西ゲルマン語群とはゲルマン語派の一つで、北海ゲルマン語群と内陸ゲルマン語群からなる語群である。
本項では西ゲルマン語群に属する言語の中でももっとも話者が多い英語と、その次に話者が多いドイツ語の比較を行う。
◆英語には男性、女性、中性、通性の四種類の性が存在するのに対し、ドイツ語は通性を除く三種類がある。
またドイツ語では全ての名詞は頭文字がキャピタルで表記されるのに対し、英語では固有名詞に限られる。
◆英語は不定冠詞が掛かる名詞の語頭が子音か母音かでa,anの2つに分かれるのに対し、ドイツ語の不定冠詞einは名詞の性と格によって様々に変化する。
a, an ⇔ ein, eine, einer, eines, einem, einen
◆英語の定冠詞はthe1つのみ(ただし子音か母音かで発音が異なる)であるのに対し、ドイツ語の定冠詞derは名詞の性、格、単複によって様々に変化する。
the ⇔ der, die, das, des, dem, den
また用法も英語とは幾つかの面で大きく異なる。
○総称英語は無冠詞で、ドイツ語は定冠詞で表現
例) Iron is useful. ⇔ Das Eisen ist nützlich.
○数量英語では不定冠詞を、ドイツ語では定冠詞を用いる
例) It costs twenty mark a pond. ⇔ Es kostet zwanzig Mark das Pfund.
○身分・職種・国籍
例) He came as a friend. ⇔ Er kam als Freund.
○乗物英語は無冠詞で表現するのに対してドイツ語では定冠詞を乗物の前に付ける
例) by train/car/plane/bus ⇔ mit dem Zug/Wagen/Flugzeug/Bus
◆ドイツ語の前置詞は種類が豊富で、英語では複数の前置詞や名詞からなる表現を一語で表しているものも多い。また格支配といって前置詞毎に定められた格の名詞を採る。
・2格支配
・3格支配
out of ⇔ aus
after, toward, according to ⇔ nach
・4格支配
for ⇔ fur
against ⇔ gegen
around ⇔ um
・3-4格支配
at, by ⇔ an
before ⇔ vor
under ⇔ unter
behind ⇔ hinter
in ⇔ in
◆ドイツ語には英語よりも多くの疑問代名詞が存在するが、英語の7W1Hとの対応関係は凡そ次のようになっている。
where ⇔ wo
how ⇔ wie
which ⇔ welcher, welche, welches, welchem, welchen
with what ⇔ mit was → womit 例) Womit schreiben Sie? ⇔ What are you writing with?
in what ⇔ in was → worin 例) Worin schwimmt der Fisch? ⇔ What does the fish swim in?
of what ⇔ von was → wovon 例) Wovon haben wir gesprochen? ⇔ What have we spoken of?
through what ⇔ durch was → wodurch 例) Wodurch ist es geschehen? ⇔ Through what has it happend?
from what ⇔ aus was → woraus 例) Woraus wird Brot gemacht? ⇔ What is bread made of?
to what ⇔ zu was → wozu 例) Wozu soll das dienen? ⇔ What is that to serve for?
◆wo+前置詞の組合わせもある
to where ⇔ hin wo → wohin
Ich weiss nicht, wer er ist. ⇔ I don't know who he is.
◆日本語の「これ」「それ」「あれ」に相当する単語は英語ではthis, it, thatだがドイツ語の場合定冠詞と同じder系(活用がやや異なる)が使われる。
this, that, the one ⇔ der, die, das
these, those, the ones ⇔ die, deren. denen
this, that, such ⇔ dieser, jener, solcher
that, the same ⇔ derjenige, derselbe
○「どの~」と聞かれた場合の返答
例) Which woman do you mean? ⇔ Welche Frau meinen Sie?
The one with the white dress. ⇔ Die im weissen Kleid.
◆英語の定関係代名詞はwho[先行詞が人], which[先行詞が物], that[[先行詞が人か物]と3つに分かれるが、ドイツ語の定関係代名詞はder[口語的], welcher[文語的]と2つに分かれる。
◆ドイツ語の不定関係代名詞はwer[人称]とwas[物称]の2つに分かれる。
who, which, that ⇔ der, welcher
who, whom, he who, those whom ⇔wer, was
◆英語とドイツ語は共に並列接続詞と従属接続詞の2種類を持つ。
並列接続詞
and ⇔ und
or ⇔ oder
for ⇔ denn
not 〜 but ... ⇔ nicht 〜 sondern ...
副詞的接続詞
従属接続詞
before ⇔ bevor
whether ⇔ ob
◆ドイツ語の特徴として副詞的並列接続詞に導かれる文は定動詞が倒置(=主語と定動詞の位置が逆転)されるという点にある。
例) When he awoke, it was full daylight. ⇔ Als er erwachte, da war es schon heller Tag.
◆英語の動詞は不定詞がe,k,r,sなど様々な語尾で終わるのに対し、ドイツ語の場合はnかenで終わる。また英語とドイツ語の基本動詞には形の似ている物が多くある。
例)bind ⇔ binden, bring ⇔ bringen, find ⇔ finden, help ⇔ helfen, drink ⇔ trinken, thank ⇔ danken, do ⇔ tun
◆英語では形容詞の語尾に-lyをつけたものが大半を占めるのに対して、ドイツ語では形容詞をそのままの形で副詞として利用する事が多い。
例)Her voice is beautiful. ⇔ Ihre Stimme ist schön. ; She sings beautifully. ⇔ Sie singt schön.
◆英語とドイツ語には共通する語彙が多いが、現代語同士を比較すると同じ語源を持つ単語でもその用法にはかなりの開きが生じている。これは日本語と中国語が同じ漢字を使用していてもその意味が大きく異なっている場合が少なからずあるのと同様で、英語と比較しながらドイツ語を学習する場合はその点に注意を払わねばならない。
例えば英語では幽霊を意味する単語はghostまたはspecterだが、ドイツ語のGeistは寧ろ精神mindや魂spiritといった意味で用いられており(Zeitgeist「時代精神」など)、幽霊はGespenstの方が近い。
◆語源からして全く異なる単語も多くある。例えば英語で「鏡」はmirrorだがこれはラテン語mirariから来ているのに対しドイツ語のSpiegelは別の羅語speculumに由来する。※speculumは英語でも「鏡」の意味があるが医学用語として使われている
◆ドイツ語は独特の語彙組立を行う言語である。「対象」は英語でobjectというがドイツ語ではGegenstandという言葉を用いる。gegen-は英語のcounter-やcontra-に相当する接頭辞で、Standは立場、位置といった意味合いを持ち、このため二つを合わせてGegenstandという一語を構成している。更にここにtheorieを加えてGegenstandstheorie(=Theory of Objects)という一語で「対象論」という意味を表すような造語もなされている。こういった英語では中々目にする事のない長々とした単語が所々で使われている。
ドイツ語とオランダ語の言語学的距離は近く、方言のような関係にあると言われる。
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最終更新:2024/04/19(金) 14:00
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