自走式対空砲(自走式高射砲)とは、対空機関砲や高射砲などを自走化できる様にした戦闘車両である。
戦場で飛行機が使用され始めると、敵航空勢力から地上部隊を傍で守る必要性が出てきたので、初めは高射砲をトラックなどに牽引させ使用した。
やがて即応性、機械化部隊への随伴性も求められた為に、既存のハーフトラックなどの荷台部に高射砲や高射機関砲を載せたり、戦車の車台を転用し対空戦車化したのが自走式対空砲の始まりである。
自走式対空砲の分類としては、読んで字のごとく対空砲を搭載した車両すべてを含めて言う。車体の多くは非装甲車両あるいは軽装甲車両だが、開発国のドクトリンの都合によっては装甲車ベース(後述)、あるいは戦車の車体を流用したものもある。この戦車の車体を流用したものは対空戦車と呼ばれるカテゴリーとなる。
航空機のジェット化(高速化)に伴い、自走式対空砲はレーダーとコンピュータによる射撃統制システムを備えたものへと進化し、中でも第四次中東戦争におけるZSU-23-4(シルカ)は対空ミサイルを避け低空進入して来るイスラエル機を23mm4門による優れた火力と命中率によって多数撃墜した事で名を馳せた。
また極々最近の事例ではイラク戦争において、旧式化したとはいえZSU-23-4などで構成された防空システムがAH-64Dなど対戦車ヘリに対して脅威となった事例もある。
これは対空ミサイル、対空砲などの複数のタイプによる防空火器によって作られた「防空コンプレックス」はなお航空機にとって脅威であることの証拠ともいえる。
とはいうものの旧西側諸国で代表的なものではドイツ軍が使っているゲパルト自走対空砲、あるいは陸上自衛隊の87式自走高射機関砲があるが、それ以外はあまり目新しいものは存在しない。アメリカ陸軍などはドクトリン上自軍の航空優勢の元で行動することを前提としているため、各種対空車両の開発にもあまり力を入れていない。1970年代後半にM247サージェント・ヨークの開発を行ったものの85年に中止。それ以後類似兵器の開発も行っていない。
イタリアなどでは艦載砲を転用した76mm速射砲を搭載するオトマティック自走対空砲などもブライベート・ベンチャーで開発されたが、こちらもコスト的要因によってか採用国なしのまま現在に至る。
というのも、もともと高速で移動する航空機に対して機関砲の命中率は驚くほど低く、命中精度を上げようとすれば、機関砲の数を増やすだけではダメで自前でレーダーなどのセンサーを搭載し、なおかつ高精度で照準・発射まで行うFCS(射撃管制システム)を搭載しないといけない。
となると必然と導入コストに跳ね返る。87式自走高射機関砲は、ベースとなった74式戦車の車体を拡張など手を加えていることもあいまって、コスト高で知られた90式戦車の倍、15億円もするのである。これではなかなか数をそろえられるようなシロモノではない。
しかも戦後に対空砲よりも長射程で敵を自動で追いかけてくれる「ミサイル」が登場。開発側はさらに追い打ちをかけられることに。
…以上のこともあいまって航空機のジェット化(による高速化)、ミサイルによる機関砲の有効射程外からのアウトレンジ攻撃、小型軽量な対空ミサイルの普及などにしたがって対空砲の戦術的な地位は相対的に低下しつつあるが、一方でロシアなどは野戦防空手段としての自走式対空砲に執心しており、対空ミサイルと機関砲の一つの車体に搭載したハイブリッド型対空砲である2K22ツングースカ、その後継である95K6パーンツィリS-1(こちらは車両というより対空兵装ユニット…既存車両へのアドオン型といってもいい)などを開発している。
これらは前述した有効射程のギャップをミサイルも搭載することでクリアにしようというコンセプトのものであり、西側でもこうしたハイブリッド式の野戦防空システムの研究開発が進められている。
高速の航空機を破壊するため、高い仰角を取ることができ、大口径で速射性に優れる機関砲は、対地攻撃における面制圧にも威力を発揮し、地上制圧に使われる事がある。
特に市街地や山地など、高低差のある地形で通常の戦車や装甲車両の砲では十分な仰角をかけられない場合など、対空砲が有効である場合がある。実際にチェチェン侵攻などでは市街地戦闘で面的制圧のために使われていたというレポートもある。当然、こうした用法は対空車両の本来の任務からは外れており、あくまでも例外的な事態に過ぎない。ロシアはこうした戦訓を取り入れ、機関砲を搭載した専用の市街地戦闘用車両であるBMP-Tを開発している。
前述の通り各種ミサイルの発展ともに自走式対空砲の相対的な重要度は低下しつつあり、冷戦終結に伴い大規模な機械化部隊同士の衝突の可能性がほぼなくなったこともあって、自走式対空砲の活躍の場は減っているが、野戦防空の最終段階としての対空砲の価値が完全に消失したわけではない(最新のミサイルを搭載したイージス艦がCIWSを手放さないのと同じである)。
しかし今後はゲパルト、あるいは87式自走高射機関砲のような高性能のレーダーとFCSを完備した専用車両だけではなく、ネットワーク化された装甲車ファミリーの一バリエーションとして存続していくことになるだろう。
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掲示板
89 ななしのよっしん
2024/11/02(土) 15:04:43 ID: Mk1v/wMMC2
西側はあまり自走式対空砲には熱心じゃない感じがする。
特にアメリカ。
ロシアや中国からは膨大に出てくるのに。
まあドイツは新しいの発表したけど高杉らしい。
イタリアのチェンタウロ・ドラコは売れるのかな…
日本は相変わらず無関心。
90 ななしのよっしん
2024/12/31(火) 15:31:56 ID: CR1PABaqhT
パーンツィリの機関砲って榴弾ナシのただの徹甲弾打ち込むだけなの?
んなもん直撃させないと意味ないし作ったやつ馬鹿じゃないの?
91 ななしのよっしん
2024/12/31(火) 15:59:20 ID: HwJ6dA3+lq
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最終更新:2025/03/30(日) 16:00
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