生活保護 単語

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セイカツホゴ

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生活保護とは日本国社会保障における救貧制度のことである。経済的に困窮した人の最低限度の生活を保障するセーフティネットとして設計されている。

略称は「生保」であるが、生保(セイホ)という略称は旧来より「生命保険」の略称としても使われているため、インターネット上ではスラング蔑称として「ナマポ」と呼ばれることもある。

概要

当記事では日本国の生活保護について解説する。

生活保護は日本国社会保障制度、そのうちでも救貧制度である。歴史経緯・国家における制度の位置づけについては記事「社会保障」の「救貧制度」の項に詳しいのでそちらを参照のこと。同様に日本において生活困難者に対して怠惰とみなす傾向の由来についても上記と同様に救貧制度を参照。

2021年内で161万7578世帯、200万8950人が生活扶助・医療扶助・住宅扶助など何らかの生活保護を受給している被保護者調査(令和3年7月分概数)exit[1]。ただし後述のように日本の生活保護制度は捕捉率が低いため、実際には生活保護を受けられるにもかかわらず、何らかの理由で受給していない(受給させてもらえない)個人・世帯も相当数居ると見られている。

所管官庁

所管官庁は厚生労働省。予算額は令和元年度時点で3兆5882億円となっている。地方における負担割合については、3/4に対して、地方1/4となっている。以下が生活保護費負担金(事業費ベース)である(生活保護費負担金事業実績報告より抜)。

年齢階級別の状況

厚生労働省によると、2021年時点の被保護者の年齢別構成は以下の通りである年齢階級別被保護人員と保護率の年次推移(Excel)exit

70歳以上 60歳代 50歳代 40歳代 30歳代 20歳代 20歳未満
42.7% 17.6% 14.1% 9.1% 4.6% 2.7% 0.9%

高齢世代の受給者が多いのは年金のみで生活できなくなって生活保護に依存している高齢者が多いためである(後述の「第2の年金化」を参照)。また働き盛りの世代の率は低いが、実際にはワーキングプアに陥っている若い世代が十分に救済されていないという問題も摘されている。

制度説明

制度の的は、民の健康で文化的な最低限度の生活の保障であり、資産力のすべてを活用してもなお生活に困窮する者(高齢者・傷病者・障害者・子世帯など)に対し、政府自治体が、困窮の程度に応じた保護を実施するとともに、自立を助長することである(生活保護法1条)。

要するに最低限度の生活を(自立して)行える状態にするため、生活困窮者を支援すること』が基本的な制度意義となる。

な内容は、金銭的援助。これは医療の現物支給も含まれる。食費・光熱費などの生活扶助と思われがちだが、地域ごとに定められた範囲内の賃が支給される住宅扶助(金銭給付)、教育を受けるための教育扶助(金銭給付)、医療を受けるための医療扶助(医療補助は生活保護費支給票を初診の時に提示し、以降は現金を介さない現物支給となっている)など、扶助の種類は全8種と多様である。

本来の生活保護の制度設計の思想から言うならば、最低生活費を下回っている労働者にも生活保護の一部(住宅補助や医療保障等)が支給されるべきなのだが、現時点においてその観点からきちんと運用されてる事例は極めて少ない。そうなる理由については問題点の「漏給問題」を参照。

また、戦後の生活保護の法設計時には少子高齢化については年金で何とか対応しようという極めて甘い見通しを政府が立てていた、つまり(建前上)想定外であるため、21世紀現在においては年金受給のみで生活できなくなった老齢世帯が生活保護に流れ込むようになってきている。これについては問題点の「第2の年金化」を参照。

さらに、デフレーション下における低賃金が浸透した現代において生活保護を受ける人々への社会的な反感をマスメディアクローズアップすることが往々にあり、その結果、生活保護予算の削減が一部の政党などからも提起されることがある。

給付額

給付額についてだが、まず以下の式を覚えていただきたい。

①扶助の合計額 - ②収入認定額 = ③振込額

これが基本である。おおよその見込み額として仮に単身の成人男性健康状態が悪く就労不能という場合、地方政令指定都市にて生活扶助が77,980円前後、住宅扶助が53,700円。合計131,680円が①扶助の合計額となり、まったく収入がない(②収入認定額が0)場合、131,680円が③振込額となる。あくまで参考例なので注意。

この中からアパート代、電気ガス光熱費、被費、食費、他、生存にかかる費用すべてをまかなうこととなるのである。なお、医療費、NHK受信料は(現物支給として)支払額が免除されるため原則はかからない。

この額面で自宅に引きこもっていられるのであれば収支がとれると考える人も多いであろうが、実際にはたとえ働けなくても就労支援で週一回、収入認定一回は役所にそれぞれ出向き面談を受け義務として週一回は履歴書企業への送付をさせられる人が現在多い。これは高齢者も同様である。この場合、就労活動にかかる諸経費はケースワーカーにもよるが、食費を削るなりして融通することとなることが多いとされる。

また生活備品の破損時もどうにもならない。その為、本人の視点でどうしても必要ならば食費などを削って単内で購入費を捻出することとなる。この辺りは税金生存保障されている制度である以上は当然のこととみなされており、ケースワーカーたちも生活備品などを受給者がやりくりして買っていることを解っているため、購入細については確認しないのである。

なお、労働に勤しんでいながらも上記の額を割り込んでいる労働者ワーキングプア)は、最低生活費を下回っていると言い切れることから、健康維持の観点からも一度生活保護の受給を真剣に検討することを強く推奨する。

扶助

上記、①扶助の細が以下となる。

収入認定額

②収入認定額だが基本は働いて稼いだ額となる。以下の式で算定される。

収入認定額 = 就労収入 - (基礎控除 + 各種控除 + 必要経費等)

ただし、全額引いたのではいくらたっても保護受給者が立ち直れないため基礎控除として8000円はつけてもらえる。
なお、年金全額が収入認定額に入る。

控除

基礎控除
基本は8000円。所得に例して増えていく。
新規就労控除
半年だけ5000円控除される。
未成年者控除
高校生計の足しにしようとバイトした場合等につく控除である。

必要経費等

通勤など稼ぐのにかかった経費類で、タクシーなどは認められない。

衣料品の更新分や、出かけることによって多めにかかる食費などは基礎控除に含まれているので、基本的には認められない。原則、公共交通費代と思ってよい。

問題点

不正受給

生活保護を巡る議論で常に争点となるのが、不正受給者の存在である。被保護世帯の子どもバイトの給与を申告しなかったといった末なものから、暴力団など犯罪グループが関わる大規模なものまで、不正受給との戦いは長く繰り広げられてきた。

2020年度の不正受給件数は32,090件で減少の傾向にある。また、保護費ベースでも同年度の不正受給額は12,646,593円で、こちらも減少の傾向である。生活保護制度の現状についてexit

俯瞰して見ると不正受給は全体の2%未満と、かなり例外的な存在であると言える。

当然のことながら、制度への信頼性を大きく揺るがす悪質な不正受給者には行政が厳しく対応し、民も監視のを向けなければならない。

しかし、この問題は近年の社会保障費増大に合わせた政府の支出削減の動きと相まって、たびたびマスメディア政治家センセーショナルに取り上げられる。ここから「生活保護バッシング」とも呼称される、生活保護受給者が全て不正受給者であるかのような論調が発生する。大多数を占めるっ当な制度利用者の名誉のためにも、良識ある民はこれに関して慎重な態度を取らなければならないだろう。

扶養義務

しばしば扶養義務も不正受給と関連して話題となるが、扶養と生活保護の関係にはいくつかの規定がある。

民法が定める扶養義務者の類には、

  1. 夫婦
  2. 直系血族及び兄弟姉妹
  3. 等内の

の3つがある。このうち、1と2は絶対的扶養義務者として、要扶養状態になった者が居る場合は扶養義務を負う。他方で3は相対的扶養義務者であるので、裁判所が特別な事情(過去にその族が要扶養者から長期間扶養されていた事情など)があると認めた例外的な場合にだけ扶養義務を負うとされる。

さらに、2で扶養関係が→子(未成年)の場合は、「文化的な最低限度の生活準を維持した上で余力があれば、自身と同程度の生活を保障する義務」があるのに対し、扶養関係が子(成年)→である場合は、「その者の社会的地位にふさわしい生活を成り立たせた上で、余裕があれば援助する義務」と相対的に弱い義務になる。加えて、扶養の程度・内容に関しては原則として子の合意により決定されることが前提となることと、生活保護法で扶養は保護を受ける上での要件に設定されていないことを加味して、生活保護と扶養の関係を論じる必要がある。

判例も含めて以下のように解釈すればほぼ間違いはないと考えてよい。

  1. 強い扶養義務を負うのは,夫婦未成熟の子に対するだけ。
  2. 兄弟姉妹成人した子の老に対する扶養義務は「義務者がその者の社会的地位にふさわしい生活を成り立たせた上で、なお余裕があれば援助する義務」程度
  3. 具体的な扶養の方法程度は,まずは当事者の協議で決定する。
  4. 協議が調わないときは裁判所が決めるが、個別ケースに応じて様々な事情を考慮するので機械的にはじきだしたりはしない

なまじ法律上の文言として絶対的扶養義務者に直系血族及び兄弟姉妹が入っているため役所からの書類に慌ててしまう人も多い。そして役所側もそれを見越して兄弟間で交渉が認められる、もしくは役所への問い合わせがあった時点で生活保護の認定を止めてしまうという、制度を悪用したかのような事例がまま見受けられる。

結果として生に対応する日本人が受給条件を満たしているにもかかわらず受給することが出来ず、戚一同と連絡の取れない永住・定住外国人の方が申請が通りやすいという現象が発生しているのである。詳細については下記の漏給問題、外国人への支給についても参照。

2012年4月、とあるお笑いタレントが生活保護を利用していたということで一部マスメディアネットユーザーによる生活保護バッシングが起きたが、この事例を先述の法律に照らし合わせると、に一応の仕送りをしていた当該お笑いタレント最低限の扶養義務を果たしており、そのは仕送りが生活最低費に足りていなかったことから生活保護を利用したのであって、現状で違法行為は見られないという結論になる。

もちろん、収入に応じた仕送りの額が少ないなどといった非難はされうるだろうし、前出のお笑いタレントの場合は「タダでもらえるものならもらっておけばええんや」などと発言していたことが報道され、そのお笑いタレントの当時の収入などと照らし合わせた上での発言や考え方に対するモラルが問われたものと考えられる。もし行政側が扶養義務者に不満があれば裁判所に訴えてさらなる扶養(仕送り増額)をめることができる。

先の事件は扶養義務と生活保護の関係についての再考を国会に提起した。今後さらなる社会保障費の増大が懸念される中で、上記事件は扶養義務の履行促進による生活保護支給の削減を推進する絶好の口実となり、扶養義務者への通知義務や調権限の強化を盛り込んだ生活保護法改正案が2013年12月に成立した。

漏給問題

不正受給の一方で、また大きな問題となっているのは本来生活保護の対となるべき生活困窮者が何らかの理由で保護を受けていない、漏給問題である。

一例として、東京特別区部において、標準3人世帯(33歳・29歳・4歳)に支給される生活扶助=最低生活費の準は、167,000円である。年間にして約200万円。これが、東京においてこの3人家族文化的で最低限度の生活」を送るための最低収入と定められている。

だが、現実には世帯収入がこれを下回る同形態の世帯が少なからず存在している。本来であれば収入が最低生活費を下回る低所得世帯は、可な限り資産力を活用したと見做されたあとで生活保護を受けられる。

ところが日本では収入が最低生活費を下回っている世帯のうち、現に生活保護を利用している世帯の割合(捕捉率)は15~18%に留まっている。例として諸外の例を挙げると、ドイツでは64.5%フランスは91.6%イギリスは47~90%スウェーデンは82%である。

つまり、先に提示した現在の受給者数とこの数字を照らし合わせると、生活保護の対となるレベルの困窮者が、日本には全部で約900万世帯・約1200万人いることになる。つまり、約750万世帯・約1000万人の民が、生活保護を本来受給すべき貧困の中にあるにも関わらず、保護を受けられていない状態にあるわけである。

このような状態は、政府自治体が保護費圧縮のために行ってきた違法な保護申請の拒否・保護打ち切りや、生活保護受給そのものが恥であるとする日本社会全体に広まっている潮によるものでもあると考えられる。

また例外を除き、持ち自動車・土地など資産の処分も生活保護受給条件の一つである。大都会ならば公共交通機関の心配はない。しかし大都会以外のにおいては死活問題であり、仕事生活において自動車が必須レベルであるも存在する。仮に公共交通機関が存在しても、便数や路線の充実度の違いがあり一概に論ずることはできない。しかし自動車はまず認められない。これも受給を困難にしている一因である。

制度の理念としては、生活保護は「利用しやすく、かつ出やすい」制度をすべきであり、そのためには被保護者の就労に向けた多様な支援や、生活保護が一定の人々の制度ではなく全ての民の生存権を保障するための身近な制度であることの周知底が必要である。

また、事務手続きの関係から住所不定の場合には建前上は問題がないはずなのだが、実際にはほぼ申請が通らないと思ってよい。住所不定であるということは担当する市町村がはっきりしない、つまり窓口業務を行う地方自治体が書類そのものを受け取りたがらないのである。その一方で手元に現金があるときも門前払いとなることが多いとされ、通りやすい安として賃一回分より少し足りない程度、3万から5万円の現金資産のみと言われる。そしてこの条件だとアパート住まいではないワーキングプアはそのままではほぼ受給できないのである。

当然ではあるが救済策はある。ほぼどこの行政でも生活保護とは別途住宅貸付制度があったりするほか、生活保護さえ決まってしまえば役所による賃貸契約サポートも制度上存在するのである。もちろん、書類申請が正しく通ればという条件付きでの話である。

貧困に陥る前段階での一部扶助(住宅・医療・生業扶助など)の利用を可とし、本格的な貧困生活への転落を予防するといった施策も考慮に値するだろう。

第2の年金化

被生活保護世帯の類は、傷病者世帯・子(子)世帯・障害者世帯・高齢者世帯・その他と分けられる。この内、高齢の被保護世帯の増加が著しく、生活保護を圧迫する最大の原因となっている。

2011年時点での理由別世帯数の内訳は以下の通りである。

総数 高齢者 傷病 障害 その他
世帯数 1,472,230 639,760 296,310 158,490 106,060 271,610
100.0% 43.5% 20.1% 10.8% 7.2% 18.4%

ご覧のとおり、生活保護受給世帯の4割強が高齢者世帯という状態に陥っている。さらにこれからは団塊世代の高齢化により、ますます高齢の受給世帯が増加することが予想される。

このようになっている原因はいくつかあるが、一番大きなものは日本国年金保険年金)が、いわゆる「1階部分」の国民年金のみで生活を維持できるだけの金額を支給できる制度として設計・運用されておらず、さらに将来そのようなものになる見込みもないことに起因する。

いわゆる「2階部分」の厚生年金共済年金2015年に統合予定)は均して15万円程度の給付額があるため、世帯会社員公務員として長期間勤めていれば、配偶者の国民年金などを合わせて年金のみで最低生活費を確保することは可である。しかし「1階部分」の国民年金は満額でも6万円程度に過ぎないため、国民年金しか受給できない人(国民年金基金非加入の自営業者など)は、資産がなければたちまち生活保護に依存することになる。

制度面から説明するならば社会保障のうちの防貧制度である年金まともに動作していないとは言い過ぎにしても期待された動作をしていないため、救貧制度である生活保護に高齢者達が転落してきているのである。

傷病者・障害者・庭は生活保護から脱却する可性が十分見込めるのに対し、何らかの原因で生活が困窮した高齢者が、自力で生活できるようになる=安定した収入を確保するのは、年齢的にほぼ不可能である。とすれば、高齢者への生活保護のどは、被保護者が死ぬまで一生続けられることになる。生活保護の半数を占める高齢者世帯が自立しないままでは、生活保護の費用が爆発的に増大するのは当然である。

昨今では不正受給が取り沙汰されているが、生活保護費増大の最大の原因は、高齢者世帯なのである。給付準の引き下げよりも、なんとかして年金制度の制度改革などを行い高齢者を生活保護対から除くこと(自活可とする)の方がよほど先決なのである。

その為には老齢世帯の年金を増やすか老齢労働者の数を大幅に増やすかといった政策が想定されるが、前者は予算、後者はそも若年層と高齢者が労働シェア(会社収益)を奪い合う現象を起こしてしまうという抜本問題もあって議論は深まっていない。

外国人への支給

生活保護法には、生活保護の対日本国、と明記されている(同法1条・2条)。しかし1954年以来、人的見地から永住者(特別永住者含む)や定住者にも生活保護法を準用することで日本国民と同条件での生活保護給付を行っている。被保護対の外籍保有者は2021年時点で4万6003世帯・6万5273であり生活保護受給者全体の3%程度にあたる。逆に言えば、生活保護受給者の約97%日本国籍保有者である。

韓国朝鮮籍保有者は大日本帝国時代から日本に住んでいた者は少ない。その一方で、高齢化が進んでいるうえに、1982年まで外国人国民年金加入資格がなかったため、日本人以上に生活保護の「第2の年金化」が生じている。また被保護率の低い働き盛りの世代は日本国籍を取得して韓国朝鮮籍から離脱する傾向が強いため、韓国朝鮮籍内での高齢者率が高くなり、全体としての被保護率も高くなるという現象が生じている。

近年は1980年代以降に来日した中国東南アジアブラジル出身者の保護数が急速に増加している。彼らの多くは出稼ぎにやって来た不安定なブルーカラー労働者であり、雇用が気の波に左右されやすく、しかも失業後の再就職先を見つけるのが難しいため、結果的に生活保護に頼らざるを得ないケースが増えている。

特筆すべき点としてフィリピン人の子世帯の保護数が突出して高いことが挙げられる。これは結婚の破綻後に子供を引き取って育てることになったフィリピン人の母親の多くが低賃金パートなどでしか働けず、また日本人父親からの養育費が支払われないケースもあることから、生活保護に流れ込んでいるものである。

支給の性質と是非を巡る議論

この外国人に対する生活保護支給が日本人と同様の「法律上保護される権利」なのか、「恩恵・事実上の保護」に過ぎないのかがしばしば議論の対になっている。実際に生活保護を支給されているのだから違いはないじゃないか、と思うかもしれないが、法律上保護される権利であればその剥奪には法改正が必要であるし、また支給を拒否された場合には権利の存在をして不申し立てをすることができる(認められるとは限らない)のに対し、恩恵・事実上の保護であれば行政の一存で保護を剥奪できる上、不申し立ても認められないという違いがある。

この点について争われた訴訟では判断が二転三転したものの、最終的に2014年7月18日最高裁判決で「恩恵・事実上の保護」に過ぎないとの判断が下されている。なおネット上ではこの判決により「外国人への生活保護支給は違法と判断された」と喧伝する者も現れたが、この事件で争われたのは「外国人への生活保護支給は権利か恩恵か」という点であり、「恩恵としての生活保護支給は違法・違か」はそもそも争点となっていないため、そのの是非はともかくとして、判決の内容の説明としては誤りである。

外国人への(恩恵としての)支給の是非についても賛否両論があり、たびたび議論が起きる。特に2010年ニュースになった、大阪市中国人48人が来日直後に一斉に生活保護申請をしたという事件は、言い方は悪いが、生活保護に寄生しようとする外国人が存在する拠となった(もちろん拒否されているが)。

生活保護費を財政的に考える上では、外国人への支給総額は外国人から得られる徴税総額と較すると小さく、むしろ高齢者の第2の年金化が最大の課題であるため、政府レベルで取り上げられることは少ない。しかし慢性的な不況とナショナリズムの高揚から、外国人への社会保障社会止を訴えるショービニズム欧州極右勢力を中心に支持を広げているところ、日本においても右ネットユーザーや「在日特権を許さない市民の会」(在特会)を始めとする右市民団体がこれを盛んに提唱し、さらには2014年に結成された次世代の党玉政策の一つとして外国人への生活保護止を掲げるなど、思想・政治テーマとして取り上げられる機会は増えている。

本来の意義の消失

被保護者は保護費と共に、保護を勝手に打ち切られたり、保護金を差し押さえられたりすることがなくなる権利をも手に入れる。 その代わり、保護開始までには『作戦』とも呼ばれる役所の厳しい監を通らなくてはならないし、計の収支や、生活の様子・変化を逐一届け出て、生活の是正・改善に努め、なるべくく自立を果たさなくてはならないという義務も負う。この義務は制限ではなく力に応じて要される。

生活保護の審が年々厳しくなってきているという現状は、膨れ上がる生活保護費や医療費(現物支給分)に耐え切れない財政を見かねた行政側が、本来支援を受けるべき傷病者・障害者・子世帯まで『作戦』で一様に追い払ってしまっていることから来ている(先述の漏給問題、永住外国人への支給、第2の年金化)。

何らかの理由で社会からリタイアしそうになっても、とりあえず助けてくれる、という安心感が本来この制度の最も重要なところなのだが、21世紀初頭の現在において全にその意義を失いつつある。

このことは若ければ若い人ほど日本、ひいては自身の将来について悲観的になる原因の一端ともなっており、周辺制度も合わせて何らかの抜本対策を打たなければいけない点においては多くの人の賛同するところである。

また、年金、医療費と合わせて生活保護の制度が正しく回ることが、民の幸福追求と財政のバランスをとる上からも期待されているのである。

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脚注

  1. *厚生労働省
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