軒づけ(のきづけ、または軒付け)とは、上方落語の演目である。くすぐりが多い噺であり、桂米朝、桂枝雀、桂文珍など多くの落語家が演じている。江戸落語の演目では「素人浄瑠璃」という。
なお、軒付けとは浄瑠璃に興じる素人が他人の家の前で一段歌うというもので、度胸試し、あるいは空で読む必要があるため勉強にもなる。ある種今なら迷惑行為で通報されかねないような習慣(今でいえば、駅前の弾き語りがこれに近い?)であり、これも明治~昭和初期の大阪で浄瑠璃が大ブームとなった時代背景を反映しているものといえる。他に素人浄瑠璃が出てくる有名な噺に「寝床」、「胴乱の幸助」などがある。
浄瑠璃とは簡単に言えば、物語の朗読+歌。題材は史実の伝承からとった時代物や創作話のものもある。歌う人は素人なので、当然聞き惚れるほど上手い人もいれば、そうでない人もいる。尤も、カラオケならせいぜい4、5分我慢すれば済むが、浄瑠璃は一段語るのに1時間近くかかるため、本当に下手の横好きなら洒落にならないことになるのである(それを題材にしたのが「寝床」)。
浄瑠璃にかじった男が、知人にこの前浄瑠璃会で一段語ったと言う。知人は、まだ素人なのに大したものだと感心し、「当たった(受けた)か?」とたずねると「当てられた」と即答。どういうことかと聞くと、思わず緊張のあまり、素っ頓狂な声色になったり、変に台本を飛ばして猪が駆け下りる様子を、お姫様のような声で囁いたり無茶苦茶な公演をしたせいで、観客から蜜柑の皮や芋のヘタを当てられたというのだ。
知人はそれを聞いて呆れるが、そこまで浄瑠璃にハマってるなら軒付けを一緒にやらないかと誘ってくれる。実は男も浄瑠璃は好きで、仲間と一緒に軒付けに廻っており、ある浄瑠璃好きの大家から鰻の茶漬けをご馳走されたという。
男はそれを聞いてすっかりやる気に。だが、肝心の当日に、三味線の担当が急用で出てこられなくなった。三味線の腕がいいからまだ聞いてもらえるようなものだったので、それならと別の男、紙屑屋の天さんが急遽呼ばれる。だが、この男はたった3つの手習いしかできない素人同然であり、しかも文句があるなら帰ると居直られそうになる始末、仕方なくこの男も連れて、なんとも心もとない軒付けが始まった。
だが、そんな軒付けがうまくいくはずもない。語らせてほしいと交渉しようとするだけで病人がいるので即お断りされたり、声の調子を合わせようとしているだけでヘドついてる(気分悪く餌付いてる)だけと思わたり、いざ、語り始めるや静かに聞いてくれる家が見つかったと思えば、実は貸家だったり、だだけもの(乱暴者)が殴り込んできたと思われたり、…何ともさっぱりで、途方に暮れ、結局、糊屋のお婆ん(落語では定番の人物)なら、耳も遠いので迷惑にならないだろうと、彼女のお宅に押しかけることになった。
連中が頼み込むと、お婆んは食事中だったが、どうぞと快諾してくれる。そして、一段演じてみるが、結局三味線がド素人なのか何ともしまらない。今日はもうあかんと連中が肩を落としていると、お婆んが「あんたら、浄瑠璃上手やねえ」と声をかける。耳が遠いはずなのになぶるな(からかうな)と一言返すが、
「さっきから食ってる味噌(金山寺味噌)の味がちっとも変わらん」
※歌がヘタなことを糠味噌が腐るというが、それに似た言葉で「下手な浄瑠璃で味噌が腐る」って表現があり、それを掛けている。
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最終更新:2024/04/25(木) 22:00
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