紙幣とは、紙でできた通貨のことである。「札(さつ)」「お札(おさつ)」ともいう。
日本に出回っている紙幣の正式名称は日本銀行券で、「日本銀行の発行する銀行券」という意味である。
一般的に、紙幣という言葉は、紙でできた通貨すべてを示す(辞書1、辞書2)。
日本の法律では、紙幣というのは政府が発行する政府紙幣のみを示し、銀行が発行する銀行券と区別している。刑法第2編第16章(通貨偽造の罪)では、「紙幣または銀行券」としっかり区別している。通貨法第2条第3項や日銀法第46条で、日本に流通する紙でできた通貨は日本銀行の発行する銀行券(日本銀行券)と表現されている。
紙幣は、硬貨と比べて軽くて運搬しやすく、財布やスーツケースなど重ねた状態での収納に適する。また、面積も硬貨より大きいため、目立ちやすく紛失しにくい。ただし、水に弱く、破損もしやすい上、風の強いところでは紛失のリスクが高い。
紙幣には、基本的に、その国に関係する偉人が描かれることが多い。例えばアメリカの1ドル札には初代大統領のジョージ・ワシントンが描かれている(画像)。世界中の紙幣の中の7割が、人物の表情を紙幣に描き入れている。その理由の1つは、人間の顔に対する識別能力の高さにあるとされている。人間は、人の顔つきの微妙な違いや、わずかな表情の変化もしっかりと認識することができるので、紙幣に人物の表情を入れると偽札防止の役に立つ、という[1]。
なお、ブラジル・レアル(画像)のアマゾン流域野生動物や、ジンバブエ・ドル(画像)のバランシングロック(画像)など、国によってはその国のシンボルである動物・物・風景がメインで描かれていることもある。国立印刷局がこの資料でまとめている。
統合通貨ユーロには、橋を描いたデザインが多い(資料)。ユーロ加盟国が多いという現実と、ある国の英雄は他の国にとっての宿敵であることが多いという現実に従い、人物画を採用することを避けることにした。国と国との架け橋になるべき、という願いを込めて、橋をデザインした[2]。
世界で最初の紙幣は宋代の中国で流通した「交子(こうし)」(画像)である。もともとは重かった鉄銭の代わりとして一部地域の民間で流通し始めたものだったが、後に官製で作られるようになった。
紙幣のコピーは、偽造防止のため、各国の法律で禁止されていることが多い。偽造対策として、多くの国の紙幣では紙の厚さを変えて「透かし」を入れていることが多い。ほかにもホログラムや紫外線インク、ユーリオン[3]などがある。隠し文字も使われることがあり、日本の紙幣の場合はよく見ると「NIPPON GINKO」や「ニ」「ホ」「ン」などが細かい字で書かれている(動画)。
紙幣を印刷物に掲載するとき、紙幣を示す印刷部分に「見本」と書き入れたり、赤い斜線を二本入れたりすることが多い(画像)。偽造を忌避する世の中の風潮を維持するため、財務省がそのように指導している[4]。
紙幣を破いてしまった場合、日本の銀行では3分の2以上が残っている場合は全額、5分の2~3分の2が残っている場合は半額が交換できる。
ちなみに自動販売機や券売機などの機械に紙幣を入れる際、きれいにして入れないと戻ってきてしまう。また、機械によっては大量の紙幣を出す際に1枚ずつしか出さず、時間がかかってしまうこともある。
たびたびハイパーインフレの象徴として山積みの紙幣が写真に撮られることがある。有名な例はドイツ・ヴァイマル共和国のマルク(画像)、ジンバブエ・ドル(画像)、ベネズエラのボリバル・ソベラノ(画像)など。子どもが紙幣をおもちゃのように扱っている光景も見られる。
マンガでは、紙幣を乱暴に扱う表現を描写することで、読者のもったいない精神を揺さぶり、読者を作品世界に引き込むという技法を取ることがある。北斗の拳では、ヒャッハーの歓声を上げるモヒカンたちが「ケツをふく紙にもなりゃしねぇ」と言い放って札束を捨てているし、どうだ明るくなったろう。の風刺画では、紙幣に火を付けて暗くて靴が見えない時の明かり代わりにしている(画像)。
鎌倉時代には銅でできた宋銭が全国的に流通するようになった。しだいに、商人たちは大量の宋銭を運搬するのを嫌がるようになり、割符(さいふ)というものを発行するようになった。「これを○月以降に持参していただければ、銅銭十貫文を約束通りに支払います」などと書いてあり、まるっきりの手形だった。これは、一種の紙幣だったとされる。こうした割符は、江戸時代まで商人たちの間で使われ続けた。
江戸時代において、地方の藩や旗本領では、藩札や旗本札の形で紙幣を発行していた。しかし、中央政府は、江戸時代の終わりまで一貫して紙幣を発行せず、金・銀・銅といった金属でできた貨幣のみを発行していた。
日本の中央政府が発行した最初の紙幣は明治政府の太政官札(だじょうかんさつ)である。シンプルに文字と枠で構成されていた。
その後民部省札などの紙幣が官民問わず多種類発行され混乱を極めたが、1872年に明治通宝がドイツの印刷所で刷られ、発行される。明治通宝には鳳凰と龍がデザインされていた。ただし明治通宝は損傷しやすく、偽造も容易であったため、イタリア人のお雇い外国人、エドアルド・キヨッソーネにデザインしてもらった日本初の肖像画入りの紙幣である改造紙幣が1881年に作られた。このときは1円・5円・10円に神功皇后がデザインされていたが、3世紀ごろの伝説上の人物に当然肖像が残っているはずもなく、キヨッソーネが想像で描いてしまったためか、顔立ちが割と外国人である。
1873年に政府の指示で国立銀行によって発行された紙幣。大日本帝国政府が発行した上記の政府紙幣たちとは異なる系譜にある。初期の兌換紙幣(金塊と交換可能)と後期の不換紙幣(金塊と交換不可能)がある。
兌換紙幣には以下のものが描かれていた。いずれも肖像画ではなく、風景画である。
不換紙幣には以下のものが描かれていた。
1882年の日本銀行の設立に伴い、上記の政府紙幣と国立銀行紙幣に代わるものとして、日本銀行券が発行される。1886年の最初の紙幣は大黒札と呼ばれる。打ち出の小槌をふるって財物をもたらす大黒天がデザインされていたためである。しかし丈夫にするためこんにゃく粉を混ぜてしまった結果、虫やネズミに食べられてしまう被害が多かったため、1890~91年には「改造券」が発行された。
1890~91年の改造券に描かれている人物は、以下の通りとなっている。基本的には、この4人が描かれた紙幣が、1945年の第二次世界大戦終戦まで使われ続けた。
1899~1900年発行の紙幣には以下のものが描かれている。また、これより後の紙幣には「甲」「乙」「丙」…の記号が振られている。
1910年には、乙5円(菅原道真と北野神社)が発行された。
1915~1917年発行の紙幣には以下のものが描かれている。
1927年発行の乙200円券には、表に何も人物が描かれておらず、しかも裏が真っ白になっていた。これは昭和金融恐慌(東京渡辺銀行の取り付け騒ぎ)を収めるため、現金を大量に素早く発行したのが原因である。
1930~1931年発行の紙幣には以下のものが描かれている。このときから、聖徳太子が使われるようになっていく。
1942年以降の一部の紙幣からは「い」「ろ」の記号がつけられている。以前登場していた武内宿禰、和気清麻呂、藤原鎌足、菅原道真、聖徳太子の5人が使われていたが、それに加えて、い5銭券には楠木正成、い10銭券には八紘一宇塔が描かれた。
終戦直後の1945年8月には、甲1000円券が発行され、日本武尊・建部神社が描かれた。この時期はハイパーインフレーションが発生しており、大混乱となっていて、甲1000円券もすぐに発行されなくなった。
戦後の紙幣には「A」「B」「C」…の記号が振られるようになる。
戦後すぐに発行されたA号券には、以下のものが描かれた。
1950年代に発行されたB号券には、政治家たちが描かれている。
1950年代後半~1960年代発行のC号券は以下の政治家たちが描かれた。この代になってくると、おばあちゃんの家などから出てくることがある。
1984年にはD号券が発行。これ以降、政治家が紙幣から外され、文化人が紙幣に描かれるようになった。また、これ以降「諭吉」がお金や札束の隠喩表現の一つになった。デザインは以下の通りとなる。時々押し入れやタンスの奥から出てくることもあるかもしれない。
2000年には首里城守礼門や紫式部や源氏物語絵巻が描かれた2千円札が発行された。そんなものもあったなあ…懐かしい。と思うかもしれないが、首里城がある沖縄では割と使われており、ATMのタッチパネルに2千円札優先ボタンがある(画像)。
2004年にE号券が発行。これ以降、科学者も紙幣に描かれるようになった。
2024年にはF号券が発行。E号券とは1000円が科学者、5000円が女性という共通点がある。
掲示板
51 ななしのよっしん
2024/03/05(火) 13:04:59 ID: LX5LucWpkg
渋沢栄一は当時の官の席を蹴ってあえて何も無い民に下りそこで数々の事業を興して近代的な金融から事業まで幅広く築いたからわかるが他はどうなんと思う
52 ななしのよっしん
2024/04/02(火) 15:22:55 ID: OD3lSBa3ru
他はともかく北里柴三郎を知らないのは義務教育の敗北感がある
というか無知も弁えずよく一丁前にイチャモンとか付けれるよな
53 ななしのよっしん
2024/06/02(日) 13:39:28 ID: +ZPws5ne+W
紙幣と電子通貨、暗号通貨
紙幣は銀行券と民間発行の引換券
電子通貨も同様に国運営のものから民間のものまで
全てを電子通貨、暗号通貨にする場合は国がそれをやる可能性があり、その場合民間がひっ迫する
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最終更新:2024/10/11(金) 19:00
最終更新:2024/10/11(金) 19:00
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