贋金と天秤 単語

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がんきんてんびんとは、秤を使って贋物にせもの貨を探すパズルである。

概要

贋金と天秤は、いく枚かの貨に混じっている本物とは重さが異なる贋物を、秤ばかりを限られた回数だけ使用して特定するパズルである。

なお、本稿ではこのパズルを「贋金と天秤」として扱うが、「秤とコイン」「偽の貨と秤」「8枚のコイン」「秤問題」「贋鑑定問題」など、さまざまな呼称がある。また、貨ではなく塊や分とするものもあるが、いずれもパズルの内容は同じ。

8枚の金貨

贋金と天秤のパズルは、1945年、E.D.Schellがアメリカ数学誌『American Mathematical Monthly』で提起したものがはじまりとされる。そのパズルは以下のような問題であった。


8枚の貨があり、うち1枚は本物よりわずかに軽い贋物である。

秤ばかりを2回使って贋物を見つけるにはどうすればよいか。

秤ばかりの左右の皿に、貨を同じ枚数ずつ載せて重さをべよう。秤ばかりは左右の重さが異なれば傾き、等しければ釣り合う。

まず、秤ばかりに貨を3枚ずつ載せて重さをべる。どちらかに傾けば、軽かったほうの3枚のいずれかが贋物である。釣り合えば、載せていない2枚のどちらかが贋物である。

つぎに、贋物が混じっているグループから貨を1枚ずつ選び、秤ばかりに載せて重さをべる。どちらかに傾けば、軽かったものが贋物である。釣り合えば、載せていないものが贋物である。

秤ばかりは、1回の操作で「左<右」「左=右」「左>右」の3通りの情報のうち1つをもたらすため、本物より軽い贋物が1枚だけ混じっている場合には、N回の操作で最大3N枚の貨の中から贋物を見つけ出せる。上記の問題も、秤を2回使うのであれば、最大で32=9枚の貨の中から贋物を判別可であるが、あえて8枚とすることで、3枚ずつ載せて較するという発想が得にくいよう工夫されている。

13枚の金貨

8枚の貨のパズルの発展形として、H.D.Grossmanがアメリカ数学誌『Scripta Mathematica』で、12枚の貨のパズルを提起した。これは後に13枚の貨のパズルとして発展した。

13枚の貨があり、うち1枚は贋物である。

贋物の重さは本物とわずかに異なるが、本物より軽いか重いかは分からない

秤ばかりを3回使って贋物を見つけるにはどうすればよいか。

本物と確定した貨をうまく活用するとよい。秤ばかりの一方に本物のみを載せて傾いたなら、もう一方には贋物が混じっており、それが本物より軽いのか重いのかまで分かる。

初手は4枚ずつ載せて重さをべる。

説明のために、13枚の貨それぞれを ABCDEFGHIJKLM とする。

まずは、秤ばかりに貨を4枚ずつ、ABCDEFGH を載せて重さをべる。

  • ABCD が EFGH より軽かった場合、軽かったほうの4枚(ABCD)に軽い贋物が混じっている、もしくは重かったほうの4枚(EFGH)に重い贋物が混じっている。また、載せていない5枚(IJKLM)はすべて本物である。
    つぎに、秤ばかりに ABCEFIJKLM を載せて重さをべる。
    • ABCEF が軽かった場合、ABC のいずれかが軽い贋物であるので、ABべればよい。
    • ABCEF が重かった場合、EF のどちらかが重い贋物であるので、EFべればよい。
    • 釣り合った場合、D が軽い贋物、もしくは GH のどちらかが重い贋物であるので、GHべればよい。
  • ABCD が EFGH より重かった場合、上記と同様に考えればよい。説明は割愛する。
  • ABCD と EFGH が釣り合った場合、載せていない5枚(IJKLM)に贋物が混じっている。また、秤ばかりに載せた8枚(ABCDEFGH)はすべて本物である。
    つぎに、秤ばかりに IJKABC を載せて重さをべる。
    • IJK が軽かった場合、IJK のいずれかが軽い贋物であるので、IJべればよい。
    • IJK が重かった場合、IJK のいずれかが重い贋物であるので、IJべればよい。
    • 釣り合った場合、LM のどちらかが贋物であるので、LAべればよい。

秤ばかりを2回使ってよい場合は最大4枚、4回使ってよい場合は最大40枚、N回使ってよい場合は最大(3N-1)/2枚の貨の中から贋物を見つけ出せる。

派生

贋金と天秤のパズルは、いくつかのパズルが考え出されているので紹介する。

14+1枚の金貨

本物と確定している貨が1枚用意されているパズル。たとえば以下のようになる。

14枚の貨があり、うち1枚は贋物である。

贋物の重さは本物とわずかに異なるが、本物より軽いか重いかは分からない

秤ばかりを3回使って贋物を見つけるにはどうすればよいか。

ただし、本物だと分かっている貨が1枚あるので使ってもよい

考え方は13枚の貨のパズルと同じ。

初手は5枚ずつ載せて重さをべる。

説明のために、14枚の貨それぞれを ABCDEFGHIJKLMN 、本物の貨を O とする。

まずは、秤ばかりに貨を5枚ずつ、ABCDEFGHIO を載せて重さをべる。

  • ABCDE が FGHIO より軽かった場合、軽かったほうの5枚(ABCDE)に軽い贋物が混じっている、もしくは重かったほうの O 以外の4枚(FGHI)に重い贋物が混じっている。また、載せていない5枚(JKLMN)はすべて本物である。
    つぎに、秤ばかりに ABCFGHJKLMNO を載せて重さをべる。
    • ABCFGH が軽かった場合、ABC のいずれかが軽い贋物であるので、ABべればよい。
    • ABCFGH が重かった場合、FGH のいずれかが重い贋物であるので、FGべればよい。
    • 釣り合った場合、DE のどちらかが軽い贋物、もしくは I が重い贋物であるので、DEべればよい。
  • ABCDE が FGHIO より重かった場合、上記と同様に考えればよい。説明は割愛する。
  • ABCDE と FGHIO釣り合った場合、載せていない5枚(JKLMN)に贋物が混じっている。また、秤ばかりに載せた10枚(ABCDEFGHIO)はすべて本物である。
    つぎに、秤ばかりに JKLABC を載せて重さをべる。
    • JKL が軽かった場合、JKL のいずれかが軽い贋物であるので、JKべればよい。
    • JKL が重かった場合、JKL のいずれかが重い贋物であるので、JKべればよい。
    • 釣り合った場合、MN のどちらかが贋物であるので、MAべればよい。

複数枚の贋金

贋物が2枚以上混じっているパズル。たとえば以下のようになる。

7枚の貨があり、うち2枚は本物より軽い贋物である。

秤ばかりを3回使って贋物を見つけるにはどうすればよいか。

説明のために、7枚の貨それぞれを ABCDEFG とする。

まずは、秤ばかりに貨を3枚ずつ、ABCDEF を載せて重さをべる。

  • ABC が DEF より軽かった場合、ABC の3枚と載せていない G の併せて4枚の中に、軽い贋物が2枚混じっている。よって、AB を載せて重さをべ、AC を載せて重さをべればよい。
  • ABC が DEF より重かった場合、上記と同様に考えればよい。説明は割愛する。
  • ABC と DEF が釣り合った場合、ABC のいずれか1枚と、DEF のいずれか1枚が贋物である。よって、AB を載せて重さをべ、DE を載せて重さをべればよい。

この解法は一例であり、別解もあるがここでは割愛する。

最大枚数と最少回数

贋物を見つけ出すためには秤ばかりを最少何回使えばよいか、あるいは、最大何枚の貨の中から贋物を見つけ出せるかを問うものもある。パズルというよりは数学の問題に近い。

  • 本物より軽い贋物が1枚混じっている場合、秤ばかりをN回使えば、最大3N枚の貨の中から贋物を見つけ出せる。
    • 秤ばかりを1回使えば3枚の貨の中から贋物を見つけ出せる。以下、秤ばかりを2回使えば9枚、3回使えば27枚、4回使えば81枚、5回使えば243枚、6回使えば729枚の貨の中から贋物を見つけ出せる。
  • 本物より軽いか重いか分からない贋物が1枚混じっている場合、秤ばかりをN回使えば、最大(3N-1)/2枚の貨の中から贋物を見つけ出せる。
    • 秤ばかりを2回使えば4枚の貨の中から贋物を見つけ出せる。以下、秤ばかりを3回使えば13枚、4回使えば40枚、5回使えば121枚、6回使えば364枚の貨の中から贋物を見つけ出せる。
    • 貨が2枚(本物1枚と贋物1枚)しかない場合は、どちらが贋物なのか判別できない。

袋に入った金貨

貨が袋に入っているパターンパズルも知られているので紹介する。

10gの貨が10枚ずつ入った袋が10個ある。

しかし、11gの贋物だけが入った袋が1つ混じっているという。

はかりを何回使えば贋物の袋を見つけられるだろうか。

はかりを1回使うだけでよい

1番の袋から1枚、2番の袋から2枚、…9番の袋から9枚をそれぞれ取り出して、45枚を同時に量る。もし結果が451gであれば、1番の袋の貨が贋物である。452gであれば、2番の袋の貨が贋物である。459gであれば、9番の袋の貨が贋物である。そして、450gであれば、1枚も取り出していない10番の袋の貨が贋物である。

このパズルは重さをはっきりとさせていることが特徴で、贋金と天秤のパズルを下敷きにした一種のひっかけ問題と考えることもできる。なお、贋物の袋の個数が不明なパターンもあるが、考え方は似ているため、説明は割愛する。

ひっかけクイズ

贋金と天秤のパズルに関するひっかけクイズも知られている。

8枚の貨があり、うち1枚は本物より軽い贋物である。

秤ばかりを最少何回使えば贋物を見つけられるだろうか。

本来の答えは、上で述べたように2回であるが、この場合は次のような答え方もある。

  • 1回:1枚ずつ秤ばかりに載せれば、運が良ければ1回で特定できるから。
  • 0回:秤ばかりを使わずとも、手に取っただけで分かるほどの明らかな重さの違いがあったから。

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12個の分パズル
1:08から、8つのりんごパズル

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  • 23 ななしのよっしん

    2021/07/24(土) 18:48:54 ID: nAv2hZ8Y12

    >>22の続き

    ()、B≦{3^(N-1)+1}/2 の
     操作Sの一度の操作で秤がつり合ったとき、集合Bの中に偽物が存在する。
     この時、操作Sの全N回の操作の結果の組み合わせは最大で3^(N-1)通り。
     一方、集合Bの貨が偽物である場合の組み合わせは、
     『一度でも秤に乗せる貨が偽物であった場合のみ、それの重い場合と軽い場合を区別する』とすると、
     2×{(B)-1}+1通りで、それぞれに、対応した『操作Sの全N回の操作の結果』が存在する。 
     よって
         2×{(B)-1}+1≦3^(N-1) 
    ⇔ B≦{3^(N-1)+1}/2

    (省略しています。全て読むにはこのリンクをクリック!)

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  • 24 ななしのよっしん

    2021/07/24(土) 19:43:35 ID: nAv2hZ8Y12

    >>22>>23の続きです。

    というわけで、重いか軽いか分からない偽物1枚を秤N回使用で見つけられる貨の最大数は(3^N-1)/2になりそうです。
    (できることの明はちょっと待ってください。)
    ただし、(3^N-1)/2の中から偽物を探す場合、偽物が軽いか重いかまでは特定できない場合が存在するようです。
    (記事の13枚の解法でも貨Mが偽物の場合は特定してないですしね。とはいえ、>>22>>23明が合ってる場合の話ですけど)

    記事の明は間違っている部分もありそうですが、全部消しちゃうのはもったいないですね。
    記事の『1回の操作で「左<右」「左=右」「左>右」の3通りの情報のうち1つをもたらし』や『軽いか重いか分からない贋物が1枚だけ混じっている場合、答えは2n通り』などの考え方を読んでなかったら、自分もさっき書いたような明は考えられなかったでしょうし。

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  • 25 ななしのよっしん

    2023/09/26(火) 23:59:59 ID: t5eqjAumva

    >>24
    できることの
    https://mistlewheat.akazunoma.com/three/exit

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