蘆名盛氏とは (アシナモリウジとは) [単語記事]

蘆名盛氏（あしな・もりうじ　1521 ～ 1580）とは、陸奥会津の戦国大名である。蘆名家16代当主。隠居後は蘆名止々斎（ししさい）と号す。

概要

会津の戦国大名・蘆名氏の最盛期を築き上げた英主。南奥屈指の大勢力として田村氏や佐竹氏と戦った。が、一人息子に先立たれた為に養子を取ることになり、その後に不安を残しながら世を去る。

生涯

15代当主・蘆名盛舜の嫡男（次男）として誕生。1541年、21歳の時に父が隠居して家督を継いだ。妻は伊達稙宗の娘。

天文の乱、家中統制

1542年、伊達稙宗と伊達晴宗の父子対立が奥羽全土を巻き込んで『天文の乱』が勃発する。初めは岳父にあたる稙宗方についていたが、次第に同じ稙宗方の田村隆顕と対立し始めた。というのも、この頃には既に蘆名氏は会津地方を手中に収めており、更なる勢力拡大を狙って中通り地方への進出を画策していたのだった。
ちなみに隆顕の妻も伊達稙宗の娘である。どんだけ娘を送り込んでんだコイツは。

そんな訳で、田村隆顕との抗争を理由に晴宗方に転じる。この影響は大きく、天文の乱が晴宗方の勝利に終わる要因となった。その後も引き続き田村氏を攻めたてて、中通り地方へと勢力を拡げていく。

ところが1561年に庶兄・蘆名氏方が家臣に擁立されて謀反を起こした。これは素早く鎮圧したものの、蘆名氏は昔から重臣や一族の独立性が強く、いろいろと難儀してきた歴史があった。そこで盛氏は父にならって隠居・出家して「止々斎」と号し、家督は嫡男の蘆名盛興へと譲る事にした。もちろん盛氏はまだ41歳と現役バリバリ、隠居はあくまで形式的なもので、後継態勢を盤石なものとした（はずなんだけどなぁ…）。

なお盛興の妻として伊達晴宗の娘を迎えた。父子二代続けて夫婦となり、伊達氏との繋がりも深めている。

隠居後

1563年には顔芸こと須賀川の二階堂盛義を攻撃し、1566年に盛義は降伏、従属下に置いた。更に二本松氏や田村氏への攻撃も続け、1574年には田村清顕（隆顕の子）が蘆名・伊達連合軍に降伏する（こうした背景で清顕の娘・愛姫が伊達政宗に嫁ぐ事になる）。

順調に勢力拡大を続け、南の佐竹氏とも渡り合い、蘆名家の栄光は頂点に達していた。が、1574年に盛興が病死してしまう。原因は極度のアル中。盛興には男子がおらず、それどころか盛氏にも盛興以外の跡継ぎ男子がいなかった（盛氏は生涯にわたって側室を持たなかった）。御家の一大事である。

そこで悩んだ結果、人質として預かっていた二階堂盛義の子を養子に迎え、跡を継がせることにした。彼が蘆名盛隆である^[1]。盛隆には盛興の未亡人を妻として迎えさせた。
ちなみに盛隆の母（二階堂盛義の妻）・阿南姫と、盛興・盛隆の妻となった彦姫は実の姉妹である。

盛隆が後継者に選ばれた詳しい理由はよく分からないが、盛氏の祖父・蘆名盛高の娘が伊達氏に嫁いでおり、盛高の娘→伊達晴宗→阿南姫→蘆名盛隆、という形で一応彼も蘆名の血を引いている。だが、彼を後継者に据えた事で伊達・二階堂の一族の発言力が増し、一時はおとなしかった重臣たちも独自の行動を始めるなど、後々の火種がうまれることに…。