真夏のオリオンとは、2009年6月13日に公開された日本の映画である。
時は2009年。来春から教師になる倉本いずみは子供たちから「地震や洪水で人が死ぬのに、何故人間同士で殺し合わなければならないのか」という鋭い質問を受け、答える事が出来なかった。そこへアメリカから一通の手紙が届く。そこには1枚の楽譜――祖父・倉本孝行への想いをイタリア語で書いた「真夏のオリオン」という曲――が添えられていた。祖父は戦時中潜水艦乗りであったが、孫娘のいずみには何も語らずに逝ってしまった。何故楽譜が敵国であるアメリカに保管されていたのか。その理由を求めて、祖父が艦長を務めていた伊77潜の元乗組員・鈴木勝海のもとを訪れた。降りしきる雨の中で語られる伊77と米国駆逐艦パーシバルとの死闘、そしてアメリカの手に楽譜が渡った理由…。
1945年8月上旬、大日本帝國海軍はグアムから沖縄に向かうアメリカ船団を撃沈するため、道中の航路に5隻の潜水艦による散開線を敷いた。倉本艦長が指揮する伊77は遅れて最西端の哨区へ到達。第一船団である敵タンカー2隻を仕留めて上々の滑り出しを見せた。しかし僚艦伊81の位置情報打電を最後に4隻の潜水艦は全て消息を絶つ。生き残った最後の艦となった伊77は、潜水艦を葬った下手人米駆逐艦パーシバルに一騎打ちを挑む。
池上司の小説『雷撃深度一九・五』を原作に、『終戦のローレライ』や『亡国のイージス』の著者・福井晴敏が映画用の脚色を加えた戦争映画。
伊77は回天母艦であるが、ありがちな特攻や戦争の悲哀を描いた内容ではなく、ベテラン同士による心理戦や裏の読み合いに重きを置いたバトル物。回天も人間魚雷ではなく奇策の道具に使用されている。製作にあたって呂50潜の元艦長や伊58潜の元乗組員に協力してもらいリアリティを演出。基本的に艦はCGで描かれているものの一部シーンはミニチュアを使用。
原作小説は著者の池上司が不採用になった戦争映画の企画書をもとに書き下ろしたデビュー作(1996年刊)で、伊58潜による米重巡インディアナポリス撃沈を描いた戦争アクション小説。ノンフィクションではなくいろいろと創作を交えており、原作でも登場する伊58乗員は架空の人物である。というわけで一度はポシャった企画が小説化を経て十数年越しに映画化されたのが本作。ただし映画では伊77を始め、登場する艦船は全て架空のものに置き換えられている。
よく突っ込まれる点として、(出港直後とはいえ)乗組員の服が綺麗すぎる、蒸し風呂状態なのに何故か着込んでいる(史実ではふんどし一丁になるのも珍しくない)ところが挙げられるが、豊富な知識によって練り上げられた作品のため描写や時代考証は丁寧。作中で使用された「艦内のごみを排出して撃沈されたように見せかける」策は伊25潜や伊165潜でも使われたポピュラーな戦術である。
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最終更新:2024/03/29(金) 03:00
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