長井道利とは (ナガイミチトシとは) [単語記事]

長井道利（ながい・みちとし　？～ 1571）とは、美濃の戦国武将である。斎藤義龍の叔父にあたる。

概要

斎藤義龍の叔父。つまり斎藤道三の弟…のはず（後述）。

道三国盗りの頃にはまるで登場せず、義龍の代になってから姿を現し、甥と共謀して道三を殺害する事に成功する（長良川の戦い）。その後は義龍と仲違いしたりするも、斎藤龍興の代まで重臣として仕え続けた。

織田信長の侵攻で美濃を失った後は、龍興共々亡命して信長と敵対する道を選ぶが、畿内の戦で討死した。

生涯

道三時代

斎藤道三（長井規秀）の弟にあたるはずだが、道三の活動する時代に長井道利の影は見えない。謎である。この辺は諸説あるので後述。

義龍時代

道三が隠居して、斎藤義龍が跡を継ぐも道三との対立が悪化しつつある状況で、ようやく長井道利は表舞台に登場する。甥にあたる義龍の側につき、道三に寵愛されている弟たちの殺害を提案、両者の決別を決定づける役割を果たす。こうして1556年の長良川の戦いで道三は討取られ、斎藤一門のひとりとして義龍を補佐していく…はずだった。

しかし、義龍に警戒されて遠ざけられたのか、対立したのかは不明だが、道利は一時斎藤家を離れて武田信玄の配下についた。

龍興時代

1561年に義龍が急死した後に斎藤家に帰参したらしく、斎藤龍興の下で家老を務める。もうこの頃には斎藤一門の中でも長老だっただろう。実際影響力も大きく、郡上八幡の遠藤氏の後見役を務めたりしている。

これ以降はひたすら織田信長との戦いに身を投じることになる。思えば道三を排除したのもアンチ信長の考えがあったからなのかもしれない。ともあれ遠藤氏らと協力しながら美濃侵攻軍と戦うも、道三の遺児で織田家臣になっていた斎藤利治に居城を落とされる等、苦汁をなめる。そして1567年、稲葉山城の落城にともない、龍興と共に美濃国外へと逃走した。（この時討死したとの説もあり）

流浪時代

まずは龍興と共に長島一向一揆に参加して、引き続き信長への抵抗を明確にする。やがて畿内へと移り、龍興は本圀寺の変（1569年）に参加して足利義昭暗殺を試みているが、これに道利が参加していたのかは不明。この辺の時期に、越前へ向かった龍興とは別れたようで、信長包囲網を企み始めた足利義昭に仕えることになる。相変わらず打倒信長に燃えていたようだ。

が、和田惟政と荒木村重・中川清秀が争った白井河原の戦いで討死する。義昭らが任命した摂津三守護（和田惟政・池田勝正・伊丹親興）側の援軍として参戦した結果の戦死だった。

最後まで龍興に付き従って、刀根坂の戦いで討死したとの説もある。

出自の謎

先に述べた通り、斎藤義龍の謀反の際に「叔父」という肩書でひょっこり登場する長井道利とは何者なのだろうか。よく述べられる説明は二つある。

文字通り、斎藤道三（長井規秀）の弟だよ
実は道三の若い頃の庶子で、対外的には弟として扱っていたよ

しかし、問題は斎藤道三について「一代説」と「親子二代説」が存在する事（詳しくは道三の項を参照）。一代説の場合の道三の父は京都の北面武士・松浪基宗で、二代説の場合の道三の父は僧侶・商人から土岐家臣に出世した長井新左衛門尉である。

文字通り、斎藤道三（長井規秀）の弟だよ
- 【一代説】松浪基宗の子で、京都から道三についてきたよ（あるいは後から参上したよ）
- 【二代説】長井新左衛門尉の子で、普通に美濃で生まれたよ
実は道三の若い頃の庶子で、対外的には弟として扱っていたよ
- 【一代説】道三が京都で商人やってた頃の隠し子だよ
- 【二代説】何らかの事情で新左衛門尉の子ということにしたよ

…どちらかといえば「弟である」は二代説の方で、「庶子である」は一代説の方で説得力がある気がする。というか二代説で庶子説を取ると、新左衛門尉自身のスキャンダルになりかねないのだが、どうやって誤魔化したのだろう。なお新左衛門尉の没年は1530年頃なので、もしも晩年の子だったとすれば国盗りに参加していないのも納得できる（かも）。この場合、義龍とほぼ同年代という事になるので、ちょっと想像図が変わりそうである。

更に更にややこしいのが、家系図上では長井道利が本来の斎藤家・長井家の子息として書かれている事である。長井家は斎藤家の分家で、これに道三父子が仕官→長井の名字を許される→長井家乗っ取り→斎藤家乗っ取り、というのが国盗りの流れ。その経緯で系図が書き換えられたのかもしれないが、解釈によっては道利は本来の斎藤（長井）家の人間で、家を乗っ取った道三とは義兄弟と考える事も出来る（となれば道三殺害を企んだのも納得ではあるが）。