逆噴射(Retrograde rocket)または逆推力(Thrust reversal)とは、推力装置を逆向きにして、速度や方向を制御すること。
「進行方向と逆向きに噴射する」という文字通りの意味で使われるのは、これぐらい。
宇宙船には姿勢制御用のロケットエンジンが搭載されており、これを進行方向と逆向きに操作することで減速をする。大気圏突入の際、逆噴射をかけることで第一宇宙速度を下回らせ、地上に落下させる。
英語ではretrograde rocket、略してretrorocketという。この語はジェットエンジンには用いられない。retroとは「逆方向に向かって」を意味する接頭辞であり、「懐古調の」という意味はretrospectiveの略である。
月着陸船などは、着陸の際に地面に向かってロケットを噴射し、落下速度を緩めるが、これは「逆噴射」ではなく「下降推進(Descent propulsion system)」と呼ぶ。
ジェットエンジンは、周りの「殻」のような部分が一部パカッと開くようになっており、これが後ろへ蓋をすると共に、空気の流れを斜め前方に変えることで減速をする。この機構を「スラストリバーサー」という。
この機構は強烈な制動力がかかるため、よほど特殊な事情がない限りは着陸後にしか使わない。飛行時に減速をしたければ、翼の一部を下向きにすることで揚力を下げる「リフトスポイラー」という装置が使われる。
ジェットエンジンは、前の空気を後ろに流しているのであって「噴射」をしているのではない。したがって現在では公式には「逆推力(装置)」と呼ぶ。
プロペラ機では、ピッチ角を逆向きにして逆推力をかける。これを「逆噴射」ということは素人目にもないだろう。
日本航空350便墜落事故では、精神分裂病(現統合失調症)と診断されていた機長が、着陸前にスラストリバーサーを作動させるという異常行動を取ったことにより海上に墜落した。
当時は統合失調症ほか精神疾患に対する理解が薄かったこともあり、「精神障害」「精神錯乱」といった意味で「逆噴射」が使われることになった。詳しくは当該事故の記事を参照。
当該事故の記憶が薄れてからは、精神疾患に対する理解やケアが浸透するようになり、このような疾患を揶揄すること自体がはばかられるようになったこと、はばからない者の間でも「精神疾患」「異常行動」の隠語には別の言葉があてがわれることが多くなったことにより、現在では死語と化している。
競馬における「逆噴射」は、現在下記「競技」の項の意味で使われるが、上記事故と同年に行われたスプリングステークスにおいては、サルノキングと田原成貴騎手をめぐる疑惑において「田原の逆噴射」の語が使われた。
サルノキングが(関東の競馬ファンからすると)不可解な後方待機策をとったことを八百長と疑われたことによるものであるが、のちにレース中重度の骨折をしたことが判明し、次第に沈静化した。
レースにおいて、逃げ/先行を打っていた者が失速すること。レースに限らず、首位となっていたチームが連敗して下位に転落することも指す。
上記の「逆噴射」の意味が死語となり、90年代に伝説の大逃げ馬・ツインターボが登場したことにより一般的となった用法。
古馬になってからのツインターボはレース前半でペース配分を無視した大逃げを打ち、第4コーナーではスタミナ切れで下位に沈んで惨敗するのが定番となっていたことから、その名前と相まって「逆噴射」という通称が浸透した。
ただし、「ツインターボ」とは「圧縮空気をエンジンに送り込む装置(ターボチャージャー、詳しくはリンク先参照)」であって、逆噴射するものは何もない。
レースにおける失速の原因は様々だが、この語は原因が明らかにスタミナ切れや戦意喪失の場合に使われる。怪我や病気の疑いがある場合、命に関わることもあるので揶揄している場合ではない。
同じくスタミナ切れの概念がある競輪でも使われる用法。競艇やオートレースには存在しない概念のはずだが、検索してみると「操縦ミスで下位に転落」「1番人気なのに惨敗した」「期待して買ったのにはずした」など「負けた」の誇張表現でちらほら使われている。
野球などプロリーグでは、当初首位であったチームが、ある時期を境に連敗して転落するさまを「逆噴射」とする例がある(参考)。
掲示板
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/11(水) 15:00
最終更新:2024/12/11(水) 15:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。