鏡音リン・レンAppendとは (カガミネリンレンアペンドとは) [単語記事]

『鏡音リン・レンAppend』（－アペンド）とは、DTM音源メーカーのクリプトン・フューチャーメディアによって開発・販売されている歌声合成ソフトウェア「鏡音リン・レン」の拡張音声ライブラリである。2010年 12月27日、鏡音誕生祭2010に合わせて発売となった。

概要

2010年 12月27日に発売の鏡音リン・レンの追加ライブラリで、使用するには『鏡音リン・レン act2』が正常にインストールされているPCが必要。このため、ACT1のみ使用している場合はACT2を別途追加する必要がある。

このアペンドを追加する事で表現の幅が広がり、今まで以上にリン・レンで多彩な表現が可能となる。また、これまで鏡音の弱点と言われてきた滑舌が大きく改善されている。加えて鏡音レンAppendでは、苦手とされてきた低音域の強化が目立っている。

12月10日には公式サイト等にてキャラクターイラストが公開された。なお、イラストの詳細については、12月10日発売のQua rterly pixiv vol.03に詳しい。

なお、週刊アスキーでも取り上げられておりF岡総編集長によるwatさん(開発担当の佐々木渉氏)へのインタビュー記事が12月28日号に掲載されている。また、下田麻美インタビュー記事も2011年 1月18日号に掲載されている（参考リンク）。

11月26日にオープンした公式サイトでは、書き下ろしのデモ曲のほか、iroha(sasaki)、悪ノP、オワタP、のりP、トラボルタP、Dios/シグナルP、れれれP、一行P、ゆにめもP、DATEKEN、囚人P、AVTechNO!、mayuko、ライブP、ウタP、ジェバンニP、右近（ミク詐欺P）、ぺぺろんP、Kouhei、ひなた春花、polyphonicbranch、キャプミラP、西沢さんPによるリン・レンのヒット曲によるショートデモがこれでもかとアップされており、ニコニコ動画にも転載されている。なお、これらのサンプルは、基本的には最適化・再調整は行われていない（公式Twitter）。

ピアプロでは鏡音レンAppendの公式デモソングが募集されていた。募集期間は2011年 1月31日 17時までで発表は4月26日。採用者には「KAITO・アペンド」への開発参加（任意）と製品版が提供されている。

収録されるライブラリ

同年4月30日発売の初音ミクAppendでは6種類のライブラリであったが、リン・レンの場合は名称が共通のpowerを含めそれぞれ3種類の計6種類となっている。リンpower / レンpowerがact1・act2からの色づけが比較的少ない声質であるのに対し、やわらかい発声などが特長のリンwarm / レンcold、ウィスパーボイスが特長のリンsweet / レンseriousは、色付けの強いアペンド的なライブラリである。公式サイトで示されている各ライブラリのスペックは以下の通りだが、音域については特にレンが低めの記載となっているものの、実際にはずっと広い音域を歌うことができる。

	ライブラリ	得意ジャンル	得意な曲のテンポ	得意な音域
RIN	power	ロック系全般、ポップス、ダンス、演歌	65～170 BPM	F3～B4
	warm	ソフトロック、バラード、ポップス、フォーク	60～160 BPM	F3～B4
	sweet	ボサノバ、フレンチポップ、アンビエント、エレクトロニカ	55～155 BPM	G3～C5
LEN	power	ロック系全般、ポップス、ダンス、演歌	65～170 BPM	A2～D4
	cold	ソフトロック、ポップス、フォーク、バラード	60～160 BPM	B2～C4
	serious	ポストロック、サイケ、アンビエント～ダブ、エレクトロニカ	55～155 BPM	A2～C4

リンpower

公式サイトによると、”強い意志を感じさせる純粋な力強さ、激しく燃える少女声”と説明されている。従来のリンの声質からの色づけは少ないバージョンだが、初音ミクAppend sol idの開発などを通じて発声の力強さと滑舌を両立させる技術が培われ、act1、act2のリンよりも明瞭で良滑舌の発声を実現している。

デモ等

2010年 8月20日に公式Twitterを通じてβ版音声が初めて公開された（sm11820685）。また、β版でのオリジナル曲として、11月20日投稿のそそそPによる”AGAIN”などが評価を得ている。

製品版については、公式サイトにて、デモソングの"スタートライン"（by KulfiQ）のほか、Transmit、Seeker、レンラクマダー？、ハローノストラ、迷子ライフ、悪ノ娘、わすれんぼうなどによるショートデモが公開されており、原曲との聴き比べをすることができる。

リンwarm

公式サイトでは、”微熱を帯びた声色で、温かいぬくもりを感じる少女声”と説明されている。柔らかいなかにもリンの特色を失わない明るい声色や、くもった感じの温かみのある声質などに特長がある。

デモ

2010年 10月29日には公式ブログにてβ版によるサンプル曲が公開され、ニコニコ動画でも好評を得た（sm12586005）。

製品版は、公式サイトのデモソング"Supersensitive"（by Wonderlandica）で聴くことができる。また、よつばのクローバーのショートデモでは、リン sweetとともに使われているが、２つのライブラリが合わさって曲調によく合った声となっている。

リンsweet

”優しげな吐息が鼓膜をなでる、甘いウィスパーボイス（♀）”と説明されるライブラリである。開発者は、同じウィスパーボイス系であるミクsweetよりも温度と湿度が高い雰囲気をもつ、と語っている。

デモ

2010年 8月27日には、公式 Twitter・公式ブログよりα版試験音声が公開された（sm11902269）。10月22日にはβ版デモ曲が公開され、ニコニコ動画でも好評であった。

製品版の公式デモでは、"人魚姫"(by めざめP）で聴くことができる。

レンpower

”中低音の存在感、ギリッとした高音が象徴的な張り詰めた少年声”と説明されているライブラリである。従来のレンの声質からの色づけは少ないバージョンだが、act1、act2からの課題であった滑舌や安定性、ノイズ低減などの面で大きく進歩があった。難調教とされてきたレンに革命が起きたのである。これまで難調声であった中低音域の進化が目立つ一方、高音域も得意であり、また幼さのある声にも対応できる。明瞭さや重厚感も増した声質となっており、またact1、act2より少し大人になったような印象も与える少年声である。

デモ等

2010年 9月17日に公式ブログにてβ版サンプルが初めて公開され（sm12138590）、引き続き公式ブログを通じて右肩の蝶、soundless voice、悪ノ召使、イケ恋歌によるβ版サンプルなども公開された。ただ、悪ノ召使を聴くとわかるように高音域の声質に難点があったために調整を行うことが発表され、11月1日投稿の”HIT!”ではきれいな高音を聴かせてくれるまでになっている。また、中低音域についても製品版では音質に変化がみられる。

レン powerの製品版デモは上記４曲の製品版を始め公式サイトに数多くあるが、特徴を把握するのであれば、例えば、力強さについては紡唄、声質や滑舌についてはナゾトキ、高音についてはImitatorやサンドスクレイパー、ジェンダーファクターを下げた幼いかんじの声については囚人や君に捧ぐファンタジアのデモを原曲と比較するとわかりやすいかもしれない。