集団的自衛権 単語

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集団的自衛権とは、国家を個人としたときの正当防衛権である自衛権の内、同盟関係の他を援助できる権利。

定義

自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利exit

平成16年度版防衛白書資料9

概要

個別的自衛権と集団的自衛権の違い
個別的自衛権 を殴るやつは殴り返すからな」
集団的自衛権 友達を殴るやつは殴り返すからな」

本来自衛権は、「自に対する攻撃に対して反撃をして良い」という、個人における正当防衛権として生まれた(このような個人の防衛権を、現在では個別的自衛権と言う)。これに対し、防衛対となる範囲を同盟に適用したのが集団的自衛権である。

歴史

「集団的自衛権」という考え方は国連の基本条約である国際連合章第51条で初めて登場したもので、それ以前は存在しなかった。そして、それは自然に生まれた概念ではなく、明確な意図をもって「発明」された概念だった。なぜ集団的自衛権という考え方が生まれたのか、その歴史的な背景を以下に説明する。

現代の感覚からすると信じられないことだが、実は「戦争」は20世紀初頭までは違法なものではなく国際法上、合法的に行うことができた(ただしハーグ陸戦条約などの戦時国際法を守る必要はあった。)ところが第1次大戦でのあまりの惨状をの当たりにした社会は、戦争を違法化しようと動き出す。1929年パリ不戦条約(戦争の放棄に関する条約)で戦争が禁止されたのがその始まりである。ただし、当然ながら違法化されたのは侵略戦争のみであり、自衛権は確保された。

  • 行使の禁止と2つの例外

第2次大戦後国連を発足する際にも基本条約の国際連合章で、戦争違法化の流れにより「戦争」(武行使)が禁止され、例外的に「自衛権に基づく武行使」と「安保理による強制措置」の場合のみ武行使が許されることとなった。すなわち、自衛権に基づくとき以外は必ず安保理の許可がなければ武行使してはならないということである。

国連章の下でも、地域的な組での共同防衛は規定されているが、その場合は(自衛権には当たらないので)やはり武行使するには安保理の許可が必要である。

安保理は常任理事国に拒否権が与えられているので、常任理事国による拒否権の濫用によって安保理がまともに動けないということは国連発足当時から既に懸念されていた。(そしてそれは現実のものとなった)

集団的自衛権」の「発明

軍事の弱い小国などは1だけで防衛するよりも同盟を結成して集団で防衛しなければ生き残っていけない。これまで、戦争は合法であったため当然、集団での共同防衛による武行使も可だったが、国連章により武行使が禁止され、共同防衛による武行使には安保理の許可が必要となってしまった。しかも安保理常任理事国には拒否権があり、いざというとき許可してくれる保障もない‥ということで特にラテンアメリカ諸、この問題を解決しなければ国連加盟も辞する雰囲気になっていた。

そこで何とかラテンアメリカを引き止めるために「開発」されたのが集団的自衛権である。国連章において、安保理の許可がなくとも武行使できる一の方法、それは「自衛権」である。「自衛権」ならば安保理の許可は要らない。だったら「集団」による共同防衛も「自衛権」の一種と考えればいいじゃないか!というコペルニクス的転回といっても過言ではない天才的発想である。

国連憲章の関連規定

国連章2条4項)

すべての加盟は、その際関係において、武による威嚇又は武の行使を、いかなるの領土保全又は政治独立に対するものも、また、国際連合的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

⇒これにより武行使が禁止される。

国連章42条)

安全保障理事会は、第41条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍海軍または陸軍行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟空軍海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。

⇒安保理は強制行動において軍事的措置(武行使)をとることもできるとした規定。ここでは国連軍が想定されているが、国連軍を結成するために必要な加盟と安保理の間の特別協定が現在に至るまで193ヵ中1かたりとも締結しておらず、実際には安保理決議に基づき多国籍軍が強制行動をとっている。(朝鮮戦争の際の朝鮮国連軍も慣例的に国連軍と呼ばれているだけで厳密には国連軍ではなく多国籍軍である)

国連章53条)

安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極または地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならないもっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。

⇒地域的機関などの強制行動は安保理の許可が必要であるとした規定。なお、後文の敵国条項現在では死文化している。

国連章51条)

この章のいかなる規定も、国際連合加盟に対して武攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利をするものではない。この自衛権の行使に当って加盟がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの章に基く権及び責任に対しては、いかなるも及ぼすものではない。

⇒集団的自衛権を認めた規定

行使の要件

集団的自衛権を国際法上合法的に行使するためには以下の要件を満たす必要がある。

  1. 攻撃の発生
  2. 必要性
  3. 均衡性
  4. 被害による武攻撃を受けた旨の宣言
  5. 被害による援助要請

1から3は個別的自衛権においてもめられる要件である。4、5はニカラグア事件判決において裁判所ICJ)が判示した要件である。

解釈

集団的自衛権はどのような権利かという解釈はに次の3つがある。

  • 個別的自衛権共同行使説…AがB・Cに対し武攻撃したとき又はBに対し武攻撃しCにも武攻撃するおそれがあるときに、B・CがAに対し共同で個別的自衛権を行使するのが集団的自衛権。
  • 死活的利益の防衛説…AがBを武攻撃したときに、そのでCの死活的な利益が反射的に侵されたことを根拠に、CがAに対し行使するのが集団的自衛権。
  • 防衛説…AがBを武攻撃したときに、CがAに対し行使するのが集団的自衛権。

日本政府の解釈は最初に示した通り被害を「自と密接な関係にある外」に限っている点で死活的利益の防衛説と考え方が近い。ニカラグア事件における裁判所の判決では、行使の要件に「武攻撃を受けた旨の宣言」と「援助要請」のみがあればよく、死活的利益については特に言及していないので、他防衛説に近いと言われる。

また、一般的には死活的利益の防衛説が国際法学者の通説であるとされる。

集団安全保障との違い

よく集団的自衛権と混同されるのが集団安全保障であるが、この2つは全く違うものである。

集団安全保障 集団的自衛権(共同防衛)
何に対処するものか 集団の構成員から他の構成員に対する攻撃 外部から集団の構成員に対する攻撃
集団内部における制裁・秩序維持 外部からの攻撃に対する防衛

日本の憲法解釈

以前の政府見解では、「(集団的自衛権を行使することは)憲法上許されない」としていたが、
2014年7月政府は「集団的自衛権」の行使を限定的に認める閣議決定をした[1]
2015年9月平和安全法制(戦争法案)が成立した。

なお「集団的自衛権」は、2014年ユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれた。受賞者は辞退している。

ネット世論調査

2014年5月実施分

2014年5月22日公式ニコ割アンケートとして実施されたネット世論調査における、集団的自衛権に関する質問への回答状況は以下の通り。

右の画でグラフにる比較が行われているほか、こちらのページexit_nicovideoからより詳細な結果を閲覧できる。

なお回答者は21時21分頃に動画を閲覧していたニコ動ユーザーのうち94,913人である。
Q4.集団的自衛権の内容をどの程度理解していると思うか
総合 年代別 男女
50代
以上
40代 30代 20代 10代
以下
男性 女性
よくわかっている 25.4 36.9 31.3 23.8 19.2 20.8 33.2 17.4
少しわかっている 37.9 32.5 37.8 39.4 36.2 34.2 38.3 37.5
あまりわかっていない 26.7 21.9 23.4 27.5 30.4 27.2 20.6 33.1
全くわかっていない 9.9 8.7 7.5 9.3 14.1 17.7 7.9 12.0
Q5.(集団的自衛権の内容を説明した上で)集団的自衛権の行使に対する賛否
総合 年代別 男女
50代
以上
40代 30代 20代 10代
以下
男性 女性
賛成 49.4 55.8 54.7 50.4 40.7 33.8 60.8 37.5
反対 28.7 23.9 25.0 28.6 34.2 39.1 22.0 35.7
わからない 21.9 20.4 20.4 21.0 25.1 27.2 17.2 26.7
Q6.集団的自衛権の行使容認を成文改憲でなく解釈改憲で行うことへの賛否
総合 年代別 男女
50代
以上
40代 30代 20代 10代
以下
男性 女性
賛成 33.9 42.4 37.5 34.6 27.9 23.3 40.9 26.6
反対 43.7 38.6 41.5 44.1 46.3 48.2 40.0 47.5
わからない 22.4 19.0 21.0 21.3 25.8 28.5 19.1 25.9

集団的自衛権の行使自体については賛成が反対を約20ポイント上回ったが、行使容認を解釈改憲の方法で行うことについては反対が賛成を約10ポイント上回った。

2014年7月実施分

2014年7月22日公式ニコ割アンケートとして実施されたネット世論調査における、集団的自衛権に関する質問への回答状況は以下の通り。

右の画でグラフにる比較が行われているほか、こちらのページexit_nicovideoからより詳細な結果を閲覧できる。

なお回答者は21時35分頃に動画を閲覧していたニコ動ユーザーのうち99,276人である。
Q3.集団的自衛権の解釈変更により日本はどうなると思うか
総合 年代別 男女
50代
以上
40代 30代 20代 10代
以下
男性 女性
より安全になる 37.0 49.3 41.3 38.2 29.4 23.2 45.3 28.5
かえって危険になる 26.1 20.3 23.7 24.3 31.7 40.9 20.6 31.7
どちらともいえない 36.9 30.4 34.9 37.4 38.9 35.9 34.1 39.7

関連動画

関連書籍

関連項目

脚注

  1. *与党、安保法制の骨格を正式決定 集団的自衛権行使など - 日本経済新聞exit
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