耳が腐るとは (ミミガクサルとは) [単語記事]

耳が腐るとは、下手な歌により不快感を覚えるが、脳が破壊されるまでには至らない状態のこと。

また下手な歌をからかう時の言葉としても使用される。

説明

ここで説明する「耳が腐る」とは「耳が腐るほど～」の比喩表現とは異なるもので、単独で使用するもの。「耳が腐る」は「糠味噌が腐る」という、似たような意味を持ち、共通する語句を持つことわざから派生して生まれた言葉であるとされているため。ただし一般的に使われているものではない。

糠味噌（ぬかみそ）が腐（くさ）る　（三省堂 Web Dictionary より）

聞くに耐えないほど歌が下手だということをからかって、また自ら謙遜(けんそん)して言う時の言葉。

例：「私は歌はほんとに駄目なんです。糠味噌が腐るといけませんからやめておきます」

糠味噌が腐るはやや古風な表現であり、およそ現代日本で頻繁に用いられる慣用句ではない。そこで「目が腐る」「脳みそが腐る」などの現代表現に合わせた形で登場したのが、この耳が腐るという表現であると思われる。糠味噌が腐るは謙遜する場合に用いられる場合が多いが、耳が腐るはからかいに用いられる場合が多い傾向にある。

歴史

もともと日本では1980年代からカラオケボックスが発達し、90年代はカラオケで歌う歌を覚えるためにCDを買うという現象まで引き起こした。しかしこうして素人の歌を聞かせあう文化があったとしても、耳が腐る（糠味噌が腐る）という上品ではない慣用句は、少なくともカラオケを共にするような関係の間で交わすような言葉ではないし、時勢にも合わないため、そこまで使用はされていなかった。

しかし毒舌家の中には耳が腐るを使用する人間もいたことは確かで、意味合いとしては理解しやすい言葉ではあり、曖昧なニュアンスながらある程度は知られていた。

インターネットにおいて耳が腐るという表現が頻繁に交わされるようになったのは、2005年の第1次歌ってみたブームに起因するという説がある。当時、ネットにおける個人の歌の披露はDTMを嗜む人や同人歌手、それに一部のカラオケ趣味の人に限定されるマイナーな趣味であった。しかし2ちゃんねるのニュース速報（VIP）板において、下手な歌を披露していこうという変態的な趣味が2005年の初頭辺りから広まった。またこのころ、PeerCastやSHOUT castなどを利用した個人によるメディアデータ発信が一般化し、同時にゲーム実況や垂れ流し、個人ラジオ配信などによってごく普通の人々が声を発信することが広く定着した。

この流れの中で「下手の横好き」「キモイのが良い」などという、ある種のポジティブシンキングが異常発達していった結果、耳が腐るという揶揄表現が用いられるようになったと考えられている。例の1つとして、VIPで2005年春から年末までに賑わいを見せた「ハッピー☆マテリアル VIPPER Ver.を作るスレ」においては、うｐされた大量の下手な歌に対して、耳が腐るというレスが多くのIDから付けられている事実が確認できる。またこれは一過性のものではなく、長期間に渡って使用された。

この時点では冒頭で説明したような意味合いを持ちながら、また毒の強い表現ながらも「ｗ」の起源のように、馴れ合いの上での曖昧な社交辞令の言葉として使われていたと推測される。

参考：Google Trendsにおける関連語句検索数の推移
- "音痴"→2005年末からグラフが生成される
- "これはひどい"→2006年からグラフが生成される

現在

現在、冒頭で述べたとおり耳が腐るという慣用句は一般的には使用されていない。ニコニコ動画においてタグ検索を行っても11件しか表示されず、ググっても約2万2000件しか表示されない上、このページがトップに表示される状態にある。さらに11件のタグのうち過半を越える6件は歌い手 utaotomeの歌ってみた動画であり、一般的ではないことがより強調されている。