鉱物とは (コウブツとは) [単語記事]

鉱物（こうぶつ、英：Mineral）とは、天然の作用によって生成される結晶質の物質である。
後述する諸定義に即したものであり、岩石の構成要素の最小単位となる。

なお、美しさと耐久性と希少価値という条件を全て高水準で兼ね備える物質は「宝石」として扱われることがあるが、その殆どが地学的には鉱物として分類される物質である。

鉱物の定義

「鉱物」とは、一般的には次の4つの定義にあてはまるものを言う。

天然に生成された無機物質である。
化学組成が一定である。
原子が規則正しく並び、結晶構造を有する。
活動中の生物に含まれるものではない。

しかし、この定義にあてはまらない例外的な鉱物も存在する。いくつかを以下に紹介する。

例外１：常温で液体: ・自然水銀（Hg）：常温では液体(融点-38℃)だが国際鉱物学連合により鉱物と認定されている。; ・氷（H₂O）：氷や雪も実は鉱物(水は氷の相として例外的に扱われることもある)。古い物は「水の化石」などと呼ばれることも。; ・南極石(CaCl₂・6H₂O)：南極で発見された珍しい鉱物。約25℃で液体になる。
例外２：非晶質（結晶構造をもたない）鉱物: ・オパール（SiO₂・nH₂O）：低温で生成されたため非晶質だが、鉱物と認定されている。; ・ネオトス石(Mn,Fe)SiO_３・H₂O：変成マンガン鉱床に広く生じるビール瓶様の外観の鉱物。
例外３：有機鉱物: ・カルパチア石（C₂₄H₁₂）：珍しい炭化水素鉱物。; なお、琥珀、石油、石炭は国際的には鉱物と認められていない。

鉱物のできかた

大別すると、以下の三つの生成過程が主である。

液体や気体の結晶化	例：マグマが冷えて固まる。　　火山から噴出した気体が地表付近で急冷され結晶化　　鉱物の成分を含んだ熱水が地層の割れ目を通過する際に結晶化
固体の変成・再結晶	地殻変動によって既存の岩石の温度・圧力条件が変化することにより、岩石中の化学物質が再編成されて新しい鉱物を生成する。また、一度生成した鉱物がその後の条件の変化によって別種の鉱物へと変化する。
生物による生成	例：廃棄物や死骸が沈殿したものから生成する石灰岩やリン鉱石、鉄鉱床。 ※『生物活動に関わず生成する』という原則があるため、厳密にはグレーゾーンとなる事例もある。これについては、生体から『直接』生成されたもの(骨や歯、真珠など)は鉱物として認めず、間接的に生じたもの(コウモリの糞から生じたグアノなど)は認める傾向にある。

化学組成による鉱物の分類

元素鉱物	単一の元素からなる鉱物	自然金、自然銀、自然銅、ダイヤモンドなど
硫化鉱物	金属元素が硫黄と結びついた鉱物	黄鉄鉱(パイライト)、黄銅鉱、方鉛鉱など
ハロゲン鉱物	フッ素や塩素などのハロゲン元素を含む鉱物	蛍石(フローライト)、岩塩など
酸化鉱物	元素が酸素または水酸基（OH^-）と結びついた鉱物	石英、オパール、磁鉄鉱、コランダムなど
炭酸塩鉱物	炭酸（CO₃^2-）と結びついて塩基を作る鉱物	方解石、菱マンガン鉱、孔雀石(マラカイト)など
珪酸塩鉱物	酸素とケイ素による四面体で、さらに他の元素と結びついた鉱物。鉱物の約40%を占める。	雲母、長石、かんらん石(オリビン)ザクロ石(ガーネット)、トルコ石、緑柱石(ベリル)など
その他	硫酸塩鉱物、燐酸塩鉱物、ホウ酸塩鉱物、硝酸塩鉱物、重金属酸塩鉱物　など

新鉱物・日本産新鉱物

鉱物の中で、近年発見された新種の鉱物を「新鉱物」と呼ぶ。近年の基準が人それぞれなため、なにを新鉱物とするかは意見が分かれる。

しかし、日本で単に「新鉱物」と言えば、それは日本で発見された新種、「日本産新鉱物」を指す場合が多い。日本で発見され、それが未知の鉱物種と認められれば、日本の研究者が好きな名前をつけられる。命名規則に従い、機械的に名前をつけられる鉱物もあるが、日本人の鉱物の研究者の名前(ただし、その鉱物の発見に関わった人は付けることが出来ない)か、発見された産地の名前(大抵は鉱山名)を付ける。日本での新種であること、日本に因んだ名前であることから、総じて人気が高いことが多い。なお、「日本新産鉱物」と言えば、単に日本で始めて発見された鉱物種というだけで、世界のどこかですでに見つかった鉱物種である、つまり新種ではないことに注意。

ニコニコ大百科に記事がある鉱物・宝石の一覧

石綿（アスベスト）
雲母（マイカ）
黒耀石(オブシディアン)
コランダム（鋼玉）
- サファイア（蒼玉、青玉）
- ルビー（紅玉）
石英（クォーツ）
- 玉髄(カルセドニー)
  - 瑪瑙(アゲート)
    - オニキス(縞瑪瑙、黒瑪瑙)
- 水晶（クォーツ、クリスタル）
ダイヤモンド（金剛石）
トパーズ（黄玉）
パイライト（黄鉄鉱）
豚肉石（方解石）
ヘマタイト（赤鉄鉱）
ベリル（緑柱石）
- アクアマリン（藍玉）
- エメラルド（翠玉、緑玉）

曖昧さ回避のみ、もしくは別の意味が主体の項目

アパタイト(燐灰石)
アメジスト(紫水晶)
自然白金(プラチナ)
ガーネット（柘榴石）
カーネリアン（紅玉随）
翡翠（ジェード、ジェイド、硬玉）
フォスフォフィライト（燐葉石）
フリント(燧石、火打石)
ムーンストーン(月長石)
ラピスラズリ（瑠璃、青金石）
ルチル（金紅石）

鉱物に分類されるかはグレーゾーンまたは明白に鉱物では無いものだが、自然物であり宝石として有名なもの

琥珀（アンバー）
珊瑚（コーラル）
- 黒珊瑚
真珠（パール）

鉱物の命名法

古代につけられた鉱物の名前の由来は知る由もないが、近年発見された鉱物は、人名や地名に因むものが多い。ただし、鉱物の発見者の名前は原則付けないことになっている。

また、化学組成に因むものも多く、特に元素の置き換えで別種の鉱物が多種多様に発生する珪酸塩鉱物ではこの傾向が強い。

角閃石、沸石など、特定のサブグループを持つ鉱物は、これらの共通性を強調するために、常に付けられることが多い。例：普通角閃石と苦土リーベック閃石、菱沸石と束沸石など。

鉱石との違い

鉱物は一般に「鉱石」と混同されがちだが、全くの別物である。

鉱石とは、資源的価値がある鉱物や岩石につけられた名前であり、学術的な分類ではない。資源的に価値があるのは、目的とする元素が濃縮され多く含まれている、元素を取り出す手間がより少ない、などの条件があるが、鉱石によってそれは若干変わる。少なくとも、見栄えのする鉱石はあまりないので、綺麗なものを中心に収集している人が「鉱石マニア」を自称したら、「モンスターハンターをやってるのに、ポケモンマスターを自称する」のと同じぐらいの間違いである。