近鉄特急とは、近畿日本鉄道(近鉄)が運行する有料特急列車の総称である。
1947年10月8日、上本町~伊勢中川間と伊勢中川~近畿日本名古屋間で運行を開始した、戦後初の有料特急に端を発する。近鉄が有する私鉄最大のネットワークで、都市間輸送や観光輸送を担う。
1964年の東海道新幹線開業後は新幹線の培養線的な役割を担うことで大きい発展を遂げた。現在でホームライナー的な需要の伸びが大きく、名阪都市間輸送も堅調で、伊勢志摩方面の観光需要も最盛期ほどではないものの「しまかぜ」がプレミアムチケットになる等根強い需要に支えられており、近鉄電車の経営を支えるドル箱として機能している。一方で京伊特急など一部では需要低迷により他の系統との統廃合が進んでいる系統もある。
すべての特急において、乗車には乗車券のほかに特急券が必要である(車両・座席によっては追加料金が必要)。
座席は全席指定であるが、当日券の売上が全体の半分近くを占めるという特徴がある。このため、チケットレスサービスで座席の空き具合を見てみると、前日~当日朝の時点では空席だらけでガラガラなのに、乗車してみるとそこそこ客が乗っている…ということがよくある。
以下、2020年3月20日ダイヤ改正時点の情報をもとに、定期運行している系統についての詳細を解説する。停車駅表の凡例は以下の通り。
路 線 |
停車駅 | 甲特急 | 乙特急 |
使用車両 | ひのとり | アーバンライナーnext アーバンライナーplus |
|
難 波 線 |
大阪難波駅 | ● | ● |
大阪上本町駅 | ● | ● | |
大 阪 線 |
|||
鶴橋駅 | ● | ● | |
大和八木駅 | ▲ | ● | |
名張駅 | | | ● | |
桔梗が丘駅 | | | ▲ | |
伊賀神戸駅 | | | ▲ | |
名 古 屋 線 |
津駅 | ● | ● |
白子駅 | ▲ | ● | |
近鉄四日市駅 | ▲ | ● | |
桑名駅 | ▲ | ● | |
近鉄名古屋駅 | ● | ● |
名阪甲特急は系統としては1947年に登場した(直通は1959年から)近鉄特急の元祖にして花形で、全列車がひのとり(80000系)で運転される。かつてより東海道新幹線と競合している。名阪甲特急の大阪市内(鶴橋駅)~近鉄名古屋駅間の所要時間は最速1時間59分と所要時間では新幹線に1時間以上及ばないものの、現在ではコストパフォーマンスや快適性、繁華街である難波に直接乗り入れる利便性を前面に押し出している(名古屋~難波間で比較すると、新幹線との所要時間差は乗り換え時間を含めて約45分程度の差となる)。
2012年3月20日のダイヤ改正により全列車が津駅に停車するようになった。これに伴い、「名阪ノンストップ特急」の愛称も消滅した。これ以前は運転士の交代を中川短絡線の走行中に行っていたが、河川改良に伴い中川短絡線の線路がカーブの緩い新線に架け替えらえたため、津駅に停車したうえで乗務員交代を行っても所要時間を維持できるようになったのでこの体制に改められた。
名阪乙特急は途中主要駅に停車し、大阪市内(鶴橋駅)~近鉄名古屋間を約2時間15分で運転する。朝9時前後までに大阪方面に到着する大阪難波行きに限り、伊賀神戸駅と桔梗が丘駅にも停車する(土休日の1本は桔梗が丘駅を通過)。
甲特急は原則大阪難波駅・近鉄名古屋駅の両駅を毎時00分に、乙特急は毎時30分に発車する(一部時間帯は大阪難波駅20分発、近鉄名古屋駅25分発の甲特急が増発される)。2016年3月19日のダイヤ改正で、平日・土休日ダイヤの大阪難波駅21時発と土休日ダイヤの近鉄名古屋駅発6時の甲特急に停車駅が追加され、近鉄名古屋駅6時発の便は乙特急に格下げ、大阪難波駅21時発の便は大阪難波駅~津駅間を甲特急、津駅~近鉄名古屋駅間を乙特急として運転することとなった。
2020年3月14日のダイヤ変更により前述のひのとりが甲特急での運行をスタート。2021年2月13日からは全ての甲特急がひのとりで、乙特急がアーバンライナーでそれぞれ統一され長年続いた汎用特急車及びビスタEXによる定期運用が消滅した。
路 線 |
停車駅 | しまかぜ | 甲特急 | 乙特急 |
使用車両 | 伊勢志摩ライナー ビスタEX |
伊勢志摩ライナー ビスタEX 汎用特急車 |
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難 波 線 |
大阪難波駅 | ● | ● | ● |
大阪上本町駅 | ● | ● | ● | |
大 阪 線 |
||||
鶴橋駅 | ● | ● | ● | |
布施駅 | | | | | ▲ | |
大和高田駅 | | | | | ▲ | |
大和八木駅 | ● | ▲ | ● | |
榛原駅 | | | | | ▲ | |
名張駅 | | | | | ● | |
桔梗が丘駅 | | | | | ▲ | |
伊賀神戸駅 | | | | | ▲ | |
榊原温泉口駅 | | | | | ▲ | |
伊勢中川駅 | | | | | ● | |
山 田 線 |
||||
松阪駅 | | | | | ● | |
伊勢市駅 | ● | ● | ● | |
宇治山田駅 | ● | ● | ● | |
鳥 羽 線 |
||||
五十鈴川駅 | | | | | ● | |
鳥羽駅 | ● | ● | ● | |
志 摩 線 |
||||
志摩磯部駅 | | | ● | ● | |
鵜方駅 | ● | ● | ● | |
賢島駅 | ● | ● | ● |
大阪方面から伊勢志摩への観光客を運ぶ。賢島発着列車のほかに鳥羽発着列車も多数ある。
阪伊甲特急はかつては名阪ノンストップ特急と並ぶ近鉄特急の花形であったが、観光需要の低下に伴い現在では土休日に1.5往復のみの運転にまで縮小(=乙特急と統合)されており、甲特急と同格で停車パターンが少し異なる「しまかぜ」が役割を受け継いでいる。
なお、土休日運転の甲特急のうち、鳥羽行きの下り1本(ビスタEXで運転)は大和八木駅に停車する。このタイプの甲特急は、乙特急が毎時2本から1本に削減したことにより空いたスジを活用したものであり、多客期には同じ停車パターンの臨時甲特急が2往復増発される(午前下り、午後上り)。増発分の甲特急は汎用特急(ビスタEXを含む)が使用されるが、80000系「ひのとり」が使用された実績もある。
路 線 |
停車駅 | しまかぜ | 甲特急 | 乙特急 |
使用車両 | 伊勢志摩ライナー | 伊勢志摩ライナー アーバンライナーnext アーバンライナーplus ビスタEX 汎用特急車 |
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名 古 屋 線 |
近鉄名古屋駅 | ● | ● | ● |
桑名駅 | | | | | ● | |
近鉄四日市駅 | ● | | | ● | |
白子駅 | | | | | ● | |
津駅 | | | ● | ● | |
久居駅 | | | | | ▲ | |
伊勢中川駅 | | | | | ● | |
山 田 線 |
||||
松阪駅 | | | | | ● | |
伊勢市駅 | ● | ● | ● | |
宇治山田駅 | ● | ● | ● | |
鳥 羽 線 |
||||
五十鈴川駅 | | | | | ● | |
鳥羽駅 | ● | ● | ● | |
志 摩 線 |
||||
志摩磯部駅 | | | ● | ● | |
鵜方駅 | ● | ● | ● | |
賢島駅 | ● | ● | ● |
名古屋方面から伊勢志摩への観光客を運ぶ。賢島発着列車のほかに宇治山田発着列車も多数ある(行楽シーズンには鳥羽まで延長運転される)。甲特急と「しまかぜ」の関係は阪伊特急と同様である。
一部の列車はアーバンライナーが使用される。
路 線 |
停車駅 | しまかぜ | 京伊特急 |
使用車両 | 伊勢志摩ライナー ビスタEX 汎用特急車 |
||
京 都 線 |
京都駅 | ● | ● |
近鉄丹波橋駅 | ● | ● | |
高の原駅 | | | ▲ | |
大和西大寺駅 | ● | ● | |
橿 原 線 |
|||
西ノ京駅 | | | ▲ | |
大和八木駅 | ● | ● | |
大 阪 線 |
|||
榛原駅 | | | ▲ | |
名張駅 | | | ● | |
榊原温泉口駅 | | | ▲ | |
伊勢中川駅 | | | ● | |
山 田 線 |
|||
松阪駅 | | | ● | |
伊勢市駅 | ● | ● | |
宇治山田駅 | ● | ● | |
鳥 羽 線 |
|||
五十鈴川駅 | | | ● | |
鳥羽駅 | ● | ● | |
志 摩 線 |
|||
志摩磯部駅 | | | ● | |
鵜方駅 | ● | ● | |
賢島駅 | ● | ● |
京都方面、また北陸本線経由で北陸方面から伊勢志摩への観光客を運ぶ。京都~賢島間195.2kmを下り最速2時間45分で結ぶ、私鉄特急最長の運用である。かつては大和八木駅~松阪間無停車で、甲特急と乙特急の中間的な性格の特急列車として毎時1本運転されていたが、利用低迷に伴い運転本数が年々減少している。
路 線 |
停車駅 | 京奈特急 | 京橿特急 |
使用車両 | 伊勢志摩ライナー ビスタEX 汎用特急車 |
ビスタEX 汎用特急車 |
|
京 都 線 |
京都駅 | ● | ● |
近鉄丹波橋駅 | ● | ● | |
高の原駅 | ▲ | ▲ | |
大和西大寺駅 | ● | ● | |
奈 良 線 |
|||
近鉄奈良駅 | ● | ‖ | |
橿 原 線 |
西ノ京駅 | ▲ | |
大和八木駅 | ● | ||
橿原神宮前駅 | ● |
かつては大和西大寺始発・終着や京都~大和西大寺間で併結して走行する列車も存在した。また、一部の京奈特急には京伊特急の間合いとして伊勢志摩ライナーが使用される。
京橿特急はフリーゲージトレイン開発後吉野線に乗り入れる計画があったが、2022年時点では事実上白紙化されている模様。
路 線 |
停車駅 | 阪奈特急 |
使用車両 | ひのとり アーバンライナーnext アーバンライナーplus 伊勢志摩ライナー ビスタEX 汎用特急車 |
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難 波 線 |
大阪難波駅 | ● |
大阪上本町駅 | ● | |
大 阪 線 |
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鶴橋駅 | ● | |
奈 良 線 |
生駒駅 | ● |
学園前駅 | ● | |
大和西大寺駅 | ● | |
近鉄奈良駅 | ● |
大阪難波~近鉄奈良間32.8kmは近鉄特急でも短距離の部類に入る。停車駅も快速急行から新大宮駅と近鉄日本橋駅の2駅を除外したのみで所要時間の面でも殆ど変わりがない。平日の運行は朝夕のみであるため、JRにおけるホームライナー的な側面が強いとされている。土休日は昼間の運行もある。
名阪特急・阪伊特急の西大寺検車区への出入庫を兼ねることもあるため、朝夕はひのとり・アーバンライナー・伊勢志摩ライナーも運用に入る。
路 線 |
停車駅 | 16200系「青の交響曲」 | 吉野特急 |
使用車両 | 26000系「さくらライナー」 16600系「Ace」 16400系「ACE」 16010系 16000系 |
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南 大 阪 線 |
大阪阿部野橋駅 | ● | ● |
古市駅 | | | ▲ | |
尺土駅 | ● | ● | |
高田市駅 | ● | ● | |
橿原神宮前駅 | ● | ● | |
吉 野 線 |
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飛鳥駅 | ● | ● | |
壺阪山駅 | ● | ● | |
吉野口駅 | ● | ● | |
福神駅 | ● | ● | |
下市口駅 | ● | ● | |
六田駅 | ● | ● | |
大和上市駅 | ● | ● | |
吉野神宮駅 | ● | ● | |
吉野駅 | ● | ● |
他の路線が標準軌(軌間1435mm)なのに対し狭軌(軌間1067mm)であり、運行上独立している南大阪・吉野線の特急。大阪方面から橿原神宮・飛鳥京・吉野神宮など沿線への観光客や、沿線からの通勤客を運ぶ。吉野線内での停車駅の多さや、運転距離の割に所要時間が長くかかること等を考慮して、特急料金は全区間520円(2015年3月以前は500円)の均一料金とされている(均一料金となったのは尺土駅・福神駅・六田駅に追加停車することとなった1999年からで、それ以前は40km以上の乗車の場合870円の特急料金がかかっていた。)。
2019年5月14日のグループ経営計画で新たに立ち上がった特急。2025年の大阪万博開催決定を受け、けいはんな線が乗り入れているOsaka Metro中央線が会場予定地である夢洲までの延伸が決まったため、近鉄が新たに導入を検討していた。その後、コロナ禍の影響で万博開催時の乗り入れは見送られたものの、夢洲に統合型リゾート(IR)を誘致していることから引き続き開発は進められている。
近鉄奈良駅や伊勢志摩方面~Osaka Metro夢洲駅を結ぶ予定。実現すれば他社への乗り入れ特急の2例目となる(他社乗り入れは臨時列車ではあるが阪神の神戸三宮駅~賢島駅が初で、三宮の向こうである山陽方面も検討中)。計画の実現のためには両社の規格に適合する新車両の製造と、中央線での優等列車の扱いなどOsaka Metroとの様々な調整が必要になる。既に車両開発には着手しているという。2022年5月には可動式第三軌条用集電装置の試作品が完成したことが発表された。
2019年春の時点で夢洲への鉄道乗り入れが決まっているのはOsaka Metro中央線のみであり、競合が予想されているJR桜島線は現行の桜島駅までで延伸せず、京阪中之島線は中之島駅から九条駅(Osaka Metro中央線・阪神なんば線)の接続計画までのため鉄道面では競合がいない。
阪神なんば線開業時から山陽電鉄の姫路もしくは網干まで乗り入れる計画があるが、阪神電鉄や山陽電鉄からダイヤが不均衡になったり、需要が見通せない、特急料金の導入方法等の理由で、計画は凍結中である。
但し、2014年からは団体臨時列車でかつ22600系の一部編成での限定運用ながら阪神本線の甲子園駅や神戸三宮駅まで運行されることが稀にある。
近鉄特急は他社の特急とは異なり、全列車が指定席でかつ専用の車両を使用する。このため、間合い運用で料金不要の普通列車等として運用されることはない。
また、標準軌の汎用特急用車両は全ての特急運用路線で使用されるが、それ以外の車両(80000系(ひのとり)、50000系(しまかぜ)、21020系(アーバンライナーnext)、21000系(アーバンライナーplus)、23000系(伊勢志摩ライナー))は基本的に運用は固定されている。
狭軌の場合、さくらライナーこと26000系と16200系が固定運用に該当する。
この為、同じ汎用特急車両でも格差があることが問題とされている。編成美が乱れても気にしない
→KTクオリティ
団体専用車両は厳密には特急料金不要であるが、改造した車両や特急に併結されることも多いためここに記載。
1961年、「近鉄特急」(俗に「近鉄のうた」と呼ばれる)というコマーシャルソングが制作された(作詞・作曲:三木鶏郎、歌:楠トシエ)。
掲示板
43 ななしのよっしん
2021/03/08(月) 18:38:52 ID: uz+s34YkGS
名阪汎用運用が無くなった以上は営業での送り込みが事実上できなくなっちゃったからね
無闇に中川以南で方転させるわけにもいかないし
44 ななしのよっしん
2022/04/29(金) 18:13:18 ID: qQPUNgDsi2
12200系12254編成改造の
特急あをによし19200系が運行開始しましたね
特急あをによしは 大阪難波~近鉄奈良~京都を結ぶ観光特急です。 事実上近鉄奈良は経由とは言え阪京特急が復活しました。
45 ななしのよっしん
2022/05/23(月) 15:08:41 ID: KOKjT5Yz4j
近鉄夢洲乗り入れちゃんと進めてたんだなあ
https://
急上昇ワード改
最終更新:2023/09/25(月) 10:00
最終更新:2023/09/25(月) 10:00
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