魔弾の射手(Der Freischutz)とは、カール・マリア・フォン・ウェーバーが作曲したオペラである。
ヨハン・アウグスト・アーペルとフリードリヒ・ラウンの共著『怪談集』所収の物語が原作となる。
望む場所に命中する魔法の弾丸(フライクーゲル)を持つ射手(シュッツ)、すなわち「デア・フライシュッツ」の民間伝承が題材になっている
この「魔弾」は悪魔の力を借りて作られるもので、7発のうち6発までは射手の希望通りに必中となるが、最後の1発は悪魔が望む場所に命中するとされる。
1821年6月、ベルリン王立劇場で初演された、ドイツオペラの代表作の一つ。
最もよく知られるのは序曲で、冒頭部分は讃美歌に使われるほど人口に膾炙している。
17世紀のボヘミア(当時のドイツ=神聖ローマ帝国の支配下)。
若き猟師マックスは、射撃大会を明日に控えて練習を重ねている。
しかし彼の銃は思うように的を射抜けず、彼は苦悩していた。マックスは恋人のアガーテとは相思相愛だが、アガーテの父である森林官のクーノーは、射撃大会の結果によっては二人の結婚を認めないと告げていた為である。
そこへ狩人仲間のカスパールが登場。悩むマックスに「今夜遅くに狼谷に来たら、勝つ方法を教えてやろう」と誘う。
谷には悪魔が出るという噂があったが、藁にも縋る一心で、マックスはアガーテが止めるのも聞かず、夜遅くに狼谷へと向かう。
その頃カスパールはかねてより契約していた悪魔ザミエルを召喚。
自分ではなくマックスの命、更にはアガーテの命を差し出す事で契約の延長、および7発の魔弾の製作を依頼する。
そんな事情はつゆほども知らないマックスは、素知らぬ顔のカスパールと共に7発の魔弾を鋳造し、それぞれ4発と3発に山分けするのだった。
翌日の射撃大会。花嫁衣裳を着たアガーテはマックスとの結婚を待ち望んでいた。
婚礼用の花冠を取り出すと、何故かそれは葬儀用の冠に変わっている。不吉な予感を覚えつつ、アガーテは森の隠者からもらった白い薔薇で花冠を作り、それを被って会場に入る。
マックスは7発のうち3発を見事命中させ、喝采を浴びた。その後カスパールも3発を使い、マックスの手元に残った最後の1発をアガーテに命中させるようにザミエルに囁く。
マックスの活躍を気に入った領主は、最後の7発目で鳩を撃つように命じ、彼は引き金を引く。だがザミエルの邪悪な意思により、最後の弾はアガーテに向けて放たれてしまった。
しかし白薔薇の花冠がお守りとなり、間一髪のところでアガーテは命拾い。そして逸れた弾はすぐ傍にいたカスパールを貫き、その魂はザミエルによって地獄へと連れ去られるのだった。
マックスは自分がカスパールにそそのかされて魔弾を作った事を打ち明けて懺悔する。領主は激怒して彼を追放しようとするが、そこへ森の隠者が登場。真に邪悪なるものは去ったこと、若者の過ちを許し、生きて罪を償わせるようにと領主を諭す。
その結果、マックスには1年の試練が課された。罪を償ったその後にマックスとアガーテは結婚するようにという裁定が下され、物語は大団円となる。
その厨二心をそそる日本語訳もあってか「魔弾の射手」に題材をとった創作が知られている。
ヨハン・シュトラウス2世が作曲したポルカ『百発百中(Freikugeln)』は、かつて『魔弾のポルカ』と呼ばれていた。これは1868年、ウィーンで開催された射撃競技会の為に作曲された作品で、現在でもたびたび演奏される人気曲である。
高木彬光の長編推理小説『魔弾の射手』は、オペラを題材とした猟奇殺人事件を描いている。名探偵・神津恭介の活躍を描き、連載当時は犯人を当てる懸賞がかけられて話題となった。
平野耕太の漫画『HELLSING』では、「魔弾の射手」ことリップヴァーン・ウィンクルが登場。マスケット銃から放たれる必中の魔弾を操り、第1幕2場の「狩人の合唱」を歌いながら敵を撃滅する。しかしそんな彼女の許にも、「魔王(ザミエル)」の影が……
TYPE-MOONのスマホゲーム『Fate/Grand Order』では、メインストーリー第1.5部第1章「悪性隔絶魔境新宿」にて「魔弾の射手」の能力を取り込んだ新宿のアーチャーが登場。スキルとしても「魔弾の射手」を持ち、その能力を生かして活躍してくれるが、やはり最後の弾丸は大切な人を狙ってしまう。
また、比喩として「魔弾」が用いられるケースもある。
総じて「都合の良いものは存在しない」という比喩表現において用いられ、化学療法やコミュニケーション理論においても使われた事がある。
1963年のケネディ大統領暗殺事件における「証拠物件399」が「魔弾(Magic Bullet)」と称された。
曰く、犯人とされるリー・ハーヴェイ・オズワルドが放った銃弾が「物理法則上有り得ない軌道を取って」ケネディ大統領と同乗していたコナリー知事に命中した……という陰謀論者の主張によるものだが、実際には事件当時の二人の位置関係を考慮すれば破綻なく説明が可能である。
掲示板
3 ななしのよっしん
2021/11/21(日) 11:05:20 ID: IOf8Qyv/pt
T.M.Revolutionの名曲にも使われてるね
4 ななしのよっしん
2021/12/09(木) 15:00:20 ID: gOntOwBkgF
この魔弾みたいに、悪魔が作ったような何かしらのリスクがあるアイテムって他にはどんなのがあるかしら?
5 ななしのよっしん
2022/05/05(木) 03:08:03 ID: CqlvTisK17
>>4
悪魔じゃないけどこんなのがある。
落語・死神に出てくる「死神が見える数珠と死神の掟」は悪用すると死神の気分を害してしまうため、寿命がごっそり削れる。死神がくれた。
小説・猿の手に出てくる「願いを叶える猿の手」は願いの目的を度外視するから、金が欲しいと願えば本人の死亡保険という形で叶えられる。商人から買った。
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最終更新:2024/04/24(水) 10:00
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