胃潰瘍 単語


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胃潰瘍(いかいよう)とは、胃の粘膜が抉れてしまう病気のことである。

ここでは似たような病気である胃炎(いえん)と十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)についても解説する。

概要

胃に潰瘍ができて、腹痛(胃痛)などの症状があらわれる病気である。潰瘍とは粘膜が抉れて(えぐれて)しまうことであり、糜爛(びらん。粘膜が浅く爛れてしまうこと。)よりもさらに悪い状態である。

胃潰瘍よりやや軽い病気として胃炎があり、こちらは胃に糜爛ができるが、胃潰瘍ではより深く粘膜が抉れるため「胃潰瘍は胃炎が悪化したものである」とも言える。

重症化すると胃から大量に出血したり、胃の壁に穴があいて(穿孔)生命に関わることもある危険な病気である。身近な病気だが、決して侮ってはならないのである。

ちなみに十二指腸(小腸の始まり)に炎症や潰瘍ができる病気のことを十二指腸潰瘍という。胃潰瘍と十二指腸潰瘍をまとめて消化性潰瘍(しょうかせいかいよう)と呼ぶことも多い。

原因

現在(2025年時点)ではヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)という細菌の胃への感染に関連して起こることが多いとされている。[1]

ただし、感染症ではない(ピロリ菌と関係ない)胃潰瘍もあり、アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の副作用として胃潰瘍が起こることもある。また、その他の薬剤、タバコやお酒、暴飲暴食、ストレスなどがきっかけとなって胃潰瘍が起こることもあるため、ピロリ菌を体内に持っていない人でも決して油断できない病気である。

胃は強力な消化液である胃液(胃酸)を分泌するが、通常は胃のバリア機能が正常にはたらいているため胃酸が自分自身(胃)を溶かしてしまうことはない。しかしピロリ菌やNSAIDsなどの影響で胃のバリア機能が弱まってしまうと胃炎や胃潰瘍になってしまうことがある。

症状

胃潰瘍で最も多い症状は腹痛(胃痛)である。主に鳩尾(みぞおち)周辺が痛みを感じることが多く、食後に痛くなるのが胃潰瘍の腹痛の特徴である。

※ちなみに十二指腸潰瘍では逆に空腹時に腹痛が起こりやすい。

ただし胃潰瘍の腹痛は必ずしも強いとは限らず、だいぶ進行してからじゃないと強い痛みを感じないというケースもあるので注意が必要である。特にNSAIDsが原因の胃潰瘍では腹痛を感じないことも多く、出血や穿孔などの危険な合併症を起こして初めて胃潰瘍に気付く(手遅れになりやすい)ことも少なくないので注意が必要である。

また、胃酸が多く出過ぎることによって吐き気や嘔吐、食欲不振、体重減少を伴うこともある。逆流性食道炎を併発することもある。

合併症

進行した胃潰瘍では以下のような合併症を起こすことがある。特に出血性胃潰瘍、胃穿孔、胃がん(胃癌)は生命に関わる危険な状態である。

出血性胃潰瘍(胃出血)

胃潰瘍がさらに深くなると胃の血管が傷ついて出血し、吐血したり血便が出たりすること(下血)もある。胃潰瘍の血便の色は特徴的であり、血液が胃酸によって酸化されるため真っ黒い血便になる(タール便、コールタールのような血便とも言う)。

※これに対し、潰瘍性大腸炎や虚血性大腸炎、細菌性大腸炎(腸管出血性大腸菌O157、赤痢菌など)などで大腸から出血した場合は真っ赤な血便が出る。

特に大量に出血した場合は非常に危険であり、血圧低下やショックを起こして死亡することもある。多量に吐血したり、真っ黒いタール様の便が出て冷や汗が出たり意識が朦朧とするなどの不調を伴っている場合は、(救急車を呼んででも)大至急病院に行く必要がある。

胃穿孔

胃潰瘍がさらに深くなると胃の壁に完全な穴があくことがあり、内容物が漏れ出して急性腹膜炎という非常に危険な病気を起こす。急性腹膜炎になると非常に激しい腹痛が突然起こり、高熱が出たりショックを起こしたりする。大至急治療しなければ死亡することもありうる危険な状態である。

その他の合併症

など。

診断

内視鏡検査やMRI検査などが行われる。鑑別が必要な病気としては胃癌などがある。

また、胃潰瘍になった原因(ピロリ菌、NSAIDsなど)を特定するために血液検査や尿検査、便検査なども行われる。ちなみに出血性胃潰瘍によって貧血が起こっている場合、血液検査でヘモグロビン濃度や赤血球数が著しく減っていることがわかる。

治療方法

プロトンポンプ阻害薬またはH2受容体拮抗薬などの薬物療法(内科的治療)が原則である。ピロリ菌が原因の場合は抗生物質による除菌療法が、NSAIDsが原因の場合はNSAIDsの中止も必要となる。

薬物療法が効かない場合や合併症がある場合は入院して内視鏡的止血治療や手術を検討する場合もあり、特に出血性胃潰瘍のうち重症度の高いものと胃穿孔は生命にかかわるため緊急の内視鏡的止血治療や手術が必要である。

関連静画

関連項目

脚注

  1. *ただし日本では、ピロリ菌の感染率の低下と除菌療法の普及により、胃潰瘍自体が減少するとともに、胃潰瘍患者の中でピロリ菌に感染している割合も減っていきつつある。
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