神速(しんそく)とは、人間業ではない速さのこと、またはそのさまである。
「神速」という言葉は相当昔から使われていたようで、『三国志』郭嘉伝に使われた例がある。郭嘉が使い始めたかはともかく、たぶん一番古い史料かと思われる。
三国志の大決戦のひとつに曹操と袁紹による「官渡の戦い」がある。この戦いでは曹操軍が勝利したが、敗れた袁紹軍はなおも強大な勢力を誇っていた。この袁紹勢力の追撃と根絶に命を燃やした人が郭嘉であり、その戦の中で曹操に進言した言葉が「兵貴神速(兵は神速を貴ぶ)」であった。
この言の意味するところは、長期戦を避け、電撃戦・短期決戦をするべしというものであった。長期戦を想定して備えを重くしようとすると、時間をかけただけ相手もその間にガッチリ構えてしまうという主張であった。実際にこの提言は功を奏し、曹操軍は相手の虚を突く電撃戦で敵を大いに破り、結果袁紹の一族はすべて滅ぼされた。
「兵は神速を貴ぶ」の元ネタは、兵法書の古典『孫子』にある「故兵聞拙速、未睹巧之久也(ゆえに兵は拙速を聞く、未だ巧なるの久しきをみざるなり)」の一節と思われる。戦争を行うと資材や人材を多く使い、長引けばそれだけ多く流出する、と長期戦をすることに益がないことを説く流れに登場する言葉であり、「つたない迅速の用兵は聞くが、うまい長期戦の用兵というものは聞いたことがない」という意味である。
この言葉の先には「夫兵久而國利者、未之有也(それ兵久しくして國に利するは、未だこれ有らざるなり)」と続く。これは戦術的なことではなく、長期戦が国家戦略の観点で不利益にしかならないということを説いている。戦は短く終わらせるべき、というが孫子の主張である。「兵は神速を貴ぶ」と言った郭嘉の提言もまさにこれであった。
しかし、時代が下るとこの文章が曲解されるようになり、「未睹巧之久」は「未睹巧遅」に、「兵聞拙速」は「兵貴拙速」になり、「兵は拙速を貴ぶ」「巧遅は拙速に如かず」などの言葉に変化していった。もしかすると、郭嘉の時代にすでに変化していたかもしれない。この2語がしばしば「孫子由来」と紹介されるが、原典から変化して生まれた言葉なので厳密には正しくない。
「巧遅は拙速に如かず」はトヨタ自動車がカイゼンのテーマに置いたこともあって、しばしばビジネス指南書やサイトなどでも注目された。ただ、意味の受け取り方は人それぞれのようで、「速ければ何でもいいんだよオラァ!」なんて原義からかけ離れた意味で使ってるところもちらほらある。
ニコニコ動画においては、三国志大戦関連の動画に「神速」タグが使われていることが多い。これには郭嘉もニッコリ。
掲示板
1 ななしのよっしん
2023/07/28(金) 12:32:46 ID: 2LFK/0ju+8
>「速ければ何でもいいんだよオラァ!」なんて原義からかけ離れた意味
要するに「不必要な」時間を掛けるな、ということ。
他に目的達成方法がない場合の、止むを得ない長期戦まで否定しているわけではない。(好ましくないのは事実なので他の手段は模索されなければならないが)
ましてや、事前準備を軽視していいなどとはされていない。(拙速とは準備不足という意味ではない)
あと一手で相手は詰むという時に、余計な手数を掛けて遊んではいけないということだ。
「犠牲で時間を買う」わけなので、その兼ね合いはとても難しいわけだが。
2 ななしのよっしん
2023/10/15(日) 11:43:17 ID: JGgzaxIvAi
某所で「Godspeed」って言葉聞いて何が速いのかと思ったけど何も速さ関係なかった
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最終更新:2025/04/27(日) 22:00
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