関税 単語


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関税tariff)とは、税金の一種である。

概要

2つの形態

物品の輸入時に課される輸入関税と、物品の輸出時に課される輸出関税があるが、輸入関税のほうが一般的である。(以下、単に「関税」と書く場合は輸入関税のことをす。)

輸入関税

輸入業者が外から物品を輸入する際に、輸入政府輸入業者に対して物品の金額または重量に応じて課税する税金輸入関税である。例えば、米国産の農産物や機械類を日本輸入しようとする場合、所定の法令に基づいて日本輸入業者は日本政府に必要な関税を納めなければならない。

輸入業者は輸入関税を自分で負担するか内購入者か輸出業者のいずれかに転するかを選ぶことができる。このことについて本記事の『輸入関税と負担』の項で詳しく述べる。

発展途上国の中には関税を政府の収入として重視している所がある。一方、日本を含む先進国は他の税収が大きいため関税を政府の収入という的よりも内産業の保護といった的で多用している。

日本の場合、戦後の高度経済成長期にどんどん関税を下げていったため、2025年現在の関税率は世界的に見ても低い部類に入っている。その点、一部の農産物に対する関税率が高いことで知られている。

関税が低率なら関税を政府の収入にしやすい。しかし、関税が高率になるにつれて輸入量が減り、関税を政府の収入にすることが難しくなる。

また、関税が低率なら関税で内産業を保護することが難しい。しかし、関税が高率になるにつれて輸入量が減り、関税で内産業を保護しやすくなる。

海外企業内に誘致して内産業を強化することを狙って高い関税を課す場合もあるし、軍事的・外交的に敵対する輸出に打撃を与えて屈させることを狙って高い関税を課す場合もある。だが、各が関税を高くすると、貿易が停滞してしまい、ひいては世界全体の実質GDPの成長が阻されてしまう。

輸出関税

輸出業者が外へ物品を輸出する際に、輸出政府輸出業者に対して物品の金額または重量に応じて課税する税金輸出関税である。

日本ではど用いられていないが、資や農産物を輸出しているでは活用されることが多い。自の資秩序に輸出されてしまうと、計画的な資活用困難になるからである。また、自の農産物が際限なく輸出されてしまうと、自民が食べる分すらなくなってしまうからである。

日本のように、資や農産物を輸入している側からすると、輸出関税は迷惑以外の何物でもない。とはいえ、WTOなどによる規制があるわけではなく、輸出側と交渉するくらいしか手立てがないのが現状である。

国の主権としての関税自主権

関税は税の一種であり、その税率を決めるのは独立にとって権の行使に当たる。逆にいえば、植民地とか従属などの非独立は自の関税率を自由に設定できない場合が多い。

例えば、宗Aが植民地Bに対して「綿織物の原材料である綿の分野において、宗Aへの輸出関税をゼロにして、宗A以外の全てのへの輸出関税を200にせよ」とか「綿織物の分野において、宗Aからの輸入関税をゼロにして、宗A以外の全てのからの輸入関税を200にせよ」と命じ、植民地輸出輸入を支配し、植民地原材料の供給地と完成品の市場に仕立て上げることがある。こうしたことは19世紀や20世紀前半の帝国義の時代において世界各地で行われた。

日本の場合、江戸時代末期1858年に結んだ日通商修好条約によって関税自権の放棄を強いられたことが知られている。これは、治外法権(領事裁判権)の附与と並んで、こうした条約が不条約であったことの左とされている。明治政府は関税自権の回復のために努力を重ね、日露戦争勝利した後の1911年に関税自権を回復した。

日本における法律

日本の関税について、関税法(昭和29年法律第61号)、関税定率法(明治43年法律第54号)および関税暫定措置法(昭和35年法律第36号)の規定が適用される。

輸入関税と負担

三通りの負担

政府輸入業者に対して輸入関税を課すと、その輸入業者は租税の負担について、①自らが負担するか、②輸入業者から物品を購入する内消費者に転するか、③物品を輸出する輸出業者に転するか、のどれかを選ぶ。

①は輸入業者の租税負担という費用が増え、利益が減る。

②は輸入業者の租税負担という費用が増えるが売上という収益が増え、利益が一定に保たれる。

③は輸入業者の租税負担という費用が増えるが仕入という費用が減り、利益が一定に保たれる。

例と計算

輸入関税の負担については例を挙げると分かりやすい。

日本から物品を輸入するアメリカ合衆国輸入業者がいて、70ドル輸入して100ドルで消費者に販売して30ドルの利益を得ていたとする。そこにアメリカ合衆国政府が10輸入関税を課した。この場合の輸入業者は輸入関税の負担に関して3通りの選択肢がある。

  1. 輸入関税の負担を輸入業者が全て受け入れる。今まで通りに70ドル輸入して100ドル内消費者に販売し、7ドルの関税をアメリカ合衆国政府に払って利益を30ドルから23ドルに減らす。
  2. 輸入関税の負担を内消費者に転する。今まで通りに70ドル輸入するが、今までとは異なり107ドル内消費者に販売し、7ドルの関税をアメリカ合衆国政府に払って利益を37ドルから30ドルに減らし、今まで通りに30ドルの利益を確保する。
  3. 輸入関税の負担を輸出業者に転する。今までとは異なり63.60ドル輸入し、今まで通りに100ドル内消費者に販売し、6.36ドルの関税をアメリカ合衆国政府に払って利益を36.40ドルから30.04ドルに減らし、今まで通りに30ドルの利益を確保する。

2.における内消費者向け売価をSとするとき、S-70-70×10×0.01=30の方程式を解けばSの値を得られる。

エクセルなどの表計算ソフトにおいて、B1のセルに従来の輸出企業輸出額、B2のセルに従来の輸入企業の利益、B3のセルに関税()を入れたとき、2.における内消費者向け売価は=B1*(1+B3*0.01)+B2数式で計算できる。

また、3.における輸出企業輸出額をTとするとき、100-T-T×10×0.01=30の方程式を解けばTの値を得られる。

エクセルなどの表計算ソフトにおいて、B1のセルに従来の内消費者向け売価、B2のセルに従来の輸入企業の利益、B3のセルに関税()を入れたとき、3.における輸出企業輸出額は=(B1-B2)/(1+B3*0.01)数式で計算できる。

三通りの負担の選び方

輸入業者は1.だけや2.だけや3.だけを選ぶこともできるが、「1.と2.を半分ずつ選ぶ」とか「1.と2.と3.を少しずつ選ぶ」ということもできる。

輸入関税の対品の市場において輸入品の市場占有率が高いかどうかで、1.や2.を選ぶかそれとも3.を選ぶかが決まる。輸入品の市場占有率が高ければ、輸入業者は輸出企業に対して3.を選択するように迫りにくいので、1.や2.を選択するしかなくなる。輸入品の市場占有率が低ければ、輸入業者は輸出企業に対して3.を選択するように迫りやすいので、1.や2.を選択せずに済む可性が高くなる。

アメリカ合衆国ドナルド・トランプ大統領2025年4月輸入関税を大きく引き上げたが、そのときに「輸入関税は外が支払う」と繰り返し語っていた。つまりトランプ大統領輸入関税の負担のあり方として3.を想定している。しかし現実には輸入関税の負担のあり方として1.や2.がありうる。

租税の性質

1.は直接税で、2.や3.は間接税である。

1.や2.は内の企業計が負担する租税となり、3.は海外企業が負担する租税となる。

1.は企業の費用に応じて企業へ課税するものである。利益とよく似た概念である法人所得に応じて企業へ課税するのが法人税であるが、それとは異なる。

2.は計の費用に応じて計に負担させるものであり、消費税などのような消費課税に近い種類の租税である。低額所得者にとって所得の中の租税負担の割合が大きくて高額所得者にとって所得の中の租税負担の割合が小さいという状況になりやすい租税であり、人頭税のような逆進的な租税とされる。

関税をめぐる歴史と思想

関税同盟と統一国家

近代において、関税は支配者にとって手っ取りい収入として重視されていた。他領とのになっている街道河川に関所を作り、行き来する商人たちから関税を徴収することで税収を上げた。中世記録を読むと、この関税設置の権利が質入りしたり質流れしたりした例も確認できる。

しかし、関税を徴収する関所が多くなればなるほど物の取引が難しくなっていく。近代になって経済発展をすようになると内関税の止が進められるようになった。日本でも、江戸時代にはごとに関所を設けていたが、明治維新によってそのような関所は止された。これは、を大きな経済圏とみなし、その中での物の取引を円滑にすることによって、全体の経済を成長させようという戦略の現れである。

ところで、19世紀前半のドイツにはプロイセン王国やらザクセンやらバイエルンやらの独立国家が多数存在しており、を跨ぐたびに関税を徴収されるという状態にあった。しかし、それらを統一して「ドイツ」というを作りたいと考えていた人たちもいた。そのための有力な手段として考えられたものの一つに関税同盟というものがあった。これは、ドイツ全体を一つの関税圏として統一し、関税圏の内部にある関所を止してしまおうというものであり、これが実現すればドイツ内部の物の取引が容易になり、経済成長が見込まれるというのである。さらに、経済圏が一つになることで一体感が高まり、政治的なドイツ統一が容易になるのではないかという打算もあった。上述のフリードリヒ・リストはこの関税同盟の必要性を説いて回ったことでも知られている。なお、ドイツ関税同盟は1834年に実現し、その37年後の1871年に統一ドイツたるドイツ帝国が誕生した。

関税同盟による域内経済成長と一体感の創出という考え方は、更に大きな規模で活用されることになった。それは20世紀後半の欧州である。フランスドイツといったは、それぞれが独自の関税体系を持っており、例えばフランスの製品をドイツ輸出する場合にはドイツ政府に関税を払わなければならなかった。しかし、独を含む欧州による関税同盟を実現させることで経済成長を図るとともに、独の緊関係を緩和し、共存共栄による一体感を創出したいという考えを持つ政治家たちによって、1958年欧州経済共同体(EEC)が設立された。これは域内の関税同盟化などをすもので、実際に1960年代までに関税同盟が実現した。1967年欧州共同体(EC)に発展し、1993年には欧州連合EUに発展した。

こうした一連の流れは、「関税圏の拡大」として括ることができる。

保護貿易論と自由貿易論

近代に入ると、統一国家を作ってその経済力を向上させようとする意識が欧州の各で高まるようになった。

ドイツアメリカ合衆国において関税は内産業を保護するための手段として認識されるようになった。この点で有名なのは政治経済学者フリードリヒ・リストである。彼は「英国の最先端の工業製品がドイツにどんどん流れ込んでくると、いつまで経ってもドイツの工業は成長できない。一時的に英国の工業製品に高い関税を課すことによって、ドイツの幼稚な工業の内での競争力を高めることが先決である。」という、いわゆる幼稚産業保護論を提唱した。

一方の英国アダム・スミス以来の自由貿易論を世界に訴えていた。特に、同デイビッド・リカードが唱えた較優位説は「お互いに関税を止して自由貿易をして世界際的分業をすると世界全体の実質GDPが増えてお互いが利益を得ることができる」という考え方で、関税のない自由貿易する大きな理論的根拠を与えるものとなった。

19世紀や20世紀の前半においては、かなり大雑把に括ると、保護貿易論の守護者はドイツおよびアメリカ合衆国で、自由貿易論の守護者は英国という構図であった。

世界恐慌とブロック経済

1929年世界恐慌が発生した。そして1930年代世界で関税を引き上げて自とその植民地によるブロック経済を構築することが流行した。アメリカ合衆国などの南北アメリカからなるドルブロックイギリスとその植民地からなるスターリングブロックフランスとその植民地からなるフランブロックが有名である。このときのアメリカ合衆国の関税はスムート=ホーリー法に基づいて課された。

こうしたブロック経済による保護貿易第二次世界大戦の遠因になったとされる。

GATTとWTO

第二次世界大戦後の1948年に「関税及び貿易に関する一般協定(GATT)」が結ばれ、際的に関税を下げていくための組が作られた。1995年にはこれを発展させた世界貿易機関WTO)が新設された。

GATTWHO導したのはであるアメリカ合衆国だった。特にWTOGATTべて自由貿易の程度が大きいので、WTO導した時代のアメリカ合衆国自由貿易導者だったと言える。

GATTないしWTOでは、各の関税率を引き下げるためのラウンドと呼ばれる多間交渉が繰り返されてきた。従来は工業製品の関税交渉が中心だったが、1986年から1994年までかかったウルグアイ・ラウンドでは、農産物などの関税までもが対に加えられた。2001年になってドーハ・ラウンドと呼ばれる多間交渉が開始されたが、さまざまな立場のがさまざまな意見をぶつけ合ったため、もはや交渉を進めることすら困難という状況に陥り、2014年になってやっと妥結するありさまだった。

自由貿易協定

WTOでの多間交渉はあまりに時間が掛かりすぎるので、20世紀の終盤以降になると、WTOほどではないが多数の国家が参加する自由貿易協定が結ばれるようになった。北米3のNAFTA、南米メルコスール、大平洋に面する諸TPP東南アジアと北東アジアRCEP東南アジアのAFTA、南アジアSAFTA、アフリカAfCFTA、大西洋に面する諸TTIPなどである。

さらにはFTA(自由貿易協定)とかEPA(経済連携協定)といった2間の自由貿易協定も結ばれるようになった。ただし2間の自由貿易協定は、経済的な実力の強いが意向を押し通しやすいという欠点がある。

アメリカ合衆国の保護貿易への回帰

2017年ドナルド・トランプアメリカ合衆国大統領に就任すると、同保護貿易へ回帰していった。2018年7月中国に対する関税を一気に引き上げ、2021年に就任したジョー・バイデン大統領もそうした関税を引き継いだ。

2024年アメリカ合衆国大統領選挙において、ドナルド・トランプ補はしばしば「関税は辞書の中で最も美しい言葉だ(Tariff is the most beautiful word in the dictionary.)」と語った(記事exit)。

そして2025年1月に第二次ドナルド・トランプ政権が始まり、4月2日には全てのから輸入される全ての品に10の追加関税を課し、米国の貿易赤字額が大きい・地域に対してさらに追加関税を課すことを発表した。

ドナルド・トランプ大統領による一連の関税引き上げの内容はトランプ関税の記事にまとめられている。

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