神保長住とは (ジンボウナガスミとは) [単語記事]

神保長住（じんぼう・ながすみ　生没年不詳）とは、戦国時代の越中の武将である。富山城の神保長職の長男であり、人生で二度も越中を追放された不憫な武将でもある。

概要

その後織田信長に拾われ、信長による越中侵攻の旗頭に据えられる。半ば傀儡ではあったが織田軍の活躍で越中へと帰還した。

その後小島職鎮らの急襲を受け幽閉、失脚。再び越中を追放された。

神保長住は富山城の神保長職の長男として生まれた。詳しい前半生は不明だが、父の長職に従って椎名康胤・上杉謙信と戦ったと考えられている。

永禄五年、神保長職は椎名康胤を神通川沿いの戦いで撃破し居城の松倉城(現魚津市)まで攻め込んだが、椎名救援のために越中に攻め込んだ上杉謙信によって逆に滅亡の危機に陥ってしまった。

能登畠山家に仲介を頼むことで家中の滅亡は逃れたものの、以後の神保家では親上杉派と反上杉派が対立して勢力を衰退させていってしまう。神保長住は神保家の外交を担当していた寺嶋職定とともに従来の一向宗・武田家との同盟継続を主張したが、親上杉路線を主張する小島職鎮と対立し神保家中は二分してしまう。

家臣によって追放された畠山義続・義綱を救援するために能登に進みたい上杉謙信は越中の情勢安定のために神保家の内紛に介入し、神保長住は越中を追放されてしまった。

越中を離れた後の長住の行動の詳細は不明だが、浪人として京都に滞在していた所を織田信長に拾われてこれに仕えるようになった。

天正六年(1578年)上杉謙信の死を聞きつけた織田信長は越中侵攻の旗頭として神保長住を起用、本隊として越前・加賀を通って越中に侵攻する柴田勝家・佐々成政らとは別に飛騨から北上するルートで越中に侵攻した。

神保宗家の長住の越中帰還は上杉支配に甘んじていた越中の諸将に衝撃を与え、斉藤信和・二宮長恒といった国人はいち早く長住に合流し上杉に反旗を翻した。織田信長は家臣の佐々長穐を長住の介添えとし、姉小路頼綱に長住を支援するよう要請していた。これらの助けを得て長住は元神保家の城だった増山城(現砺波市)を攻略し越中における織田家の勢力を拡大させていった。

当時の上杉家の越中方面軍司令官は河田長親であり、このような長住の動きに対して同盟関係にある一向宗に反織田の一揆を起こさせることで対抗しようとした。しかし、これに対して織田信長は新に斎藤利治を援軍として送り込み、利治が月岡野の戦いで河田長親らの軍勢を破ったことで越中の情勢は一気に織田方に傾いた。

月岡野の戦いとほぼ同時期に勃発した荒木村重の反乱と上杉家の御館の乱によって一時戦線は膠着したが、天正八年には本願寺顕如の石山退去によって一向宗の勢力は弱体化し越中における織田家の勢力はいよいよ盤石なものとなっていった。

この頃織田信長は佐々成政を越中方面軍指令に起用し、天正九年には正式に佐々成政を越中に分封した。これによって神保長住も佐々成政の指揮下で戦うことになり、天正九年二月には成政に従って信長の馬揃えに参加している。

しかし、成政・長住が越中を空けている間に上杉景勝は態勢を整えて越中に侵攻し、一部の越中の武将は再び上杉方についた。この報を聞いた佐々成政は柴田勝家・前田利家の援軍を得て越中にもどって上杉軍を攻撃し、上杉景勝は越後に退却した。織田軍は上杉に寝返ったと見られる寺崎盛永を切腹させ、魚津城を除く旧上杉領の大半を制圧して越中の大半を抑えつつあった。

だが、未だ反織田の抗戦を続ける瑞泉寺ら一向宗と連動する形で旧神保家の親上杉派家臣小島職鎮が富山城に奇襲をかけ、神保長住を幽閉して反織田行動をとるという事件が起こる。佐々成政らによって富山城はすぐに奪還されたものの、この失態によって信長の怒りを買った長住は織田家を追放され再び浪人の身分となってしまう。