甲標的 単語


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甲標的とは、大日本帝国海軍において開発された特殊潜行艇である。

開発

軍縮会議によって保有艦に制限を掛けられた日本海軍は、制限の掛かっていないものによって何とか欧との戦力差を埋めようと考えていた。その際に出された案の一つが、「魚雷攻案」である。要するに魚雷人間が乗って誘導し、確実に命中させるという後の人間魚雷に通じる案であったのだが、(当時はまだ)必死兵器(使った兵士がほぼ確実に死ぬ兵器)を採用しないという海軍の意向からその案には変更が加えられ、敵艦に近づいて魚雷を発射するための小の潜行艇を作成することになった。こうして開発されたものが甲特殊潜行艇、通称「甲標的」である。

当初案では

  1. バッテリー駆動により航続時間50分、航続距離50km
  2. 最大水中速力30ノット
  3. 武装は45cm魚雷×2

というスペック開発が進められていたが、開発に当たった岸本鹿子治大佐以下スタッフ魚雷の専門であった為、甲標的は潜水艦というより魚雷っぽい代物になってしまった。このことが、そのまま甲標的の欠陥へと直結していたりする。

甲標的は当初、予め敵艦隊の通る域に潜させて奇襲し、敵戦力を削って味方艦隊の戦いを有利に導く、という運用方法を考えられていた。しかしながら、これには「味方が敗戦し撤退した場合、甲標的を回収できない」という欠点があり、またそもそも太平洋戦争では力となった航空戦力の存在(=甲標的の活動範囲より遠距離戦闘が始まってしまう)を全く考慮に入れていなかった。も、回収はともかく、この段階で航空戦力を考慮に入れておけというのは流石に「後出しジャンケン」の部類であろうが。

ともあれ、1933年から基礎技術の蓄積を兼ねて試作が進み、改良を重ねつつ1939年には第二次試作艇が完成する。しかし、この段においても様々な欠点が山積みであり(具体的には後述)、実際に試験搭乗員の一人は甲標的が実用に耐えないことを具申した……が、その搭乗員は試験終了後に転出させられた。一応、この第二次試作艇の評価を元に改良は施され、1940年から甲標的甲の量産が開始されることになる。

概要

さて、こうしてできた甲標的なのだが……。

  1. 電探やソナーといった索敵装備が全くない(というか、体が小さすぎてそのスペースすらない)ため、敵の存在を知るためには浮上しての潜望に頼るしかないが、この潜望も短いために使える深度まで浮上した場合波の荒い外洋では甲標的上部のが露出し、隠密性が失われる
  2. というか、体構造が安定性に欠けるせいで揺れが酷く、潜望で敵艦を発見するのが困難
  3. プロペラの配置が悪く、機動性は劣悪。全長23.9mという小のくせに400mという大艦並の旋回半径が必要
  4. ならスピードは速いのかと言えば要に全く届かない19ノットが最大、しかもこれもバッテリーに不安があるため、実用的な巡航速度は6~10ノット
  5. 極限までいろんなものを切りつめてるせいで居住性は劣悪の一言。潜行は12時間が限界
  6. 先述の安定性に欠けるせいで魚雷を撃つのも一苦労。というか魚雷を撃ち出す際の反動も小体のせいで押さえられないため、下手すると艦首面に飛び出す上、魚雷が狙った方向に飛ばないこともしばしば
  7. そもそも装填数が2発+一回撃てば体の動揺が収まるまで次弾発射不可(正確に言えば撃ってもいいが、まず狙った方向に飛ばない)であるため、射撃不可能
  8. というか敵を視で見つけた上でどう撃てば当たるかは、計算機などを積むスペースがないために艇長の暗算が頼り

……と、欠点山積みであった。

また、この頃には航空機の存在故に従来想定されていたような運用が困難であることも摘され、代案として艦隊決戦の補助戦力ではなく泊地への潜入によって攻撃することが提案された。実際の運用としては潜水艦によって輸送し、攻撃後撤退、潜水艦と再度合流した後は乗員のみ回収し、甲標的は自沈処分することとなっていた。

実際潜艇と言っても航続距離、稼働時間共に非常に限界が短く、到底単独で行動できるものではないため、潜水艦や甲標的母艦によるバックアップは不可欠であり、そうした意味で潜水艦より艦載機に性質としては近い、という摘もある。また、甲標的の限界の原因とも言うべき小さはそのまま隠密性の高さに繋がっており、対レーダーには強かったという。とは言え、前述の潜望に関する欠点のせいで、敵を見つけようとしたら自分が見つかって先に攻撃を喰らったという事例も多々あったようだが……。

海軍はそれなりに甲標的には期待を掛けていたようで、その後ディーゼル発電機を搭載して自力充電を可にした、電池を減らして若干スペースに余裕を持たせ搭乗員を増やした、そして体を大化してエンジンを搭載した丁蛟龍)などが開発、生産されている。

実戦

真珠湾攻撃シドニー港攻撃など、港湾攻撃に使用された。確実な戦果としてはシドニー攻撃時の宿泊艦クッタブル撃沈、マダガスカル攻撃時の戦艦ミリーズ大破及びタンカーブリティッシュ・ロイリティ撃沈(ただし浮揚された)、ガダルカナル島ルンガ泊地攻撃時のタンカーアルキパ撃沈など。

また、フィリピンセブでは安定した支援体制と狭い域という好条件からおおよそ5ヶに渡って生還しながら襲撃を繰り返すことができ、記録によれば駆逐艦一隻の撃沈を果たしている。

ゲームなどにおいて

『大東亜亡史2』では小潜水艦である甲標的として登場。千歳水上機母艦や巡潜などに搭載が可。通常の潜水艦べて格段にコストが低いが燃料、耐久も相応に少ない。また97式魚雷の弾数も少ないため、史実通り母艦を用いての運用が必要だろう。魚雷の射程がイマイチ短い、命中低い、火力微妙ってるのも不安要素。

艦隊これくしょん~艦これ~』では艦艇の装備として登場。な入手手段は千歳レベル12で甲に改装すること。頻繁に入手できる61cm4連装魚雷を上回る雷撃力もさることながら、これを装備することによって通常の撃戦の前に先制雷撃を行うことができるのが魅力。装備可な艦種は水上機母艦、重雷装巡洋艦潜水艦潜水空母、および一部の改二軽巡洋艦。なお、潜水艦潜水空母レベル10以上で甲標的しでも先制雷撃可となるため、レベル一桁で先制雷撃したいのでもなければ装備する必要はない。また魚雷としては扱われないので、夜戦カットイン攻撃に使えないという欠点もある。

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掲示板

  • 54 ななしのよっしん

    2019/11/21(木) 14:16:20 ID: ajpuMXP89R

    そもそも機雷を敷設したいなら母艦から直接のほうが効率も搭載量も上なわけで
    隠密性に関しても、戻ってくるまで待機が必要という欠点がすべて台しにしている

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  • 55 ななしのよっしん

    2020/12/06(日) 08:18:02 ID: RiLMZiRq64

    甲標的は後々独で使われるミゼットサブマリンのような狭い港湾で
    動き回るような性質の潜艇ではないのに、
    港湾襲撃に使われたのが微妙な戦果に繋がっている。
    (初期完成度が微妙なのも原因の一つだが)
    またどう頑ってもこのクラス情報収集力は限界があるので
    航空偵察や線などで外部の情報に頼るしかい。
    港湾襲撃も出来なくはいが、フィリピンみたいに々があるところに
    港があって、敵艦発見の一報があったら峡で待ちせみたいな
    艇だけど、迎撃戦闘機みたいな運用が合うんだろう

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  • 56 ななしのよっしん

    2021/03/31(水) 08:09:39 ID: HOC8RrLcsM

    >>55
    今の技術ならUUVとしてモノになるかもね。母艦から離れて索敵したり、互いにデータリンクで誘導魚雷を放ったり。人を乗せなければ小化出来るし居住性も問われない

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