終わらざりし物語とは、J・R・R・トールキンの残した遺稿集を息子のクリストファ・トールキン氏が纏め、出版した作品である。原題は「Unfinished Tales of Númenor and Middle-earth」で、よくUTと略される。
概要
クリストファ氏は父の没後、その遺稿を編集・整理することで『シルマリルの物語』を出版した。シルマリルの物語が好評を博したため、クリストファ氏は父の遺稿集の中でも比較的纏まった内容の物・読者の注意を引きそうな話を集めて出版した。これが『終わらざりし物語』である。
比較的纏まっているとはいえ、互いに矛盾する幾つかの草稿が同時に載せられていることもあり、それに対するクリストファ氏による詳細な註も見所である。
もちろんシルマリルの物語を予め読んでいることが求められる作品であるが、後述するように後半には指輪物語関連の逸話が集中するため、下巻の面白そうな箇所だけ読んでみるのも手である。
ちなみに日本語訳はファンの有志(訳者「山下なるや」は総称)によって行われたもので、基本的に瀬田貞二氏と田中明子氏の訳による『指輪物語』『シルマリルの物語』に準じたものとなっている。2022年の文庫化にあたっては、2019年の電子版『指輪物語』での翻訳改訂に準じた固有名詞改訳も行われている。
内容
第一部(第一紀)
- I トゥオルおよびかれがゴンドリンを訪れたこと
- 表題の通り、トゥオルの生い立ちからゴンドリンまでの旅を描く。かなり唐突に終わるので注意。
- II ナルン・イ・ヒーン・フーリン フーリンの子らの物語
- 本書の中でも最も長い物語。殆ど一つの小説として纏まっているが、Ⅰ,と同じく途中で原稿が終わる部分があるので、『シルマリルの物語』を片手に読むのがオススメ。
第二部(第二紀)
- I ヌーメノールの島について
- ヌーメノールの島についての解説。
- II アルダリオンとエレンディス 船乗りの妻
- トールキン教授にしては珍しい、シビアな夫婦の物語。
- III エルロスの家系 ヌーメノールの諸王 アルメネロスの都の創建から没落まで
- ヌーメノールについての概史。
- IV ガラドリエルとケレボルンの歴史 およびローリエンの王アムロスのこと
- ある意味で本書を代表する章。同じ筋書きの、互いに矛盾する多くのバージョンが載せられており、その一つ一つにクリストファ氏による詳細な註がついている。
第三部(第三紀)
- I あやめ野の凶事
- 映画の冒頭でも少し映った、指輪の消息が失われる切っ掛けとなった事件についての物語。最後には少しだけ指輪の仲間が登場する。
- II キリオンとエオル、およびゴンドールとローハンの友情
- 初めてローハンがゴンドールの救援に訪れた時の物語。
- III エレボールへの遠征
- いわば『ホビットの冒険』を裏側からみた物語。如何にしてドワーフとホビットの旅が計画されたか、ガンダルフの視点によって語られる。
- IV 指輪狩り
- 『指輪物語 旅の仲間 上』を裏側からみた物語。フロド達の追跡が黒の乗手の視点から語られる。
- V アイゼンの浅瀬の合戦
- 『指輪物語 二つの塔 上』を裏側からみた物語。映画『二つの塔』SEE版でまさかの登場を果たしたセオドレド王子(セーオドレド王子)の奮戦が語られる。
第四部
- I ドルーアダン
- 映画ではハブられた登場しなかった種族ドルーアダンについての小話。
- II イスタリ
- ガンダルフら魔法使いの起源が描かれ、何故あのメンバーが選ばれたかが語られる。
- III パランティーア (パランティール)
- 『指輪物語』でうっかりピピンがのぞき込んだパランティーア(パランティール)についての解説。
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関連項目