荒木村重とは (アラキムラシゲとは) [単語記事]

「荒木村重」（あらき・むらしげ　1535～1586）とは、織田信長の信任を受け、摂津一国という大領を任せられながら、突如信長を裏切り、滅ぼされたことで有名な武将。

信長に仕えるまで

1569年頃までは池田家を含む摂津諸大名は、三好三人衆と争っており、荒木村重もそれに従っていた。しかし1570年、主君池田勝正を追放し、弟・知正を擁立する。これにより、池田家の実権は、実質上村重が握ることになった。更に三好三人衆と手を結び、織田家と戦う道を選択、和田惟政を討ち取っている。

1573年、村重は三好党を見限り、上洛してきた信長に謁見する。これが彼の運命を一変させることとなる。

当時、多方面作戦をしていた信長にとって、摂津方面の平定は重要な問題であった。そこにタイミング良く現れた村重は、信長にとって貴重な存在であった。

翌年には伊丹城城主となり、堅城化し有岡城と改め、更に摂津の豪族を次々と平定し、また信長に従い、石山合戦などにも参加し、武功をあげた。

この頃の彼は、伊丹、花隅、尼崎など、35万石を有する、織田家でも有数の存在になっていた。そんな彼が突如謀反を起こすなど、いったい誰が予見しえたであろうか。

1578年、突如、彼は信長に反旗を翻す。信長は最初その事実を信じられなかったという。

謀反の理由には諸説あるが、確実なのは、村重は半年前から毛利家や本願寺と謀反の連絡をとっていたということである。ちなみにこの時、謀反を引き留めに来た黒田官兵衛を牢に入れてしまい、これが原因で官兵衛は足が不自由になっている。

こうして信長相手に戦いを挑むことになった村重だが、部下の高山右近・中川清秀らが速攻で信長に寝返るわ、アテにしていた村上水軍が信長の鉄甲船にフルボッコにされるわと、スタートの時点ですでに嫌な予感しかしない状態であった。

さらに村重は戦いが続く中、わずかな配下とともに有岡城から脱出してしまう。理由についてはこれまた色々言われているが、籠城戦の最中に大将だけが逃げるというケースはなかなかない。

結局、有岡城は１年ほどで降伏。最後に残っていた家臣たちも信長との約束を破って逃げ出したため、荒木の一族郎党たちは信長によって処刑されてしまった。しかし当の村重本人は、死ななかった。ついでに言うと、彼の息子である荒木村次や岩佐又兵衛（後述）も生き延びている。

なお、謀反を起こす前に明智光秀から思いとどまるように勧められたが断っている。光秀の長女は、村重の嫡男・荒木村次に嫁いでいたが、光秀に害が及ぶことを恐れた村重は、この時に離縁させている（光秀の長女は後に、明智秀満と再婚した）。

その後彼は毛利領に行き、村重という名を捨て、剃髪して僧形になり、道端の糞・「道糞」と自嘲して名乗っていた（僧にはならなかった）。

1582年、信長が死ぬと、彼は堺に戻って商人の娘と再婚したという。そこで茶人・「道薫」として復帰し、千利休とも交流するなど、意外な才能を示した。

1586年没。時代に翻弄された流転の人生であった。

信長は太刀に突き刺さった饅頭を村重に突き出し、食せと迫る。村重は平然とそれを平らげ、それを見た信長は村重の豪胆さを気に入り、茨木城城主とした。この場面、江戸時代の浮世絵にも描かれている。
晩年は「利休七哲」の１人に数えられた。
彼の高い教養は、江戸時代の絵師で洛中洛外屏風図（舟木本）など多くの絵画を世に残した息子の岩佐又兵衛に引き継がれた。

「信長の野望」（PC）シリーズにおける荒木村重の能力一覧。

「織田家有数の地方担当官」「無謀な反逆」「利休七哲」これらが彼の評価を複雑なものにしている。