蘆名盛高とは (アシナモリタカとは) [単語記事]

蘆名盛高（あしな・もりたか　1448 ～ 1517※）とは、陸奥国の戦国大名である。蘆名家13代当主。蘆名盛詮の嫡男。弟に猪苗代盛清。子に蘆名盛滋、蘆名盛舜がいる。

（※旧暦。新暦にすると1518年没）

概要

会津・黒川城を本拠とする蘆名氏の当主。反抗的な家臣たちを積極的に討伐し、蘆名氏が戦国大名として飛躍するための第一歩を踏み出した人物である。

ここまでの蘆名氏

蘆名氏は源平合戦で戦死した三浦義明（宝治合戦で戦死した三浦泰村の曽祖父）の末裔である。

「蘆名」は現在の神奈川県横須賀市に位置する土地で、最初に蘆名を名乗ったのは義明の弟・蘆名為清である。この系統を相模蘆名氏と呼ぶが、数代で断絶した（石田と改姓して近江に移住したともされ、石田三成がその子孫という説もある）。

義明の四男・佐原義連は奥州藤原氏征伐などで活躍し、会津に所領を得た。彼が会津蘆名氏（以下は単に蘆名氏）の初代として数えられている。本格的に蘆名姓を名乗ったのは3代当主・蘆名光盛からとされる。

三浦一族の多くは宝治合戦で滅ぼされたが、光盛の弟・三浦盛時が名跡を継いで、その子孫が三浦道寸らで知られる相模三浦氏となる。蘆名氏は鎌倉時代は相模に住み続けていたようだが、7代当主・蘆名直盛（1323～1391）のころに会津地方に移り、東黒川館を築いたとされる。

以後は会津にて勢力拡大を始めるが、先に会津地方に土着していた同族との争いや家中内紛に苦慮することとなる。直盛は中先代の乱で一族の新宮明継らと一戦を交えている。会津新宮城を本拠とする新宮氏とはその後も幾度となく対立していたが、9代当主・蘆名盛政のとき、上杉禅秀の乱をきっかけに戦となって、1420年に滅ぼした。同時期に加納氏・北田氏といった三浦一族も滅亡している。

この頃から『会津守護』と称するようになり、会津地方の支配権を大きく確立した。黒川城が築かれたのも15世紀前半と推測されている。

12代当主・蘆名盛詮の家督相続の際には、これに不満をもつ者が蜂起し苦慮するも、南奥の実力者である白河直朝の助力を得て成敗した。だがこの頃の数十年間は人生五十年を謳歌できない短命当主が続いており、停滞期を迎えている。

そして1466年に盛詮が36歳で亡くなり、蘆名盛高が19歳で家督を継いだ。時は戦国時代へと突入しつつあった。

生涯

越後守護にして関東のドンでもある上杉房定の娘と、奥羽の雄・伊達成宗の娘を娶っている（正室は前者）。なお、1494年に伊達氏で内紛が起きたときには、義兄弟の伊達尚宗（成宗の子。彼の妻も房定の娘）を保護している。更には尚宗の子・伊達稙宗に自身の娘を嫁がせるなど、伊達氏との関係を二重三重に強化した。

1479年、近隣の土豪である高田城主・渋川義基を攻めて、父子共々死に追いやりこれを滅ぼした。この高田城は福島県大沼郡会津美里町にある城であり、遠縁の一族の美作三浦氏の本拠・高田城とは別の城である（当たり前だが）。渋川氏滅亡後は重臣の松本氏を入れた。

会津の有力者となった蘆名氏だが、またも一族・家臣がよからぬことを考えている気配が流れ始めていた。同じく佐原義連の子孫である猪苗代氏や、『蘆名四天』と呼ばれる宿老（松本・平田・佐瀬・富田）らの存在である。

波乱は1492年より本格化し、猪苗代伊賀・松本輔忠・富田頼祐らの謀叛が明らかとなり、これを討伐した。この最中、先述の通り伊達尚宗も内紛に遭い避難してきている（だが会津もそれどころではない）。1495年には松本輔豊（松本図書助舜輔の祖父）を、1498年には松本家当主・松本行輔（豊前守）および松本輔吉（行輔の伯父）・松本輔之（行輔の子）を、1500年には松本輔政を討ち滅ぼし、特に長らく反抗的だった松本一族への執拗な攻撃・圧迫を行った。（※行輔・輔豊・輔政・輔忠は全員兄弟）
また、重臣・松本氏だけではなく、一門の中でも一番きな臭い猪苗代盛頼父子を1501年に討ち取っている（※註）。

こうして家臣の統制を図り、戦国大名へと成長させたのであるが、今度は嫡男・蘆名盛滋と対立するようになった。この時盛滋のバックについていたのは相変わらず反抗期な松本氏であった。家臣 → 一門 → 親子、と怒涛の内紛3コンボである。

1505年に盛滋と一戦に及び、伊達尚宗の元へと追いやった。ただ、長期化を恐れて翌年には盛滋と和解し帰国させている。それ以降は山林の多い南に目を向け、鴫山城主・長沼政義と共に下野国へと侵攻し、宇都宮成綱と戦ったが敗れている。

こうして戦国大名としての蘆名氏の基盤を固め、1517年末に70歳で死去した。

※註：猪苗代さんに関するあれこれ

猪苗代盛頼は1541年にも謀叛を起こした記録があり、1501年に討死したとすると矛盾してしまう。同名の別人の可能性もあるが…
系図の上には盛頼の名前が見えない。誰かの別名なのか、はたまた系図から消されてしまったのか、真相は不明
猪苗代氏は猪苗代経元に跡継ぎがおらず、盛高の弟・猪苗代盛清が跡を継いだとされている。が、いつ頃彼が猪苗代を継いだのか、盛頼の謀叛と関係あるのか、といった点についても不明である
猪苗代盛清の子が猪苗代盛国（1536生）だが、盛国の父を盛頼とする説もある