登場人物(とうじょうじꜜんぶつ)とは、物語や戯曲、舞台などのフィクションに現れる人物、または特定の場面や事件に現れる人物のこと。本記事ではフィクションにおける登場人物(=キャラクター)について解説する。キャラクターの項も参照。
2000年代以降、登場人物や世界観はプロットと独立した「データベース」として扱われ、物語と分けて考えることが可能だとされる傾向があった。
しかし登場人物とは単なる情報ではなく、鑑賞者の想像を喚起するために存在する「フィクション」である。キャラクターや世界観は実際には存在せず、語られなかった部分や、その文化で一意的な解釈が不可能な部分(たとえば「『羅生門』の下人の父親の血液型は何型か」などの問いに対する答え)については判断が留保され、答えが存在しない。必要ならば鑑賞者はそれらの部分を自分の想像によって無意識に補っていると言えるだろう。いわば登場人物や世界観にひとつずつ物語が付随するのであって、プロットとはそれを特別な視点から詳しく語ったものに過ぎないと言える。
現代のサブカルチャー(漫画やライトノベル等)はキャラクターが重要だとされる。勿論、キャラクターなしでも漫画や小説という形式を構成することは可能であり、それによって十分に読者の興味を引くこともできるであろう。しかし漫画評論家の伊藤剛が「テヅカ・イズ・デッド」で述べたように、キャラクターは物語の継続を担保する標識の役割を果たすのであって、究極をいえば漫画やライトノベル等のキャラコンテンツは「美しい何かを描写する」ものというよりは、「美しいことをしているキャラクターを描写する」ものと言えるのではないだろうか。
登場人物が作られる動機はじつにさまざまである。単に既存のキャラクターの何かしらの要素が気に入らなかったからだとか、プロット上必要だったから作られただとか、あるいは単に作るのが楽しかったから・作るよう依頼を受けたからなどもあり得る。
登場人物はプロットの中で果たす役割に応じていくつかの類型に分けられる。例えば恋愛漫画の場合、主人公とその意中の相手、恋のライバルといった関係のほかに、様々な情報を主人公に伝えたり、財力によって主人公たちを様々な場所に連れていったりする便利屋的な人物が存在する場合がある。これらの存在は物語を語ることを円滑にし、鑑賞者を飽きさせない効果がある。登場人物の能力や性格は、物語との兼ね合いも考えながら決定されるのである。
少年漫画等では会話においてボケ役・ツッコミ役が世界観等を説明し、主人公が聞き役となる場合がある。こうした会話の上での役は比較的流動的で、主に人物同士の関係性等において決定される。ツッコミ役だった人物がボケ役になったり、主人公がツッコミ役になったりすることもある。
文学者であり民俗学者であるウラジーミル・プロップ(1895~1970)はロシアの昔話にみられる登場人物を七つに分類し、その三十一の機能と合わせて構造主義的に物語を分析したことで有名である。その分類とは、
これらは現在でも文学・社会学系の評論でしばしば使用され、アニメ等の物語分析でも用いられている。詳しくは物語論に関する書籍を参照されたい。
昔話をモチーフに分けて類型的に論じた人物としては他に、世界の神話について研究したアンティ・アールネ(1867〜1925)とスティス・トンプソン(1885〜1976)などが著名である。
昔話と現代の物語の違いとして、個人の製作したものが改変されずに残るということが挙げられる。昔話は共同体の維持や聞き手にとっての解釈のしやすさのために改変がされるケースが考えられるが、現代では一般に公開された物は個人のものであり、また人目へのつきやすさは何より売れたかどうかで決まると言ってよい。
こうした背景から、昔話の類型とは異なる様々な分類方法が生まれるに至った。以下にその代表的な分類を挙げる。
主人公は鑑賞者が感情移入する主な相手である。物語は主に主人公の手によって解決される。いわゆるなろう系の物語においては、物語は基本的に一人の主人公が活躍し、主人公が軽く見られたり、逆に賞賛されたりすることを繰り返すのが基本形となる。こうした場合、主人公が変わったり二人以上いたりすることはあまりない。また、主人公が無個性なことも少なくない。
脇役は鑑賞者が客観的に見る相手である。しばしば様々な「属性」が組み合わされた個性的な性格をし、派手な図像や非常識な言動を伴うこともある。
また一方で、そうした第一印象から想像される典型的なイメージとは異なる行動をすることがあり、それが物語の主軸となったり、問題を解決する助けになったりもする。主人公にも言えることだが、いわばこうした登場人物には二面性があり、もとの性格と相反する行動をとった理由や、行動の真の理念について解き明かすのがそうした物語の目的のひとつとなる。(長編の場合、これらの疑問が一通り解決されてしまうとそれ以上キャラに頼り続けるのが難しくなるというジレンマがある。)
こうした「属性」や「意外性」は「キャラ」などと呼ばれ、リアリティのある造形や、キャラを貫く際の葛藤といった人間らしい葛藤といった「キャラクター」とは区別されることがある。
ヘイトタンクはいわば斬られ役であり、単なる敵キャラというよりは小物だとか、もしくは黒幕のようなポジションの人物(もしくは事象)である。この人物は主人公や脇役が行えば視聴者が一気に離れてしまうような非倫理的行動を行い、また主人公を軽視することで鑑賞者の怒りを買い、最後には制裁を受ける人物でもある。こうした人物は主にバトルものや恋愛ものにおいて、倒されても心が痛まない相手として登場する。
モブキャラはその世界における典型的な存在であり、その世界のシステムの一部として機能する。その世界の常識的や価値観がどのようなものかを端的に説明する役であるため、内面的な葛藤や意外性は不要である。
語り手は、視点となる人物(主人公など)から世界がどのように見えるかを説明する存在であり、またときにはそうした人物のふりをして物語を語ることもある。小説においては文章表現を用いて読者に物語を伝え、漫画やイラストや映像ではカメラマンや撮影スタッフ, 演劇においては演者に相当する存在である。
作者は物語を企画して届ける存在であり、語り手と区別されることもある。鑑賞者は作者の観察力にもとづいた描写によって物語世界を理解し、また現実世界を理解する方法をも変化させる。その変化に伴う快感から読者は作者を評価するが、しかしその快感は、作者への賞賛と区別することができない。いわば作者は一種のアイドルでありキャラクターなのである。
キャラクター(特に上述の脇役や主人公)に関して言えば、どんな技が使える・どんな喋り方をする・どんなことが苦手といったプロフィールがプロットよりも先に設定されることもある(たとえばアニメが始まるよりも先にキャラクターが作られたデ・ジ・キャラットなどはその最たる例である)。
家族構成や好きな食べ物などまで細かく決めてしまうことはプロットに矛盾を生じさせないという点で効果的ではあるものの、一方で物語の制約がきつくなりすぎるというデメリットもある。またこれは二次創作において顕著ではあるが、作者が原作の矛盾する箇所から話を広げ、矛盾を説明するために物語が作られることもある。
登場人物の名前は、犯罪者であれば時に実在しないような人名が使われる(DEATH NOTE等)。異世界人の場合では異世界の言語で意味が通るような名前がつけられることもある(指輪物語等)。
登場人物がグループごとに統一されたテーマ(宝石, 動植物, 天体など)に因んだ名前だったり、髪色等のイメージカラーに対応した名前だったりするのも良くあるパターンである。
多くの場合、名前を覚えやすくするために文字数が被らないようになっていたり、名前の響きが違っていたりする。また発音しづらかったり、韻を踏んでいたりすることもある。
キャラクターの図像は、作者や依頼者等の嗜好, 他の設定との整合性のほか、モチーフとするモノ、あるいはそれらからの連想や他のモノとの組み合わせ, パーツの変更等によって着想され、その他シルエットの見やすさや、作品のリアリティに合った彩度(ヴァルール)の色遣い、テーマに沿った画風等の制約に合わせて描かれる。
また世界観や所属するグループ等に合わせて、パーツごとの粗密のバランスや使用される色(メインカラー, サブカラー, アクセントカラー, セパレーションカラー等)や色の配置が決定される。これらを満たすように衣服や装備品, ポーズまでが決められ、描写される。
図像は世界観や人物の性格・生い立ちや経済状況等を端的に説明する記号の役割をすることもあれば、能力の一部と結びついていたり、何らかの機能があったりして、特殊能力のメカニズムに納得感を与えていることもある。
登場人物には特徴的な口癖や二人称等が設定されていることがある。これは誰が喋っているか分かりやすくする効果がある。
キャラクターは他のキャラクターと区別される必要がある。時に入念な取材のもと、そのキャラクターの職業や年代等を反映した専門用語等が台詞に使われるのはこの為である。
登場人物同士には仲のいい相手や憎んでいる相手、コンプレックスを抱える相手や血のつながった相手、同じコミュニティに属している相手などが存在し、プロットのある時点で直接描写されることがなくても、作者は主人公のいる場所とは異なるそれらの人物のその時の行動を時系列に組み込んでいることがある。
また共通点を持つ登場人物同士でも何らかの相違点があるために異なる末路を辿り、その様子が様々な方法で対比されることもある。
二次創作の場合、登場人物同士の関係性は原作から「読み替え」が行われる場合がある。というのは、読者は基本的に自分たちの文化を参照して物語から想像を広げるのであり、普段から接している文化が異なると、同じ台詞や展開でも異なる意味で受け取ることがある。顕著なのがBL等のカップリングものや夢小説であり、これらの作者は普段そうしたコミュニティで一般的に読まれている二次創作や一次創作の恋愛作品の文脈によって原作を解釈し、また二次創作作品のリアリティを補強する材料としてその解釈を利用する。
二次創作においては、このほか、人物や関係性, ストーリー等に対しテーマソングとして既存の曲があてがわれることも多い。その意図は様々で、テーマソングが付けられる統一された理由はないものと考えられる。
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