起動加速度 単語

1件

キドウカソクド

5.1千文字の記事
  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • LINE

起動加速度とは、鉄道車両速度0から発する時の加速度である。
この項では、電車の加速特性についても説明する。

概要

鉄道車両において、加速性を示すデータの一つである。単位には1間に増加する速度キロメートル毎時の値である「キロメートル毎時毎(km/h/s)」や、1間に増加する速度メートルの値である「メートル(m/s2)」が用いられる。

列車が定加速度運動で加速する場合、列車速度は発からの時間でめられる。
しかし実際には、列車無視できない走行抵抗が発生するうえ、速度が一定以上に達すると加速が鈍り始めるため、められるのは近似値である。

起動加速度を高く設定すれば、短い時間で速度を上げることができる。一方で高速では加速が頭打ちになったり、列車の出を上げるコストがかかるため、鉄道会社は運行路線の実情を踏まえて車両の性を決定している。

加速特性

※ここから鉄分濃度が急上昇します

実際の電車はどのような加速度で動いているのか、抵抗制御・直流直巻モーターを例に簡単に説明する。

103系電車 加速曲線右図は国鉄がやたらたくさん製造した、103系電車の加速特性グラフである。この図では横軸に速度、縦軸に速度に対する加速を取っている。

速度0km/hから33km/hまでは、加速度は緩い右下がりを描いている。この領域ではモーターの電流を抵抗によって制御することで定加速を維持しており、定加速度領域と言う。
定加速度なのに下がっていくのは、速度が上がるにつれて増える走行抵抗の分を差し引いているためである。

33km/hから値が下がり、58km/hまでの太線の領域を定出領域と言う。このとき列車の出は一定に保たれるため、加速度速度に反例して下がっていく。

58km/h以上では定出が難しくなることから、モーター特性に任せて加速をする。これを特性領域と言い、加速速度の2乗に反例して下がる。

最終的には列車の加速と走行抵抗がつり合い、加速が止まる。しかし運行の際には余を残した最高速度を種ごとに設定しているため、つり合いの状態はなかなか起きない。

定格速度

上の例で示した103系では、100km/h以上の速度を出そうとしても加速が残っていない。モーター輪とのギアチェンジ不可能電車では、起動加速度を犠牲にすることで高速での加速を得ることになる。

定加速度領域が終わるとき(上図103系では33km/h)、モーターは定められている最高出に達する。その次の定出領域でも最高出は維持され、特性領域になると逆起電により出は落ちていく。モーターが最高出で運転できる速度定格速度と言う。
一般に定出領域にあたる速度を定格速度とする。しかし定加速度領域からいきなり特性領域に移る車両もあり、その時の速度をこの場合の定格速度とする。

モーター輪のギア(回転数の差)が大きいと、モーターが最高出に達したときの列車速度は低い。同じモーターでもギアを小さくすると、列車が高い速度になってから最高出に達する。高速運転をする車両ではこのような方法で高速域での加速を確保している。

用途別の例

以下に車両的ごとに性が異なる例を示す。なぜ古い車両だけなのかは後述。

通勤型電車 103系

103系通勤型電車 加速曲線定格速度:33~58km/h
最高速度:100km/h

通勤電車が走る路線では総じて間の距離が短く、短時間のうちに速度を上げることが時間短縮や列車増発の点で重要である。そのため起動加速度は2.0km/h/sと高く設定しているが、定格速度は低く80km/h以上では既に息切れしかけている。

山手線を代表とする通勤路線では間の最高速度が高くても80km/h程度であるため、特性を発揮した運転ができる。本来は投入すべきではない、近郊電車向けの常磐線快速電車山陽本線中国地区に投入された例があるが、そちらにおいても中速域までの加速が高いことを生かして高速域での加速不足を補えるためダイヤ上では近郊電車と遜色ない走行が可である。(大和路線奈良線快速運用はだいぶ厳しそうだったが

近郊型電車 115系

115系近郊型電車 加速曲線定格速度:49~74km/h
最高速度:100km/h(改造110km/h)

近郊電車とは、100km程度の都市間輸送を的として作られた電車のこと。始発から終点まで2~3時間、間が数kmの路線で各に止まっていく、といった運用である。
高速性を持ちつつ起動加速度も確保した中性的な加速曲線を持つ。最高速100km/hまで安定した加速を保ち、103系べて同じ最高速100km/hでも余裕のある走行が可

早急に置き換えが進められている103系に対して、接客設備の都合や勾配区間に強いこともあって、115系はまだ地方の第一線で活躍している。また、走行性の余裕を買われて、一部編成はブレーキを強化したうえで最高速度を110km/hに向上させている。

特急型電車 485系

103系通勤型電車 加速曲線定格速度:69~101km/h
最高速度:120km/h

通過の多い特急は、速度0から発する回数が鈍行にべて少ないため、起動加速度はあまり重要ではない。むしろ日本幹線鉄道に点在する80km/h程度の速度制限において、区間を抜けたあと、いかに最高速度まで再加速するかが所要時間を握っている。
485系の加速曲線は最もなだらかに描かれており、最高速度まで不安く加速することができよう。

を使用する特急はつかり号や特急雷鳥号では、青函トンネル内や湖西線内の特例により140km/hや130km/h運転が行われていた。(但し青函トンネル140km/hは下り坂の時のみで上りは110km/hまで下がっていたという話が鉄道ジャーナルの2007年4月号「東京への」に記載されている。また湖西線内でも第二パンタを上げない場合は120km/hの制限が掛かっていたそうだ)撤退によりもう見られなくなったが、余を発揮したエピソードとして記憶しておきたい。

まとめ

103系 115系 485系 加速曲線比較紹介した3形式を一つのグラフに重ねてみたものがこちら。

103系115系は共に特別料不要な客室であるため、一部路線では共通の任に就いていたことがある。しかし両者が同時に性を発揮できるような速度域が限られていることはこの図からも読み取れるだろう。ちなみにそのような場合はたいてい103系理をさせられている。

これら3種は直流モーターを搭載しているため、高速かつ高出での運転は故障を起こしやすい。そのため103系最高速度が100km/hだからといって、常時100km/hまで加速するような運転を続けるのは良くないのである。(大和路線奈良線快速系運用で100km/hまではいかないが90km/h以上を維持する様な状態になるのを何度か見かけた。)そのようなダイヤの路線は間違いなく距離が長いので、素直に115系を使いましょう。

VVVF制御車

VVVF制御では、容易かつ自在なソフトウェアと、耐久性が高い交流モーターの採用により、これまでの直流直巻モーターとは全く異なる加速特性が実現可になった。しかし従来との共存の際に、運転士混乱連結時の過負荷・衝動を回避するため、敢えて類似する加速特性を設定するVVVFも多い。

VVVF制御空転しづらい、モーターが高速回転に耐えるといった利点がある。これらを利用し、起動加速度を大きなギヤで高め、直流直巻では不可能モーターの高速回転で定格速度を上げるといった芸当が可である。よって通勤向けギヤそのままの近郊電車や、103系と互の起動加速度を持つ特急電車が作れてしまい、形式それぞれの性における性格の差が薄れつつある。(ちなみに阪神ジェットカーでおなじみの阪神5500系阪神5550系阪神5700系阪神5001形の起動加速度4.5km/h/sに対し4.0km/h/sになっている。これは既に加速が十分に高性ありこれ以上加速度を上げると乗客が転倒してしまう恐れがあること、中高速域(30km/h以上)では阪神5500系列の方が加速が高くトータルではそちらのほうが速いという事も関係している。5550系・5700系では出が上がった分モーターを減らし阪神5001形の4M0Tの全電動に対しトレーラーを1両分含む実質3M1TのMTになっている

VVVF制御車 E231系

VVVF制御 E231系電車 加速曲線定格速度:42~72km/h(推定)
最高速度:120km/h

E231系JR東日本通勤路線と近郊路線の両方に投入できるよう設計した。通勤タイプと近郊タイプ仕様若干異なり、これは後者の加速特性である。

本来VVVFは定加速度領域をさらに広く取って定出領域をごく短くしてしまうことも可であるが、E231系では直流直巻モーターに類似した加速曲線を描いている。これは高速域で加速が強すぎると空転の恐れが高まることや、運転士が従来と同様の運転方法ができるような配慮が理由として考えられる。

定格速度115系に近い値であると推定されるが、起動加速度の高さにより特性領域の加速485系にも並ぶ。

直流直巻モーター車との比較

103系 115系 E231系 加速曲線比較起動加速度、特性領域共に置き換え相手である103系115系カバーしている。E231系通勤タイプではさらに起動加速度が高められているので、置き換えが了した路線は時間短縮や間での運転速度低下、惰性走行時間増加による省エネ運転などのサービス向上が進んだことだろう。

しかし一方では、駄な性を持つ車両差別に各線区へ投入しているとの見方もできる。しかし現在のところ、大量に同形式の電車を保有することによるスケールメリットの方がかに大きいことから、通勤・近郊の共通設計は今後も続くものと思われる。(将来の転属時に融通も効くし)

定格出力

鉄道車両モーターには形式ごとに定格出が定められており、定出領域(定格速度)ではこの出内で運転される。直流直巻モーターはおおむね1時間定格内で運転されているが、VVVF制御が採用する交流モーター間的に一般に知られている1時間定格をかにえる出で運転されており、VVVF制御の1時間定格の値は編成出等の参考になり得ない。

モーター定格出力近似値の求め方

ここでは、列車の加速度、定格速度、編成重量といった較的入手しやすい値を元に、実際のモーターの定格出を簡単にめてみる。ここでまるのは走行抵抗無視する(編集者が知らない)ため、近似値となる。

以下より式をめる

p[W]は、単位時間あたりの仕事の量であるから
 p = W[J] / t[s] = F[N] * s[m] / t
s/t速度v[m/s]であるから
 p = F * v
また、F[N]=m[kg]*a[m/s^2]より
 p = m * a * v

ここで、編成重量をM[t], 定格速度V[km/h], 定格速度での加速度A[km/h/s]と置くと
 p = (M *1000) * (A * 1000 / (60 * 60)) * (V * 1000 / (60 * 60))
以上より、時の編成定格出P[kW]は以下のようにまる
 P[kW] = M[t] * A[km/h/s] * V[km/h] * 7.716 * 10^-2

また、電動車両数をNM[両]とすると、時のモーター定格出P'[kW]は
 P'[kW] = (M * A * V * 7.72 * 10^-2) / (NM * 4)
       = M[t] * A[km/h/s] * V[km/h] / NM[両] * 1.929 * 10^-2

以上。定員乗時の値は、編成重量Mに乗人数*0.06を加えればめられる。

試算例
E231系近郊タイプ10連 (1時間定格95kW)
P' = (283[t] + 1400[人] * 0.06[t]) * 42[km/h] * 2.3[km/h/s] / 4[両] * 1.929 * 10^-2
  = 171[kW]
京急新1000形ステンレス4連 (1時間定格150kW)
P' = (134[t] + 500[人] * 0.06[t]) * 60[km/h] * 3.5[km/h/s] / 4[両] * 1.929 * 10^-2
  = 166[kW]
EF200電気機関車 (1時間定格1000kW)
定格引260.7[kN]のデータがあるのでp=Fvより殺。
P' = 260.7[kN] * 81.2[km/h] * 1000 / (60 * 60) / 6
  = 980[kW]

関連動画

関連項目

この記事を編集する

掲示板

おすすめトレンド

ニコニ広告で宣伝された記事

記事と一緒に動画もおすすめ!
もっと見る

急上昇ワード改

最終更新:2024/04/19(金) 22:00

ほめられた記事

最終更新:2024/04/19(金) 22:00

ウォッチリストに追加しました!

すでにウォッチリストに
入っています。

OK

追加に失敗しました。

OK

追加にはログインが必要です。

           

ほめた!

すでにほめています。

すでにほめています。

ほめるを取消しました。

OK

ほめるに失敗しました。

OK

ほめるの取消しに失敗しました。

OK

ほめるにはログインが必要です。

タグ編集にはログインが必要です。

タグ編集には利用規約の同意が必要です。

TOP