電王戦finalとは (デンオウセンファイナルとは) [単語記事]

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電王戦FINALとは、2015年3～4月に5人のプロ棋士と5組のコンピュータ将棋プログラムによって開催される将棋棋戦である。

電王戦の開催自体は第4回となるが、今回をもって「棋士5人vs ソフト5組」のフォーマットによる電王戦は終了、との意をこめて「電王戦FINAL」と銘打たれた。関連イベントについても当記事に述べる。

概要

1勝4敗と、プロ棋士にとって大変厳しい結果に終わった第3回電王戦から4ヶ月後。2014年 8月29日に「電王戦に関する記者発表会」が開催され、「電王戦FINAL」の開催が正式決定された。

「将棋電王戦FINAL」開催決定告知 PVはこちら
将棋電王戦に関する記者発表会2014・アーカイブはこちら

同年10月12日に出場棋士が改めて発表され、「コンピュータ対策に意欲的な若手強豪5人」として、

詰将棋を愛する西の「王子」・斎藤慎太郎五段
千日手の鬼・永瀬拓矢六段
井上門下第3の刺客・稲葉陽七段
序盤研究の大家・村山慈明七段
天才肌の東の「王子」・阿久津主税八段

この5名と、同年11月に開催される「第2回電王トーナメント」のベスト5が対戦することとなった。

「将棋電王戦FINAL」出場棋士発表PVはこちら
将棋電王戦FINAL記者発表会・アーカイブはこちら

対戦カードが決定した11月26日の発表会では、他にも様々な関連イベントの開催が告知された。後述の「関連イベント」でも簡単に触れるが、特筆すべきは、先手番を決める振り駒を「伝説のチェスマスター」ガルリ・カスパロフ氏が務めたこと。初来日となったカスパロフ氏は振り駒で歩3枚を出し、今回も第1・3・5局が人類側の先手番となった。

主催企業・スポンサー

今回より主催のドワンゴと角川書店がタッグを組んで将棋連盟と主催する他、名だたる企業がスポンサーとして電王戦をバックアップ。

ソニー・コンピュータ・エンターテインメント・ジャパンアジア
サードウェーブデジノス　(電王戦に使用するマシン「ガレリア」シリーズを提供)
デンソー　(代指しロボ「電王手くん」を開発・提供)
サークルKサンクス　(対局者へのおやつを提供)
マイクロソフト (ニコファーレでの大盤解説にMS社製タブレットを使用)
トヨタ
特別協賛・Intel

と、数々のスポンサー企業が名乗りを上げた。

トヨタ車を将棋の駒に見立てて棋士が対局する、人間将棋ならぬ「リアル車将棋」の開催 (会場はこちら)
サークルKサンクスのおやつを賭け、女流棋士がどうぶつしょうぎで対局する(タイムシフトはこちら)
今回もやります、電王「AWAKE」に勝てたら100万円イベント (会場はこちら)

など、今回もスポンサーにまつわる様々なイベントが開催される。

レギュレーション

レギュレーションは第3回電王戦を踏襲するが、プログラム側の対人用準備期間が約1ヶ月に延長された。
電王戦FINAL・ルール(公式ページより)

9時半に対局開始、持ち時間は双方5時間、チェスクロック方式。休憩は昼食休憩1時間、夕食休憩30分。
プログラム・当日使用するスペックのマシン(ドスパラ提供)を事前に棋士へ貸出、研究可能とする。
代指しは今回も電王手くん…だったが、デンソー開発チームがいい感じに改良した結果、「電王手さん」として色々バージョンアップ。今度は成り駒もその場でひっくり返せます。

出場棋士&プログラム

参戦棋士は前述の通り、参戦プログラムは第2回電王トーナメントの結果を受けて以下の通りに決定。(棋士の段位は暫定)　そして2015年 3月5日、PVの形で対局会場も発表された。日本史を辿るかのように、全国各地の史跡を巡る。PVはこちら。

局(日時)	出場棋士	出場プログラム／開発者	対局会場
第1局 (2015年 3月14日)	(先)斎藤慎太郎五段	第2回電王トーナメント5位： Apery／平岡拓也、杉田歩、山本修平	二条城 (京都)
第2局 (2015年 3月21日)	永瀬拓矢六段	同4位： (先)Selene／西海枝昌彦	高知城 (高知)
第3局 (2015年 3月28日)	(先)稲葉陽七段	同3位：やねうら王／磯崎元洋、岩本慎	函館・五稜郭 (北海道)
第4局 (2015年 4月4日)	村山慈明七段	同2位： (先)ponanza／山本一成、下山晃	薬師寺 (奈良)
第5局 (2015年 4月11日)	(先)阿久津主税八段	同優勝： AWAKE(電王)／巨瀬亮一	千駄ヶ谷・将棋会館 (東京)

電王戦FINALへの道

2014年大晦日より毎日更新されている、電王戦に出場する棋士・開発者に密着したマラソン・ドキュメント動画群。それぞれの飾らない素顔から練習対局の風景まで盛りだくさん。

対局結果

第一局　斎藤慎太郎 vs Apery

第一局:棋譜はこちら

世界遺産にして大政奉還の地、二条城・二の丸御殿にて火蓋が切られた「FINAL」第一局。先手・斎藤五段が居飛車穴熊を志向し、後手・Aperyがノーマル四間飛車を選んだ戦いは、お互いの囲いが完成する前からAperyが28手目・△65銀で強襲を掛ける激しい戦いになった。

その後は苦しげな表情を覗かせる場面、長考する場面はあったものの、Aperyの攻めをノーミスでいなし続けた斎藤五段が着実に優位を拡大。終盤には自玉に詰めろがかかったAperyが、延命のために斎藤玉への王手ラッシュを仕掛けてきたが、それも斎藤五段が落ち着いて捌いて115手にて勝利。人間側に幸先の良い1勝をもたらした。

第二局　永瀬拓矢 vs Selene

第2局・棋譜はこちら

第2局は江戸時代よりその姿を残す「国宝」、高知城・追手門にて行われた。先手・Seleneの、人間の感覚を惑わせるようなオープニングを経て、展開は相居飛車の力戦に。コンピュータに相対する人間にとっては相当勝ちづらいのでは…と囁かれる展開になった。

そして長い鍔迫り合いを経て1筋を互いに食い破り、先にSeleneを詰ませようと放った後手・永瀬六段の88手目、△27角成らず(先手玉への王手)。しかしSeleneには、この「角を成らない手」を正しく認識できないというバグがあった。Seleneは自玉の王手を放置し、89手目 ▲22銀と指してしまう。「王手放置」の反則と言うことで、永瀬六段の勝利となった。

局後、簡単ながら「もしこのまま対局が続いていたらどうなったか？」が大盤解説にて検証され、角を成っても成らなくても先手玉は詰み筋に入っていた(永瀬六段の勝ち)のでは…と結論付けられたものの、多方面からの検証が待たれるところである。

第三局　稲葉陽 vs やねうら王

第3局・棋譜はこちら

プロ棋士のシリーズ初勝ち越しが掛かった第3局。井上門下第3の刺客・稲葉陽七段が挑むは、前回も出場した「やねうら王」。少し春めいた陽気の函館・五稜郭を舞台に始まった決戦は、稲葉七段が前回の豊島七段を彷彿とさせる横歩取りを採用して始まった。

将棋は練習対局でも現れた「飛車捕獲の手順」に進むかと思われたが、結果的には力戦に。しかし稲葉七段が「タイミングを間違った」と嘆いた47手目 ▲27歩を境に、稲葉七段に悪手が続いてしまう。入玉に望みを託し粘った稲葉七段だったが、それも叶わず。116手にてやねうら王が勝利し、コンピュータ側にシリーズ初勝利をもたらした。

第四局　村山慈明 vs ponanza

第4局・棋譜はこちら

第4局の舞台は奈良県・薬師寺。早くからコンピュータ将棋と積極的に向き合ってきた棋士の一人、村山慈明七段と、第2回電王戦より唯一皆勤賞のponanzaが激突した。「狂犬」と称されるほど攻めの鋭さを恐れられるponanzaに、序盤研究の大家がどう挑むか注目された。

後手番の村山七段は「相横歩」を選択し、「いきなり激しい戦いを起こす」展開に持ち込む構えを見せた。が、ponanzaはその展開を拒否。手損を厭わず馬を作って自陣に引きつけ、その間に付け入る隙が見えない堅い陣を作り上げる。

こうして序盤でリードを築いたponanzaが、構想の失敗を挽回しようと放った村山七段の勝負手もがっちりと受け止め、97手にて勝利。会心の指し回しでコンピュータ側に2勝目をもたらした。

第五局　阿久津主税 vs AWAKE

電王戦Final・最終局は東京・将棋会館、大広間にて行われた。人間側大将は阿久津主税八段、コンピュータ側大将は元奨励会員である巨勢亮一さん開発の「AWAKE」。

チーム戦として、お互いの勝ち越しがかかった決戦は先手・阿久津八段が角交換四間飛車を選択。そこから駒組みの途中でAWAKEが放った20手目・△28角打、しかしこの手は「馬には成れるが、先に進むとその馬が取られてしまう」という疑問手だった。

コンピュータ将棋ソフトにほぼ共通した弱点、と言われるこの手を誘発させるように駒組みを進め、その第一段階を成功させた阿久津八段の21手目・▲16香に対し、巨瀬さんは一言告げた。

「ここで投了します」

開始からわずか49分。21手をもって阿久津八段が勝利となり、電王戦Finalは人間側の3勝2敗を以って衝撃的な幕切れを迎えた。局後に急遽組まれたエキシビジョン・マッチにて、「仮に△28角を打たなかったらどうなっていたか」を見せるべく、永瀬六段が19手目からAWAKEの指し手を引き継いで阿久津八段と対局。ここでも熱戦の末、阿久津八段が勝利を収めた。

1局ごとに様々な物議を醸し、問題を抉り出し、新たな可能性を垣間見せた「電王戦」。
タッグマッチも含めて、次回以降の展開は未定である。

観戦記・外部記事

電王戦Final特設サイト内　全局観戦記はこちら。
第1局から順に、先崎学九段、勝又清和六段、船江恒平五段、金井恒太五段、野月浩貴七段が執筆。

外部リンク

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