返品とは、小売業者並びにメーカー、卸業者に購入した / 仕入れた商品を返すこと。
本記事においては法人間取引については扱わず、個人が店舗に購入商品を返品するという場面を取り上げ、返品について解説していく。
ここでは実店舗、すなわちスーパーマーケットやコンビニエンスストア、家電量販店、百貨店・デパートメントストア、ディスカウントストア、ドラッグストアその他の「お店」で買った商品を返品するといった場面を見ていきたい。
客は、様々な理由で商品を返品したいと考える。「買ったけど使わなかった」「家族、同居人が同じものを持っていた」「考え直していらないと思った」「他店のほうが安かった」などである。――しかし、実際のところこのような理由に対して店舗は応じる義務は法律上存在していない。そもそも買い物というものは、『売買契約』を店舗が客と締結し、その契約に基づいて店舗は金銭を受領し、客は商品を得るというものである。契約行為はその契約に法律上の取消要因がない限り必ず履行されなければならず、客側の一方的な理由 (『客の自己都合返品』) で契約を取り消すことはできない。そのため、商品に問題がない場合、店舗側もその商品の返品について合意しなければ契約を取り消すことは不可能である。自治体でもこのように解説している。
消費者が、買った後で「やめたい」と思っても、商品が不良品であったり、別の商品を渡された等の場合を除き、店には返品・交換に応じる義務はありません。店によっては、レシートを持参し、一定期間内であれば返品・交換に応じてくれる場合がありますが、それはあくまでもその店のサービスです。
店で買った商品を返品したい | 柏市役所より,2023/02/01閲覧
つまり、商品に問題がないのにも関わらず返品したいと要求し、それが断られたからと言って文句を言う筋合いは客にはない。むしろ、そういった返品を受け付けてくれる店舗に対しては、その厚意を素直に感謝しなければならないのである。
さて、上記は自己都合返品の場合であるが、今度は、「買った商品が壊れていた」「購入した商品とは別の商品を渡された」「販売時の説明に虚偽があった」などのケースである。
まず買った商品が壊れていたケース。本来最初に購入者に生じる権利は商品の修補か、商品の交換を求める権利 (追完請求権) である (民法562条) 。つまり、最初は「交換するか無料で直せ」である。店舗が交換にも修理にも応じなかった場合にはじめて契約解除、すなわち返品が認められる。とはいえ、この場合、店舗側も返品に応じてくれるケースは多い (不良品でしたとメーカーに返せばいいからであろう) 。ただし、店舗側が販売時に不良対応について条件をつけているケースもあるので、販売時の説明もよく確認しておこう。また、瑕疵担保責任に対する請求期間は1年以内と定められている。
次に、購入した商品とは違う商品を渡されたケース、あるいは販売時の説明に虚偽があったケースについてである。これは契約不履行なので、返品が認められる (消費者契約法第4条) 。
――ただし、上記いずれの場合にも必ず必要となるあるものがある。それはなにか?そう、レシートである。
レシートとは何なのか。これは民法486条第1項「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。」にもとづいて発行される受取証書である。この受取証書の発行を販売者が拒否しただけで契約を取消要求できるくらいに重要なものである。より平易に言えば契約を締結した証明であるため、これがない状態で返品してくれといっても店舗は応じる義務はない。仮に買った商品が壊れていた、販売時の説明に虚偽があったといった場合であってもである。
また、仮に欠陥による返品を行なう場合であっても、「当該店舗で購入したこと」は購入者側で立証する必要があります。
したがって、レシートがない場合に、返品に応じる義務はありません。
弁護士Q&A │レシート無しの商品返品について │ LEGALUS(リーガラス)より,2023/02/01閲覧
レシートがないということは、その人物が本当に当該店舗にて購入した証明を示せないということである。それこそ、「レシートがないということは、当店で買っていないにも関わらず、金品を当店から騙し取ろうとしているのではないか」ということになるので、店舗側もまず応じてくれない。たまに応じてくれるケースはあるが、それが故に実際にそういうことをした悪質クレーマーにより金品を詐取されてしまったケースもある (参考) 。
ちなみに、レシートなしで返品をする事業者もあるが、この場合代わりに購入時に通したポイントカードの提示を求められることが多い。つまり、どこまでいっても購入者が購入者であることを証明する義務があるのだ。
ここまで読んできた読者の中には、こう思った方もおられよう。「クーリングオフは認められないのか?」と。消費者が契約を申し込んだり、締結したりした場合であっても、その申込みの撤回や契約の解除を行える制度であり、上記の通り契約が絶対に守られなければならないという原理原則を常に適用すると、売り逃げが成立してしまうため、消費者保護の観点から産まれたものこそがクーリングオフ制度である。
しかしこれは「消費者が十分に考える期間を設けられていない」「冷静に考えられない」「モノやその商品仕様を十分に見ることができない」場合を想定し、「特定の商取引類型」に適用されるものである。何が言いたいか。
もちろんキャッチセールスで店舗に連れ込まれた、などの場合であれば適用もされようが、普通の店舗は入って何も買わなかったとしても、それを店舗が咎めることはない。消費者も考える時間を設けられている。そのため、クーリングオフ制度は適用されない。同等のサービスを店舗側が厚意でやってくれるケースはあるが、当たり前ではないことを肝に銘じてほしい。
ということで、ここまでの結論。
客の自己都合返品と、レシートなしの返品に応じる義務はない。
自己都合返品を受け付けてくれた店舗には感謝をしよう。あと、レシートはきちんと保管しよう。
通信販売とは、QVCジャパンやジャパネットたかたなどのテレビショッピング、ディノスやニッセンのカタログ販売、Amazonや楽天市場などのEC販売等が挙げられる。
通信販売における返品も、やはりクーリングオフ制度は適用されない。代わりに、各店舗が設けている返品特約に基づいて返品が可能となる。返品特約が表示されていない場合は特定商取引法15条の3の条文に基づいて8日以内であれば売買契約を解除、すなわち返品が認められる。ただし送料等返品にかかる費用は消費者負担となる。これは法定返品権と呼ばれており、クーリングオフ制度と違って「返品特約を表示していればそちらを優先する」ということになっている。
アメリカではレシートさえ残していれば、基本的に返品が認められるらしく、使用していようが返品するといったことが日常だという。プレゼントを渡す際にはレシートごと渡すのも当たり前。もらった人が気に入らなければ返品するのだ。
当然そのために事業者は販売不能商品 (開封された電化製品、着られた服、かじりかけのハンバーガー、枯れたクリスマスツリー) を抱えるリスクがあり、それに伴う送料等も事業者が負担することが当たり前になっているという。当然詐欺も横行しており (新品を買ったらその箱に古い商品を入れ、レシートを持っていって返品等) 、またその処分で廃棄物を大量に出してしまうこともあり、警鐘を鳴らす人もいるようであるが――それでも返品請負サービスなんてものが事業として成立するくらいには過剰な返品はなくならないようだ。
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最終更新:2024/10/16(水) 03:00
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