサーキットで「魔の路面温度55度」を越えることは珍しいことではない。
路面温度50度近辺は1度の差がタイムに大きく反映されるので、
雲が流れてきて日光が遮られるとコース上に出ている全員のタイムが一斉に上がる。
周回タイムで皆のタイムが上がったらサーキット上空に小さな雲が居座って日が陰っていることが多く、
周回タイムで皆のタイムが下がったらサーキット上空の小さな雲が流れて青空になっていることが多い。
路面温度が30度台なら、1度の差がタイムに大きく反映されないので、ここまでの珍現象にはなりにくい。
「路面温度が30度台でタイヤのグリップがいいとバイクの問題点も表れないが
路面温度が上がってタイヤがグリップしなくなるとバイクの問題点が表れる」という言い伝えの通り、
各ライダーは上手く走ってくれないマシンをなんとか力ずくで操縦する作業に追われることになる。
気温が高いとブレーキの性能にも悪影響が出てくる。
ブレンボ(イタリアのブレーキメーカー。MotoGPクラスのほとんどのマシンにブレーキを供給する) が
選んだ「ブレーキに厳しいサーキット」の中で、最もブレーキに厳しいVERY HARDのランクの中に、
カタルーニャサーキットとセパン・インターナショナルサーキットが入っている。
ブレーキは油圧で動くようになっているのだが、ブレーキオイルの温度が上がりすぎてしまう。
ブレーキディスクの温度上昇も問題となる。ブレーキディスクは露出しているので風を浴びせれば
冷えてくれるはずだが、その風が生ぬるい温度なら冷却効果が今ひとつになる。
ブレーキオイルやブレーキディスクの温度上昇でブレーキの効きが悪くなり、
「ブレーキを握ってもスカスカする」「ブレーキレバーがプニプニした柔らかい感じになる」
などとライダーが表現することになる。
気温が高いとエンジンを冷却するラジエーターの水温が上昇し、エンジンの冷却が上手くいかず、
エンジンの調子が悪くなる。アクセルを開けてもマシンが走らなくなってしまう。
やはりエンジンが生き生きと回ってマシンがぐんぐん伸びるのは涼しいサーキットであり、
暑いサーキットだとエンジンも「苦しい」と言わんばかりに出力を落とすことになる。
セパン・インターナショナルサーキットでは毎年2月ごろにMotoGP最大排気量クラスのテストが行われ、
各チームが様々な部品をテストする。
そのとき1つ言われることが「セパンでエンジンの性能を判断してはならない」というものである。
セパンは暑く、強力すぎるエンジンも本来の力を発揮せず、大人しい出力になる傾向がある。
セパンでエンジン性能を検査して「よし、十分に扱いやすい。このエンジンで行こう」と決めたら
他の涼しいサーキットではエンジンパワーが強力になりすぎて上手く扱えないことが判明する・・・
こういうことが過去に繰り返し起こってきた。
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最終更新:2024/04/19(金) 12:00
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