翔べイカロスの翼とは (トベイカロスノツバサとは) [単語記事]

翔べイカロスの翼とは、平林敏彦(草鹿宏名義)の小説、及びその映像化作品群のことである。

本項目では、主に1980年に公開された映画版について記載する。

笑ってよ～概要のために～

しかし、それ以上に有名なのが主役を演じたのが当時飛ぶ取り落とす勢いの人気歌手だったさだまさしという点であり、主題歌『道化師のソネット』は本作のために書き下ろされた楽曲である(最近では郵便局のCMでかかってたアレである)。ダウンタウンの松本人志はこの曲を「芸人の根本」と大絶賛している。

さだの映画初主演作であり、当時のMCで「これからは俳優さだまさしと呼んでください」と語るほど映画というものに大きく魅了されていた。
インディーズ映画として製作されたものの、原田美枝子、ハナ肇、三木のり平(本人役)、ヨネヤマ・ママコ(本人役)といった比較的豪華な出演者で脇を固めており、また大味なさだの演技が却って映画の題材に合っていたこともあって内容的にも絶賛されていたが、独立系公開ということもあってヒットには至らず、その後VHS,ベータマックス等でビデオ化されることもDVD化されることもなく、長年著作権が消えるかネガが廃棄されるのを待つばかりという状態だった。そして、再上映会をしようにも、フィルムの状態が劣悪であり、貸し出せるフィルムがオリジナルマスターの35mm版を除くと16mmのコピー版くらいしか残っていなかったというのもまた大きな問題で、回数も非常に限られていた(後述の2000年の再上映は実に20年ぶりの一般公開だった)。

しかしながら、さだの音楽活動40周年と3000回以上にもわたるコンサート活動ということで彼の活動が再評価されはじめたこともあって、ユーキャンから2012年に入ってDVDが発売された。VHS化されていない上に肖像権の関係でほぼソフト化不可能とまで言われていただけにファンは歓喜した。2014年にはCSではあるが、日本映画専門チャンネルで放映され、これがテレビ初放送になった。

ストーリーはほぼノンフィクションで、実在のキグレサーカスに所属していた伝説のピエロ栗原徹(映画では「栗山」姓になっている)こと「ピエロのクリちゃん」(決していかがわしい意味じゃないよ)が写真家を目指しながらもうまくいかず、たまたま写真の題材に選んだキグレサーカスでのショーに魅せられサーカスに入門、その中で団員の一人に恋をし、やがてショーのスターとして花開いていきながらも、難易度の高い技に挑戦し若くして天に召されるまでを描いている。

実在の栗原氏もこの映画と同じように当時は幕間の繋ぎ役でしかなかったピエロを綱渡りや曲芸といった客を湧かせる様々な演出でコミカルなだけではない、まったく新しいピエロ像を創造したことで日本のサーカス界を画期的に変貌させた功労者と言われる人物で、その死を惜しまれている。
なお、映画でクリちゃんは両親と和解したことになっているが、史実は死ぬまで和解には至らず、ピエロになったことを決して許していなかった。そしてソフトにもなっていなかったため、20年間映画を観ることも無かったことを明かしている。しかし、2000年 5月5日に行われた東京都内での再上映会において初めてこの映画を鑑賞し、『あのような生き方をしていたなんて知らなかった』『徹に申し訳ない気持ちです』と20年ぶりに親子のわだかまりを解消することができたようだ。

ちなみに、この映画の原作となった小説の原題は『翔べイカロスの翼～青春のロマンをピエロに賭けた若者の愛と死～』である(もう、見た瞬間にラストがわかってしまいますね。何でこんなネタバレタイトルにしたんでしょうかね?)

この後、さだは本格的に映画に目覚めたらしく、次回作では自ら監督を務め、ドキュメンタリー超大作『長江』を完成させて大ヒットさせた。が、クオリティアップのためにテレビ用VTRから35mmフィルムへの撮影変更や大規模ロケに伴う大幅なスケジュール超過によって結果的に大赤字を計上して28億円(金利込みで35億円以上)もの負債を抱え込む羽目になり、これが結果的に借金返済のためコンサート活動を積極的に行わなければならなくなったことで、4000回を超える大記録を生む原動力となった。
監督作でとんでもない大損をしたことからか、以降94年のアニメ作品まで監督は行っておらず、現在も『精霊流し』『解夏』『眉山 -びざん-』といった自身が原作に関わった作品でも映画版は別の監督を起用している。