音階とは、主に西洋音楽で使われる音を高さ順に並べたものである。英語では「scale(スケール)」。使われる音の数や並べられ方によって様々な種類のものが存在する。多くの音階は1オクターブで循環するため、1つの音からその1オクターブ上(または下)までの配列を以って「音階」と呼ぶことになる。1オクターブ内で使われる音の数によってn音音階とも分類される。以下に挙げる数々の音階は実際の楽曲における登場頻度の高いものであるが、理論上存在するものの使われることの少ない音階も多くあり、また微分音まで含めると(実際の使用に耐えうるかは別として)無数の種類の音階を考えることができる。
全音階は1オクターブを5つの全音と2つの半音の7音に分割した音階の一種である。英語では「diatonic scale(ダイアトニック・スケール)」。いわゆる「ドレミ」の音階で、ピアノやオルガンといった鍵盤楽器の白鍵はこれに従って配列されており、西洋音楽の基本となる音階である。長調を構成する長音階と短調を構成する短音階の2種類が特に使われるが、その他の全音階もジャズなどで使用されることがある。
全音階を「ド」の音から始めたものが長音階である。英語では「major scale(メジャー・スケール)」。長音階で構成された調が長調である。中でも主要な音である、音階が開始される「ド」の音を主音(英:tonic/トニック)、主音から(完全)5度上の「ソ」の音を属音(英:dominant/ドミナント)、(完全)5度下の「ファ」の音を下属音(英:subdominant/サブドミナント)とそれぞれ呼ぶ。また、主音の短2度(半音)下にあり、主音に向かって解決する力が強い「シ」の音は導音(英:leading-tone/リーディングトーン)と呼ばれる。他の3つの音についても名称が付いているものの、使用される機会は少なく、主音を「第1音」として「第n音」と呼ばれることが多い(例えば「ミ」の音は第3音)。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ |
全音階を「ラ」の音から始めたものが短音階である。英語では「minor scale(マイナー・スケール)」。短音階で構成された調が短調である。短音階ではそれぞれ「ラ」が主音、「ミ」が属音、「レ」が下属音となるが、第7音の「ソ」の音は長2度(全音)離れているため導音とは呼ばれない。全音階からなるこの基本的な短音階は、後述する2つの短音階との区別のため特に「自然短音階(英:natural minor scale/ナチュラル・マイナー・スケール)」と呼ばれる。
ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ |
○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ |
以下2つの短音階は便宜上この項で説明しているが全音階ではない。
短音階が導音を持つように、「ソ」の音を半音上げて「ソ♯」としたものが和声的短音階である。英語では「harmonic minor scale(ハーモニック・マイナー・スケール」。この音階は短調上で和音を構成する時に使われることが多いため「和声的」の名を持つ。
ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ |
○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | - | ○ | ○ |
和声的短音階では「ソ」が「ソ♯」になったため、隣り合う「ファ」から「ソ♯」までの音程が増2度と広くなってしまった。これを解消するために「ファ」も半音上げて「ファ♯」としものが旋律的短音階である。英語では「melodic minor scale(メロディック・マイナー・スケール)」。名前の通り旋律(メロディ)として使い勝手が良くなった一方、長音階との違いが第3音のみとなり短音階感が薄れるため、下降形では自然短音階をそのまま使う場合が多い。
ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ |
○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ |
20世紀中頃、モード・ジャズの成立に伴って音階として整備された比較的新しい音階。この「モード(旋法)」とは中世の宗教音楽で用いられた「教会旋法」のことを指し、各旋法から音階の要素のみを取り出したものである。「モード・スケール(mode scale)」とも。
アイオニアン・スケール(Ionian scale)は、全音階を「ド」の音から始めたものである。イオニア旋法から派生している。長音階と同一であるため、モード・スケールとして扱われることは少ない。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ |
ドリアン・スケール(Dorian scale)は、全音階を「レ」の音から始めたものである。ドリア旋法から派生している。
レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ |
○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ |
フリジアン・スケール(Phrygian scale)は、全音階を「ミ」の音から始めたものである。フリギア旋法から派生している。
ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ |
○ | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ |
リディアン・スケール(Lydian scale)は、全音階を「ファ」の音から始めたものである。リディア旋法から派生している。
ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ |
○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ |
ミクソリディアン・スケール(Mixolydian scale)は、全音階を「ソ」の音から始めたものである。ミクソリディア旋法から派生している。
ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ |
○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ |
エオリアン・スケール(Aeolian scale)は、全音階を「ラ」の音から始めたものである。エオリア旋法から派生している。自然短音階と同一であるが、短音階は和声的・旋律的の2つが使われることも多いため、アイオニアン・スケールよりは比較的モード・スケールとして扱われる。
ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ |
○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ |
ロクリアン・スケール(Locrian scale)は全音階を「シ」の音から始めたものである。ロクリア旋法から派生している。
シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ |
○ | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ |
半音階は1オクターブを12の半音に分割した音階である。英語では「chromatic scale(クロマチック・スケール)。隣り合う音同士の音程が全て半音であり、要するに白鍵も黒鍵も全部使った音階である。その性質上、半音階は1種類しか存在しない(平均律の場合)。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
全音音階は1オクターブを6つの全音に分割した音階である。英語では「whole tone scale(ホール・トーン・スケール)。隣り合う音同士の音程が全て全音であり、その性質上全音音階は2種類しか存在しない(平均律の場合)。全音階と名前がややこしいが仕様である。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ | - | ○ |
1オクターブ内の5つの音で構成される音階を総称して「五音音階(英:pentatonic scale/ペンタトニック・スケール)と呼ぶ。その多くはより音数の多い音階を簡略化したもので、洋の東西を問わず各地の民謡などは五音音階からなるものも多く見られる。また現代のポピュラー音楽でもギターやキーボードのソロプレイなどで重宝される音階でもある。
長音階から派生した音階で、「ファ」と「シ」の音を抜いたもの。ピアノの黒鍵だけを抜き出すとこの音階となる。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | ○ | - | ○ | - | - | ○ | - | ○ | - | - | ○ |
自然短音階から派生した音階で、「シ」と「ファ」の音を抜いたもの。メジャー・ペンタトニック・スケールを「ラ」から始めたものと解釈することもできる。
ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ |
○ | - | - | ○ | - | ○ | - | ○ | - | - | ○ | - | ○ |
後述のマイナー・ブルース・スケールから派生したもの。音程関係上はマイナー・ペンタトニック・スケールと同一であるが、成立の経緯からメジャー系(というかブルース系)と扱われる。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | - | ○ | - | ○ | - | ○ | - | - | ○ | - | ○ |
明治時代、開国とともに入ってきた西洋の音階を元に日本で体系化された音階。長音階および短音階から第4音と第7音を除いたものが「ヨナ抜き音階」、第2音と第6音を除いたものが「ニロ抜き音階」とそれぞれ呼ばれる。
長音階から「ファ」と「シ」を抜いた音階。メジャー・ペンタトニック・スケールと同一の音階となる。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | ○ | - | ○ | - | - | ○ | - | ○ | - | - | ○ |
短音階から「レ」と「ソ」を抜いた音階。俗に「都節音階」とも呼ばれる陰旋法の下降形を「ラ」を主音に置くとこの音階となる。
ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ |
○ | - | ○ | ○ | - | - | - | ○ | ○ | - | - | - | ○ |
長音階から「レ」と「ラ」を抜いた音階。琉球音階と同一の音階となる。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | - | - | ○ | ○ | - | ○ | - | - | - | ○ | ○ |
短音階から「シ」と「ファ」を抜いた音階。マイナー・ペンタトニック・スケールと同一の音階となる。
ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ |
○ | - | - | ○ | - | ○ | - | ○ | - | - | ○ | - | ○ |
ブルースで用いられる「ミ♭」「ソ♭」「シ♭」の3音を総称して特に「ブルー・ノート(Blue note)」と呼ぶ(ブルー・ノートはより正確には半音まではフラットしない微分音である)。この3音を長音階に組み込んだ音階を「ブルー・ノート・スケール(Blue note scale)」と呼ぶ。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - | ○ | ○ | ○ | ○ |
先述のブルー・ノート・スケールはそのままでは扱いづらいため、特徴的な音を拾い上げて音数を減らした、あるいは五音音階にブルー・ノートを適宜組み込んだ音階。使用される実態により即したものと言える。長短2種。
メジャー・ペンタトニック・スケールに「ミ♭」を追加した音階。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | - | ○ | - | - | ○ |
マイナー・ペンタトニック・スケールに「ミ♭」を追加した音階。主音である「ラ」を「ド」と捉え直せば、ブルー・ノートが3音とも入っていることになる。
ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ |
○ | - | - | ○ | - | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | - | ○ |
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | - | ○ | - | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | - | ○ |
「五音音階」の項(上記)を参照。
民族系の音階ははっきりと明文化されたものではないため、出典によってもその体系には揺れが存在する。
「ロマ音階」や「ハンガリー音階」とも。和声的短音階の第4音を半音上げたもの。増2度音程が2箇所になり、和声的短音階よりもさらに特徴的な音階となった。
ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ |
○ | - | ○ | ○ | - | - | ○ | ○ | ○ | - | - | ○ | ○ |
フリジアン・スケールに「ソ♯」を追加した音階。フラメンコの音楽によく見られる。
ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ |
○ | ○ | - | ○ | ○ | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ |
長音階から「レ」と「ラ」を抜いた音階。ニロ抜き長音階と同一の音階。沖縄民謡に見られるが、実際には「レ」もそれなりに使われる。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | - | - | - | ○ | ○ | - | ○ | - | - | - | ○ | ○ |
正式には「コンビネーション・オブ・ディミニッシュト・スケール(combination of diminished scale)」という名前だが、もっぱら略して「コンディミ」と呼ばれるもの。全音と半音が交互に配置された音階で、半音違いの2つのディミニッシュ・セブンス・コードの構成音でできているためこの名がある。ギターやキーボードのソロプレイなどで使用される。
ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド |
○ | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ |
正式には「ハーモニック・マイナー・パーフェクト・フィフス・ビロウ・スケール(harmonic minor perfect 5th below scale)」という名前だが、もっぱら略して「Hmp5↓」等と呼ばれるもの。和声的短音階を「ミ」の音から始めた音階で、フリジアン・スケールをドミナント・コード上で使えるように変化させたものであることから「フリジアン・ドミナント(Phrygian Dominamnt)」とも呼ばれる。ギターやキーボードのソロプレイなどで使用される。
ミ | ファ | ファ♯ | ソ | ソ♯ | ラ | シ♭ | シ | ド | ド♯ | レ | ミ♭ | ミ |
○ | ○ | - | - | ○ | ○ | - | ○ | ○ | - | ○ | - | ○ |
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最終更新:2024/09/08(日) 05:00
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