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解剖とは、死亡した人に対して、人体の構造の研究や死因究明のために体内を検索することである。転じて、物事を細かく調べるという意味のたとえにも使われる。この記事では、医学における人体の解剖について述べる。
解剖は、目的や執行形態によって区別される。それぞれ性質が異なってくるので、別々に紹介する。以下にその一覧表を示す。
名称 | 目的 | 対象 | 施行者 | 監督省庁 | 根拠法 | 費用拠出 | 強制力 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
系統解剖 | 学生の教育・研究 | - | - | - | - | 無 | 無 |
病理解剖 | 死因究明・治療効果判定 | 院内死 | 病理医 | 厚生労働省 | 死体解剖保存法 | 無 | 無 |
行政解剖 | 異状死体の死因究明 | 異状死 | 監察医 | 地方自治体 | 死体解剖保存法 | 無 | 有 |
承諾解剖 | 異状死体の死因究明 | 異状死 | 法医学者 | 地方自治体 | 死体解剖保存法 | 無 | 無 |
司法解剖 | 犯罪捜査 | 事件死 | 法医学者 | 法務省 | 刑事訴訟法 | 有 | 有 |
主に学生の解剖実習や研究のために行われる解剖であり、死亡時医学検索を目的とする他の4つとは明らかに意義が異なる検査である。紀元前からそのプロトタイプ的なものは存在し、1500年代にイタリア・ボローニャ大学で解剖学の基礎が確立された。日本に解剖学が伝わったのは1700年代後半で、杉田玄白によって、1774年に解体新書が刊行されるなど、その歴史は古い。その検体はほとんどが本人と遺族の同意に基いて“献体”として提供されている。今日の医療と医学は、そのような人々によって支えられてきた。
死因の究明や治療効果判定、合併症の発見などのために行われる解剖。解剖の依頼は臨床医が行い、それを受けて病理専門医が施行する。所見は臨床医に報告され、その医学情報は臨床研修や疾病の効果的な治療法の確立などに役立てられる 。
後述の承諾解剖も含めて、病理解剖の施行には遺族の同意が必要である。しかし、現状では遺体に傷をつけることへの抵抗感から、解剖を拒否されることが多い。また、頭部の解剖には、さらに別の同意が必要なので、体幹部の解剖の同意は得られても、頭部の解剖だけを拒否されることもあり、完全な死因究明に至らないことも多い(誰でも突然の脳出血などで死亡することがあるので、頭部の解剖は死因究明には不可欠)。
死因究明には重要なはずの病理解剖であるが、現在、日本の年間死者数約100万人に対して、解剖数2万体前後と、非常に低い解剖率にとどまっている。最大の原因は、解剖の費用が国家予算から全く出されておらず、全額を病院の負担で行わなければならないからである。一体25~50万円の負担はかなりの痛手であるため、現場が委縮する要因になっている。また 、現場に医学情報が還元されるまでに数カ月を要するという驚きのトロさスピードの遅さも解剖率低迷に拍車 をかけている。
原因不明の異常死体の死因を究明し、病死・事故死・事件死などを判別することを目的として行われる。犯罪や伝染病 の蔓延を防止し、公衆衛生の増進を図る上でも重要。広義では承諾解剖もこの概念に内包される。行政解剖は遺族の同意がなくても施行可能という大きな特徴がある。
行政解剖は、原則として監察医務院において監察医が施行する。警察に異状死体が届けられ、検視官が監察医務院への搬送を決めると、監察医はまず体表検索である検案を行い、死因不明と判断すると、行政解剖が施行される。
強制力を持つという大きな利点がある行政解剖だが、この制度、実は東京23区、横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市、 京都市、福岡市にしか存在しないのだ。しかも京都市と福岡市では財政上の都合により廃止されてしまった。このため、他の道府県では承諾解剖(後述)という形を取らざるを得ず、大きな格差が生じている。しかも、横浜市には監察医務院が存在せず、名古屋市では制度が形骸化し、無いも同然という惨状になっている。おまけに東京都でも、ある不見識な都知事によって廃止されかけたことがある。
そのような問題が多い上、医学情報が現場に還元されないという致命的な欠点があるため、解剖数は病理解剖よりさらに低い年間8000体前後という低い数字を叩き出してしまっている。また、病理解剖と同じく、国庫からの費用拠出はされない。監察医制度の拡充は人材不足と環境整備の遅れという問題があり、非常に困難な状況にある。
監察医制度が置かれていない地域において、異状死体の死因究明を行うために施行される。監察医務院が存在しないため、主にそれぞれの地域の大学に設置されている法医学教室で施行される。
承諾解剖は行政解剖と違い、遺族の承諾が必要なため、実施には困難を極める。遺族は親族の遺体に傷をつけられることに抵抗を示すことが多いため、同意が得にくいのだ。異状死の解剖が行われなければ、犯罪を見過ごすことにもつながりかねない。また、これも例によって費用拠出がされない。当然ながら、解剖数はとてつもなく少ない。
事件死と認められる、あるいはその疑いのある死体に対して、犯罪捜査のために行われる。施行するのは法医学の知識に長けた法医学者。司法解剖は裁判所の決定で強制的に行われる。
司法解剖は他の解剖と違い、国庫から費用拠出を受けることができる。………が、その数はわずか5000体分に過ぎない。なのに、なぜか司法解剖の年間数はなぜか決まって5000体前後。これはもちろんそれだけの費用で事足りている訳ではなく、体表から目で見るだけの「検視」のみを用いて騙し騙しやっているだけである。その証拠に、警察が取り扱う死体の解剖率は10%にも満たない。つまり、費用拠出されていると言っても、焼け石に水ということである。
さらに致命的なのが、法医学者の数。なんと、日本中の法学者を集めても、約200人。もちろん、これだけの数では警察の取り扱い遺体の一割をこなすので精一杯という危機的状況。なのに、司法解剖体制の充実なんてものが警察庁から出ている。ぜってー無理だろJK。
そんな問題点が積み重なり、ついに2007年、決定的な事件が起こる。時津風部屋で力士が兄弟子たちにリンチを受けて 死亡した、時津風部屋力士暴行死事件である。しかし、この事件での死因究明には大きな問題があった。この事件では医師が心不全と診断した上、死後CTによって死因不明との結果が出ていた。しかし、警察は死因を虚血性心疾患と報道し、司法解剖を依頼しなかった。幸い、遺族が時津風部屋の発表を不審に思い、承諾解剖を依頼したことによって事件が発覚したが、一歩間違えば、この事件は見逃されていた。司法解剖の穴が露呈してしまった事件であった。
ここまでそれぞれの解剖について解説し、問題点も記してきたが、その全体に通じる問題がある。それは「解剖率が低い」こと。警察の取り扱い遺体に対する解剖率は9%程度だが、日本の全死亡者に対する解剖率は、さらに低い2%台に留まっている。原因は「金がない」この一言に尽きる。何故金がないのかって? 厚生労働省が解剖を軽視してるからに決まってるじゃないか。
解剖が出来なくても、死亡診断書には死因を書かないといけない。そんなとき、「心不全」と記載されることが多い。 しかし、心不全というのは「症状」であり「病名」ではない。要するに「心臓がうまく働かない」という状態を示すもので、「頭痛がする」「おなかが痛い」「鼻水が出る」のような言葉の同類である。人間は死ぬときには例外なく心不全になるのだから、心不全というのは死因不明と同義である。
この問題を解決するには、厚生労働省による費用拠出、解剖をする病理医・法医学者の育成、オートプシー・イメージングなどの新たな死亡時医学検索の確立が必須である。まったく、厚労省にはしっかりしていただきたいものである。
掲示板
8 ななしのよっしん
2023/05/10(水) 23:10:29 ID: oykIsdcL3V
9 ななしのよっしん
2023/05/10(水) 23:26:05 ID: a8RToMRmj8
中学の頃にカエルの解剖をやったけど
その日の放課後に先生が希望者に解剖に使ったカエルの肉を振る舞ってくれたな
生物室に生徒を集めてカエルの足をガスバーナーで炙りながら
教材になってくれたカエルへの感謝とか命をいただくことのありがたみを滔々と説いてたことはよく覚えてる
10 ななしのよっしん
2023/05/10(水) 23:36:11 ID: oykIsdcL3V
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最終更新:2024/09/08(日) 22:00
最終更新:2024/09/08(日) 21:00
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